真っ暗な室内で一つ
    女の子の声だけが響く







白翼

悪魔







どうしたんだろう・・私。

なにがあった?

アクマに取り囲まれた、ソコまでは覚えてる。

でもその後は――?

考えようとすればする程、
  ワケがわからなくなっていく。

体は椅子に腰掛けたままで
まるで自分のものじゃないみたいに
重くて動かない。

「う〜ん。こっちには、白が似合うなぁ。
 なんか、花嫁さんみたい。
 良い人形手に入れたな。」

突然目の前に現れた少女に、
私は驚く。
短髪の黒髪に、赤黒い肌。
華奢な体つきのその少女は、嬉しそうに
私の体を眺めながら、ふと、気付いたように言う。

「あれ?もしかして、意識あんの??」

何か言おうとしたけれど、体は全く動かない。

「喋るまでは出来ない?でもいいよ。
 他の奴らとは、顔つきが全然違うから。
 すぐわかるよ。
 そっれにしても、タフだね〜アンタ。
 あいつの攻撃、モロに食らってたのにね〜」

ただ興味深そうに、少女は私を見つめてる。
その不快感と、言い知れぬ恐怖に、
私は力を振り絞って、動くことを試みた。

「あっ!動こうとしてる?
 すっごい気力!今まであった人間の中でも
 ダントツ1位だよ、アンタ。」

動こうとする私に、少女は楽しそうに話しかける

「さすがに、動くまではムリか。
 まぁ、いいや。最高のお人形には、最高の
 名前を付けてあげないとね。」

少女は、ん〜・・っと考え込んで、それから、
思いついた!と言うように、言った。

「・・・・・うん!それが良い!!
 似合うよぉ。うんうん。」

少女はニッコリ笑って、愛おしそうに呟く



少女は私の首に手を絡めてきた。

本当なら振り払いたくとも、瞬き一つ出来ない。
そのもどかしさも、少女は気付かぬように
軽く私の唇に口付けた。

驚く私に、少女は甘く囁く。

「僕、ロードって言うんだ。」

少女・・ロードは、その細く、黒い爪の光る指で
優しく、私の唇をなぞった。

「いつか、自力で動いて、僕の名前、
 呼んでみてよ。」

ロードは、そう言ってもう一度、
唇にキスを落とす。

「そうしたら、もっとたくさん遊んであげるよ。」

そう微笑む少女は無邪気で、子供のようなのに
そこに広がるのは底なしの闇・・・

私は、瞬間的に悟った。
この恐ろしいほどに無邪気な悪魔から
逃げることは、出来ないと――・・

「その日まで、毎日、お洋服替えたり
 髪型変えたりしてあげるからね。」

ロードはニッコリと笑った。

・・・」

                       ―fin...



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