『戯れる指』




背後には、布団の柔らかさがあって
人肌に温まった布が、心地よく肌に絡みつく。


体に掛かる重みは愛しいその人のもので、
その温かさも、頬に触れる髪の感触も、全てが気持ちよくて



布団と愛しい重みとに挟まれるその時が、本当に幸せで



押さえて絡む手の平は大きくて熱かった。



繰り返す口付けに、吐息が混ざって


どれだけ長い時間そうしたのだろう

微かに朦朧とする頭では、それを感じる事も出来なくて


甘く痺れる頭の芯に、フっと、
その柔らかな感触が離された。


見上げる形になるその人は、背景に天井を背負っていて
お陰様で、灯りが遮られて自分には大きな影が落ちてくる。


金の髪をサラリと頬に掛けながら、彼は笑った。



「今日は、嫌がらないんだな?」



普段なら断固拒否するだろうその行為を
けれども今日は素直に受け入れる彼女に、

彼は微笑みながらも
少しばかり戸惑ったような表情だった。


も少し困ったように笑いながら、
その白くて綺麗な頬に手を伸ばす。


「だって明日は、特別予定もありませんから。」


「そういう問題なのかい?」


「そういう問題ですよ、」



拍子抜けしたような彼の表情に
クスクスと笑いながら、答えた。



頬を滑る指先に、彼は気持ち良さそうに目を細めた。


そんな表情に満たされながら「だって、」と
言葉を続ける自分を、彼は優しい目で見つめる。



「嫌いじゃないですもん」



言ったを、驚いた様子の瞳で見たジョニーに
はやっぱり笑って見せて



その行為の意味を、自分だって知っている。



それはやはり、慣れない自分には恥ずかしくて、

そして次の日の体の違和感とか痛みとか、独特のダルさとか
そう言った諸々の弊害を考えると、思わずNoを出してしまうけれど



愛しい人に触れてもらえるその行為を、

甘い痺れと熱を共有する、その時間を、


嫌いなわけではないのだ。


ただ少し、戸惑ってしまうだけで



そっと、長い指先が髪を梳く。


同時に頬に落とされた口付けは、
緩やかなラインを描いて、耳元へと落ちる。


耳元で響くリップノイズに肩を震わせて

けれども彼は、そのまま甘く、低い声で囁いた



「さて、どうしようかね・・・」


「は、い・・・?」


「そう言われると、俺も大概嬉しくなるんだが?」


「なら、私もそれで嬉しいです」



普段貰ってばかりの、この持て余すほどの気持ち


けれどもたまのこんな時、
素直になったその言葉で、貴方が嬉しいと感じてくれるなら


これほどに満たされる気持ちもなくて



絡んだままの指先をギュっと強く握り返す。



首筋をなぞる唇が、微笑んだ。



「・・・・・幸せだと、思っても構わないか?」


「―― 思ってください、たくさん」



たくさん、自分と同じくらいに


しあわせを、共有して下さい。



たくさん、たくさん――



「私に、愛を下さい・・・・」


「お前さんが、望むなら」



体中で感じる、彼の熱と


触れる手の心地良さと


痺れて、何も考えられなくなっていく、その頭で



―― ああ、やばい



また、すきになる



『だいすき』が、とまらなくて



気持ちだけが、どんどん先に行ってしまって



少し怖くなった私を、
ジョニーは少し笑って見つめて




、愛してる。」

「ん、」



行為の途中、
甘く紡がれたその言葉と、優しい口付けに



瞳を閉じて、すべてを彼に預けてみた



(私はまた今日も、愛しい貴方の夢を見る)








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