ほんわりとしたアナタの色と


恥ずかしがりなアタシの色も











アナタ アタシ











「えへー、今帰ったよーー」


「う、わ・・・・っ」



ヴェーと言う鳴き声と共に、ふわりと、彼の香りに包まれる。


唐突なそれに、私は盛大に驚いて
そんな私を、フェリシアーノは笑う。



「まだ慣れないの、ー」

「む、ちゃ言わないでよ・・・・
 こんなのお国柄だもん、文句なら本田さんに言ってよ・・・・」



日本と言う国には、
彼のように過剰なスキンシップは求められないのだ。

これはもう国民性とも言うべきもので
私のせいじゃない、と言い張ってみせる。


ともすれば、私の祖国である本田さんへ、
文句の矛先は向けて欲しいものだ。



「えー?日本でも恋人同士なら普通だよ〜」

「そ、そこまで無闇やたらにくっついたりは・・・・」

「でも俺、さっき帰る途中、街でハグしてる恋人見たよー・・・・?」

「そ、れは・・・・っ」



確かに、最近所構わずイチャつく恋人同士はよく見る。

が、ぶっちゃけ他所でやってくれ、が正直なところで



決して!決して・・・・!!

ソレが普通ではないのだ。



も、慣れたら出来るようになるんじゃない?」

「それは!ないから!絶対!!」

「えー・・・・」

「えー、じゃない!!」



とんでもない事を言うフェリシアーノに、全力で否定を入れたら
途端に不満そう――というか、哀しそうな顔だ。


それは・・・・ズルイ。


ウッと思わず怯んだ私の頭を、フェリシアーノは優しく撫でる。


「でもさ、じゃあ」


ほんわかとした声音で、彼は言う。

その声音は、柔らかい水の色のように私に馴染む。


「明日、俺と訓練しに行ってみようよ〜」

「・・・・・・・・・・へ?」


そんな声音で紡がれた、言葉。


思わず聞き返してしまう。


フェリシアーノは、ルートヴィッヒさん直伝の敬礼で
ピっと右手を額に添えながら、姿勢も正しく立つ。

表情もいつもよりはキリっとさせて見せているが――


彼には、何だか似合わなくて、笑ってしまう。



「明日休みになったので、デートがしたいであります!」



そんな風に、言われてしまって。


―― 好きだなぁ、と思ってしまうのだ


こんな、優しくて、柔らかい彼の存在が


「私も、行きたいであります」


何だか、少しくすぐったい様な思いで、答える。


フェリシアーノは、きょとん、とした後に
ヴェー・・・といつも通りの笑みで、私にギュっと抱き付いてきた。


腕の力は、いつもより少し強くて、少しだけ苦しくて


――けれども、その苦しさも、心地良いと思えてしまうほど。



「えへー・・・・嬉しいであります」



ふんわり、ふんわりと言われて

私は、その意外に大きなその体を抱きしめ返しながら
「私もであります」と、彼の香りに包まれて、瞳を閉じた。


「ねえ、――・・・・」


柔らかく呼ばれる名前。

顔を上げれば、睫のぶつかりそうな程に近い場所にいる彼。


「・・・・・・・・・あ、お夕飯の準備途中だった。」


咄嗟に言って、パっと離れる。


「・・・・・・・・〜・・・・・」


ガクリと肩を落とした彼。


彼のスキンシップは慣れないが、
彼のそういった反応をスルーするスキルは身に付いた。



―― 彼には、申し訳ないことに。




クスクスと笑いながら、彼の事を振り返り


「明日、楽しみにしてるであります」


そんな風に返したら。


少し不貞腐れた表情で


「明日は、逃がさないであります」


そう、返って来た。


だから――・・・・



「心の準備は、してみるであります」




答えた私を、彼は大層驚いた様子で、見つめ返して


私はそれに、照れたような笑みを返した。




ほんわりとしたアナタの色と

恥ずかしがりなアタシの色も


織り交ぜながら、進む明日はきっと


素敵な色に彩られた


輝くような明日に、きっとなるよう――