星屑のような、恋をした。

キラキラと輝く、幾つもの想い。






  ラブレターあげる







恋した男は、星の数


愛した男は、ひとりだけ。



いつだったかな。



クラスの女子が、そんな文句を掲げたボディペイントを
体育祭の時だかに、気合を入れて、描いていた。

だからきっと、それは私が学生の頃の話で、
今から数えると、云年前の話。

未だに覚えているのは、
無駄に格好良いのと、やたら語呂が良いせい――だと思うのだけれど。



そんなの、舌触りが良いだけの台詞でしょ?



愛するとか、そんなの。


正直、うそ臭すぎて馬鹿みたいだと思った。





「マースーターァ」




後ろから名前――あだ名?――を呼ばれたと思ったら
ギュっと抱きつかれる。


慣れた香りに包まれるのは、もう悪い気もしない。


定期的に胸を打つ鼓動も、心地良いとさえ思えるほど。



最初のうちは、大変なものだったけれども。


何って――まあ、色々と。



「アイス?」

「は、まだストックがあります。」

「じゃあどうした?」

「マスター分が足りないです」

「何じゃそりゃ。」



てっきりアイス切れたのかと思ったら
そういうわけでもないようで。


「強いて言うならアイスじゃなくてアイが切れました。」

「そういうおっさんみたいな冗談言うと叩くよ?」

「うー・・・・俺本気ですよう。」



そう。


ぎゅぅっと抱きしめる腕に力を込められる。


心地よくて、安心して。


なんだか、泣きそうな気持ちだ。


それが、ちょっと悔しくて
それでも、好きな自分がまた悔しいと思う。


それだけ、愛してる。彼の事。



恋した男は、星の数


愛した男は、ひとりだけ。



なんて舌触りのいい言葉だ。


ああそういえば、

私も沢山の人を好きになったなァ、


この年になるまで、本当に、何人を好きになっただろう。


指折り数えてみたら、両手が2つあっても足りそうにない。



恋した男は、まさに、星の数いそうなほどだ。



けれども、



これだけ――これだけ私が好きになった男、いただろうか。



今私は、胸を張って、彼を好きだといえる。


悔しいけれども、言えるのだ、大好きだと。



だから―――だから、ね。



これを、このひとつだけを―――



君だけを、私の恋と呼ぼう。



「ねえ、カイト」


「はい?」


「それなら、さ。」


「はい。」


「ラブレターをあげる。」


「・・・・・・・はい?」



カイトは、何とも間の抜けた声を発した。

私は笑う。


後ろから強い力で抱きしめるその腕に、
そっと、自らの手を添えて。


「明日も、明後日も、その先も、毎日あげる。
 好きって書いて。大好きって書いて、カイトにあげるよ。」



やがて君の両手いっぱいに大好きが溢れるように
今日から毎日、君にラブレターを上げる。


「――それじゃあ俺は、毎日返事を書きますよ。
 マスターの両手に、『愛してる』が溢れるように」


いつか、星の数だけの『愛してる』になるように。


カイトと視線を合わせて、笑う。


そんな、冗談なのかも分からない
途方もない先もない話。


そんな話をしながら、笑う。


けれども、ね。


本当に、本当に


君に伝わるように、この思いが、溢れるように。




今から、君に、ラブレターを書くよ。