『アイシテル』なんて

言ってくれなきゃわからない

不器用な貴方も良いけれど

時には、情熱的になって魅せてよ


ose
Bu d




溜息が、一つ二つと零れて、
今日で何回目になるのかもわからない溜息が、
夜の星空に消えていった。

「ラビのバーカ・・・」

ポツリと漏らした悪態もまた、溜息と共に。

彼が居ない。

傍に居ない。

今何処にいる?

無事でいる?


闇夜に問いかける。返事は返らない。

解っている。
きっと、彼の事だから無事なのだ。

こっちの心配なんて馬鹿みたいに、何時もと変わらない
暖かくて、優しくて、安心してしまう様な笑顔で、
帰ってくるに違いないんだ。

いっそ、苛付きを覚えるくらいに・・・


何時もそうだ。
自分ばかりが空回り。

『大好きだよ』

言うのは何時も自分から。
彼はいつだって

『俺もだよ』

なんて、いつもの笑顔で返してくるだけ。

寂しい

空しい

だって、貴方は此処に居て
でも本当に、私の事見てる?


疑うだけじゃ、何も見えないよ。

笑ってるだけじゃ、わからない。

ねぇ、貴方が不器用なのは知ってるから。

言葉にするのがは恥ずかしいのもわかるから

ねぇ、たまには貴方から言って見せてよ


「・・・大好きだよ・・ラビ・・」



呟きがまた、夜空を彩る。


「俺もだよ、

答えは、思いがけずに返ってきた。

後ろから。

さっきまで、人の気配なんて無かったのに。

振り返れば、やっぱり。

ムカツクほどに何時もどおりの貴方がいる。

優しくて、暖かくて、安心してしまう。


「おかえり、ラビ」

ニコリと笑ってみせた。

「おうっ、ただいま」


負けないくらいの笑顔。
私の笑顔になんて、簡単に勝ってしまう笑顔。

悔しいなんて、言ってあげない。

だって、それこそ悔しいものね


「ね、

「なぁに?」

子供の様に無邪気に見上げて来る。

その笑顔が、悪巧みを考える子供みたいだったから
思わず首を傾げてしまった。


―― バサッ


ふと、何かが空気と擦れる音がした。

視界を鮮やかに彩る深紅

微かに薫るは仄かな蜜の甘さ

華やかに開く豪華絢爛の花びら

にお土産サ」

そう、彼が極上の笑みで差し出したのは、
大きな大きな、薔薇の花束。

そんな突然の、予想もしてなかった行動に、
反射でソレを受け取りつつも、目を見開いた。

「ど、どうして・・?
 アレ・・・今日、なんかの記念日だったっけ・・・?」

カレンダーに目をやって、
今日を示す日付けの枠には、なにも書かれてなくて、
混乱するばかりの私に、
ラビはベッドに腰掛けながら、
キョトンとして様子で言った。

「なぁに言ってるんサ?

「ぇっ?」

それが本当に
『何を言っているかわからない』という表情で
何だったかと必死に頭を働かせる。

ラビの記憶力だから、もしかしたら
なんでもない事を覚えて記念日にしているのかも・・・



「記念日とか、そうじゃないとか
 関係ないっしょ?」

「ぇ・・・」


けれども、返ってきた答えは、
またしても、予測しても居なかった言葉。


「俺らは『今まで』だけじゃないっしょ?
 記念日は、もっと2人で作っていくんだからサ」


それから、照れくさそうに頬を掻いて
向けてくれた笑顔は、いつもよりも少し子供っぽかった。

「差し詰め今日は・・・
 『薔薇の記念日』・・・って事で」

「ラビ・・・・」

その名前が、いつもよりもずっと愛おしかった。

ベッドから立ち上がったラビに抱きしめられて、
その大きな背中に、手を回した。

いつもと変わらない。

優しくて、暖かくて、安心する

そんな愛おしい人。

「愛してる」

耳元で呟かれたのは、甘い甘い愛の言葉―・・・

「・・私も。
 大好きだよ、ラビ」

そうやって、自然とお互いの唇を合わせた。


一緒にいるだけで、嬉しくなれる。

こんな気持ちにさせてくれるのは、貴方だけ・・・・


「大好き」

「俺も」




貴方からは滅多に言ってくれない、愛の言葉

貴方が言ってくれない分、私はたくさん貴方に言うから

だから

「愛してるサ。

ねぇ、たまには情熱的になって魅せてよ


『今日』を記念日にした

紅い 紅い 薔薇の様に・・・・


                        ―fin...




58000hitを踏んでくださった紅月様に愛を込めて

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