空は遠くて、遠くて
届かないなぁと、思った。


の向こうで
いましょう





彼が空に似てると思ったのは、彼がもう何百歳と生きている国だと知った時。



別に彼の何かが青いとかではなくて(いや、確かに彼の軍服は青かったが。)

”空”と言う点では、確かに。

彼は大きくて優しくはある。


が、やはりそういう意味合いでもなく。



今まですぐ隣にいたはずのその人が、
何だかとても遠くに感じてしまって

急に、手の届かない空を見ているのと、同じような気持ちになったから。


私は、彼が国だと知った時から、
彼の事を空と同じ、手の届かない存在のように感じている。


そんな事を思いながら、ずっと空を眺めては、流れる雲を目で追っていた。


どれだけそうしていたのかは、分からない。


とりあえず、自分が見つめ始めた時、
空は夜着を纏って、星が瞬いていたハズなのだが・・・・・



いつの間にか、彼のような青空へと姿を変えていて、
余計に目が離せなくなった。


いつまで続くのか、本人にも分からない無限の時間を
止めるきっかけとなったのは、彼本人がヒョィっとその空を背景に覗き込んできたから。



とりあえず、自分の意識がまだ此処にあった時には、
勿論彼の姿はそんな所に無かったはずで


流石にそれなりに驚いたのだが、彼は真逆に、ホっとした様に笑った。


「ヴェー・・・良かったぁ、やっと見つけたよー」

「フェリシアーノ・・・・なんで・・・・」

「菊に聞いて驚いたよ、昨日から帰ってなかったんだって?」

「・・・・本田さん、怒ってた?」

「心配してた。」

「そっか・・・・・。」

、何してたの?」

「ん、空見てた。」

「一晩中?」

「一晩中。」


フェリシアーノは、なんかものすごーく微妙な顔をした。


うん、何かごめん。


は言う。


「風邪・・・・」


「ん?」


「引いてない?」


「うん、大丈夫。」


それじゃあ良かった。


フェリは笑う。


優しく、大らかに。





遠い


遠いのだ。



その笑みでさえ、全てが。


それでも私は、この人に、この空に


傍にいたいと、思うから、だから。



辛い。


とても。



、」


「ん?」


「帰ろ?」


「うん。」



促されて、立ち上がる。


ギュっと手を握られて、「わぁっ」フェリシアーノは声を上げた。


〜、手ぇ冷たいよぉー」


本当に風邪引いちゃうよ、


フェリシアーノの眉がハの字に下がる


着ていたコートのポケットの中に、握られたままの手の平がさらわれた。


「これで、少しはあったかくなるかな、」と。



は「あ、」と小さく声をあげた。


「ヴェ?」とフェリシアーノ。



「・・・・・掴った。」


「ヴェー?」


「んーん、なんでもない。」



あたたかい手の平が、自分の手を包んでいた。



ヘタレでヘタレでどうしようもない彼の
大きくて、あたたかくて、優しい手の平。


遠い


遠いのに。


こんなに、近いから――・・・・



「フェリシアーノ、」


「ヴェ?」


「お腹空いた。」


「ヴェー、じゃ、パスタでも食べて帰ろうかー。」


「・・・・・・うん。」




頭上には、薄く透明な空が広がる。


飛行機雲が、遠く、遠くに伸びていく。



今日も空は、やっぱり遠くて

それでも何だか、手を伸ばせば届くような、そんな気がした。




                                               ――fin....




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