真っ白な大地を歩いて

何時からだろう

振り返って、足跡が一つだけになったのは

何時からだろう

大きさの違う、彼の足跡がなくなったのは

何時からだろう

隣を歩く人が、居なくなったのは・・・・




lone irth ay





「アレーン!メリークリスマース!!」


後ろからドスンッ!と押されて、
窓の外の雪を見上げていたアレンは、
ガンッと頭をガラスに打ち付けた。


結構良い音がした気もしたけれど・・


「大丈夫?」

「・・・・多分。」


師匠のトンカチよりは、全然。

思い出して、さっき窓にぶつけた額よりも
後頭部の方が疼いた気がした。

トラウマとは、怖いものである。


「そか。
 アレンが石頭で良かったー!」

あはははは・・とか笑う彼女。
これはもう、天然で言っているのか、
もしくは分かってていっているのか・・
分かりかねる。 


「で、
 何か用があったんですか?」

わからない事を考えていても仕方ないので、
問いかける。

は変わらず笑んでいた。


「うん。だからメリクリ。」

「・・・・それだけ?」


当然の様にそれだけ言ったに、
もう一度聞けば、満面の笑みで首を縦に振る。


思わず、深いため息が漏れた。

何となく、痛み損だ。

そんな事を思っていると、
が「あっ!」と声を漏らす。

何かと思えば・・・

「ソレともう一つ。
 お誕生日おめでとう、アレン!」

その言葉に、きょとんとしてしまう。

そんな表情を見てか、はピッと指を顔の前に突きつけた。
自然、寄り目になる。

「たーんーじょーうーび!
 おめでとうっ!!」

「う、うん。ありがとう・・・」


迫力負け。

何度か首を縦に振って見せて。
は満足したのか、ヨシッと頷いた。



フワリと、が微笑む。

その笑顔に、アレンも微笑を返した。

小さなケーキに、蝋燭を一本だけ立てて、
マナと祝った誕生日は、少し霞掛かっていた。

それでも、鮮明に残るのは彼の

優しくて、暖かい・・・笑顔・・・・

「誕生日・・・かぁ・・
 懐かしいな。修行してた頃は、全然祝ったりしてなかったから。」

雪が、マナを奪ったあの日から、
誰かに祝われる事はなかった。

清冽な白が彼を奪った・・
あの年の誕生日が、自分の記憶に残る、最後の誕生日だ。


「確かに、クロス元帥はそうゆう事する人では無さそうだね。」

そう言って苦笑するに、自分の苦笑する。


「うん。
 クリスマスなんて、いつも女の人のところに出掛けてた」

それは、会話の延長線のつもりだった。
でも、捉える側のにとって、
ソレは少し違うものだったらしい。

「・・・・それじゃあアレン。
 誕生日の時は・・・一人ぼっち?」


「ぇ・・・?
 ・・・うん、そうだよ。」

それがどうしたの?

首を傾げる。
は俯いて足元を見てる。

突然俯いた彼女に、困惑して顔を覗き込む。

は、何かを考えているようで・・・

突然、フッと顔を上げた。


「アレン!プレゼントがあるんだ!」

「プレゼント・・?」

彼女の言葉に、その手を見てみるが
特に何を持っているわけでもない。

首を傾げれば、は恥ずかしそうに頬を掻いて笑った。


「あるんだけどさ・・・
 私、部屋に忘れちゃったみたいで・・・
 一緒に来てくれる?」

突然の彼女の申し出に少し戸惑ったけれど、
先ほどの考え込むその表情が気になって・・・

「うん。」

思わず、頷いた。

「ありがと。行こ!」

言って、はアレンの手を引いて部屋への道を急いだ。






゜・.*。・゜☆゜・.。*・゜☆゜・.*。・゜☆゜・.。*・゜゜・.*。・゜☆゜・.。*・゜







部屋に着くなり、
はガサゴソと机の中をあさり始めた。

する事のないアレンは、ベッドに腰掛けて、
何かを探すを見つめる。

目を閉じれば、あの懐かしい笑顔が甦る。

『アレン』

そう、あの懐かしい声で、今にも呼んでくれそうだ。

もう、そんな事がないくらい

わかっている・・・けれど。


「アレン!」

呼ばれて、閉じていた目をゆっくりと開く。

視界には、覗き込むの姿があった。

「時間掛かったからって寝る事ないじゃん。」

「寝てないよ。
 ただ、少し昔の事を思い出してただけ。」

そう、苦笑して見せると
少しだけ瞳を伏せてから、いつもの笑顔で言った。


「手ぇ出して。」

言われたとおりに手を差し出す。
その手に、ポトリと何かが落とされた。


「・・・・アメ?」


コレがプレゼント?と落とされた一つだけのアメを
見つめて言う。

すると、は言った。


「それは、生まれたばかりのアレンへ。」

その言葉と共に、もう一つアメが落とされる。

「コレは、1歳のアレンに。」

そう、一つ一つ年を数えてアメが落とされる。

年は段々に上がっていき、

マナが雪に奪われ、クロスと出会った歳を超え・・・


「コレは、去年の・・・15歳のアレンへ。」

そうして、もう一つ。

アレンの手には、
15年間のプレゼントの山が出来上がっていた。

甘い、アメのプレゼント・・・


そして


「・・・これが、16歳の、アレンへ・・・」


そう、ポケットの中から取り出した、一つのプレゼント・・・

「お誕生日、おめでとう。」

受け取ると、は、ベッドに座るアレンの額にキスを落として
そして、その体を抱きしめた。

「・・・今日は・・一緒に居よう?
 アレンの一人ぼっちの誕生日が・・・無いように。」

抱きしめる力が、少しだけ、強くなる。

熱が伝わる。

手の中いっぱいの15年分のプレゼントと
16歳のプレゼントが、やたら重く感じた。

彼女の・・・気持ちの重さかもしれない。


「・・・うん。
 今日は・・一緒にいて、。」

彼女の体を抱きしめ返して、呟いた。

白紙に返して、
寂しい記憶を消してくれた彼女の事を。

一人の誕生日を消してくれた彼女を、抱きしめて―・・・






真っ白な大地を歩いて


何時からだろう


振り返って、足跡が一つだけになったのは


でも

一つの足跡が、追いついてきて


ホラ、足跡が2つ


並んで 歩き始めた・・・・




                             ―fin...




こんなんでも一応、
無期限フリーだったりするのです。

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