花を慈しむように

貴女を愛した





世界 でたった
ひとつだけ




「夜のリクオは、花を見たことないの?」


首を傾げて、は問う。


とは言え唐突過ぎるソレに
ガラにもなく面を食らった。



―― どうしていきなりそうなるんだ



思う所は表情に出ていたのか、
は笑いながら、だって、と続ける。



「夜じゃ、花はよく見えないでしょ?」


「桜位なら、見えるもんだけどな、」



特別に花に興味があるわけでもないが、
敢えて見るのならソレで、その春には豪勢な花を重たそうに揺らす花は、
昼でも夜でも変わらずに華やかで、目に付いた。


しかしどうやら、その答えには満足していないようで


むぅ、と膨れっ面のに、リクオは飄々と笑って返す。



「夜の花ってぇのも、悪くないもんだぜ?」

「そりゃそうだけど、だって夜じゃあ、花の色も良く見えないじゃない」



それとも妖の目には、夜でも鮮明に映るものなの?


そう言って、金色の瞳を隠す、柔い瞼にそっと触れてくる。


その拙い手つきがくすぐったくて、のその手を取りあげた。



「興味があるかい?」


「そうでないなら、聞いてない」



合わせるのを拒む様に逸らされた瞳を、
顎に手を添えて、無理矢理に合わせる。


驚いたように、真っ直ぐに自分を射抜く瞳。


「リク―――・・・」


紡ぐ前に奪った唇に、吐息が混ざる。


強引な、けれども触れるだけの。


壊れ物を扱うような口付けを、
は「またやられた・・・」と赤い顔で呟いた。


リクオは笑う。


笑いながら、いらねぇんだよ、と返す。


は首を傾いだ。



「夜の花は、お前ぇだけで十分だ」



言った言葉には、顔を尚朱に染め上げた。


明るく暗い闇の中、尚鮮明なその表情と、


「何ソレ」と強がる様に呟く声に、「不服かい?」と問いを返せば
「ついでにズルい」だそうで



「光栄だね。」



言って、リクオは笑った。





―― 例え花の本当を知らずとも、




貴女を愛したこの気持ちは、花を慈しむ事に似ているから



世界でたったひとつだけ



貴女が世界を彩る、花であればと――・・・






                                               ――fin....




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