空を飛ぶ鳥を見上げる。

淡い色をした空を見上げる。

ゆらり浮かぶ雲を見上げる。


何でもいい。


この際、ただ張られているだけの電線とか、ちょっと高いビルの先っちょとか
もういっその事、壁の高い位置に付いた染みとかでも、いい。


とりあえず、俯かなけりゃ、良い。


上を向いて歩こうなんて歌があるけど、まさにそんな感じで。

とりあえず、地面と平行に顔の正面を持ってきたら、泣く。

耐え切れなくなって、本当に、泣くから・・・・。



「馬鹿だね、君は。」



苦笑気味に、鳶色の髪をした少年は言った。


リーマス・・・


名前を呼ぼうとしたけれど、声がくぐもって何も言えなくなってしまう。

情けないったら無い。


「馬鹿だね」と、リーマスは繰り返して、私の隣に腰掛ける。
座っていた、少しかすんだ色をした空色のベンチは、ほんの少しだけ軋んで。



「泣く事が悪い事だなんて、誰も言っていないのに。
 それでも泣くのを我慢する理由は何?」



問われたけれども、何も答えられない。

答える言葉を、私は知らない。


「泣きたい時には泣いてしまえばいいよ。
 哀しい時に泣く事も、嬉しい時に泣く事も、どっちも素晴らしい事なんだよ。」


「それでも・・・」


ほんの少し震える声で、言う。

リーマスはほんの少し笑って、
優しく私の頭を引き寄せて、自らの肩へと乗せてくれた。


「好きだよ、」


優しい声音が、そう紡いだ。


「大丈夫、君が泣いても、僕は君を嫌いになんてならないし、
 今僕が言った事が、嘘になってしまう訳でもないから。」


君に泣いてほしくて言った言葉じゃないよ。


それでも、そのたった一言で、君が涙を流してくれるなら。

その涙は自分にとって、何て素敵な物なんだろう。



リーマスが、微笑う。



引き寄せられた私の頭は、私の顔を地面と垂直に持ってきて。

抗う術も無く、涙が一つ、頬に軌跡を残した。


「・・・・・好き。」


「うん。大丈夫、きっと僕たちなら、上手くやっていけるから。」



リーマスはそう言って、柔らかく笑って頭を撫でてくれた。




その微笑みにをした







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