愛してる

誰よりも

それだけはきっと変わらない


貴方を、愛し続けるから―・・・・・







せで
ありますよう









窓の外が闇色に染まり始める
山や木は今日最期の陽の光に当てられて、影絵の様に
そのシルエットを映した


窓からぶら下がる、少しずつ身を削られていく氷柱は
静かに、一滴ずつの雫を落とす



「ねぇラビ。」


「ん〜・・・?」



そんな氷柱の涙を眺めながら、
同じようにボーっとしているラビを呼ぶ。



「ラビはさぁ、
 まだ私の事、ちゃんと見てる?」


「どうして?」


「なんとなく。」



別に理由があったわけじゃない。


ラビが浮気してる気がするー・・とか、
愛が足りないー・・・だの。
別に、そうゆう事を思ったわけじゃなくて

なんとなく、不安だったから。



・・・時々、不安になる。



君はいつも、誰にでも優しくて
その暖かい笑顔は、皆が知っているから

その心を繋ぎとめる自身なんて、自分には無くて

ふわふわと、君の心は何処かへ行ってしまいそうで

何となく合わせたこの手の温もりだって、
いつか違う人の物になってしまうかもしれない



「なんとなく、聞いてみただけ・・・」



まだ、君の心が此処にいてくれているかどうか・・・・



ラビは、ふぅんとか言っての肩を抱き寄せた。
も大人しく、まるでその温かさに縋る様に、肩に頭を乗せる。

陽は、最期の閃光を放って姿を隠した。
なんとなく、2人でそれを見つめてから



「ねぇ、ラビ」


「ん?」


「もし、ラビが別の人を好きになったら、すぐに言ってね?」



その言葉は、案外すんなり出てきた。
此処で初めて、ラビの片方だけの瞳がを捕らえる。

それでもは、陽の隠れた山の先をずっと見つめた。



「どうしたん?さっきから」


「だから、『何となく』なの」



それでも、これだけは伝えておきたいなと、
そう思ったから、ゆっくりとラビの方を見て言葉を紡ぐ。

ゆっくり、ゆっくり・・・

言葉を、一つ一つ探すように―・・・・




「私はね、ラビに幸せで居てもらいたい。
 ラビが傍に居てくれれば、私は幸せ。でも、もしラビが
 私と居るよりも幸せになれる事があるなら・・・・

 例えそれが、ラビが別の人と歩む事だったとしても応援したい。
 その時は、笑顔でこの手を離したいから・・・・」


だから、その時はすぐに言ってね。


そう言って、また視線を外す。
重ね合わせた手に、ラビは少しだけ力を籠めた。



は嘘つきサ」


「嘘じゃないよ。」


「んじゃ我がまま」


「どーしてそう言うかなぁ?」



苦笑して、尋ねる。
ラビの溜息が、髪にかかった。

首を傾げると、頭を撫でられる。

子ども扱いされているような気持ちだったけれども、
ゆっくりと髪を梳く手が、心地良かった。



「我がままサ。
 が、そうやって俺の事思ってくれんのはすげぇ嬉しいけどさ、
 オレだって、に幸せで居て欲しいし。」



それで、もし別れたとして・・・

確かに、自分は幸せになるかもしれない。

けれども、そしたら彼女の幸せはどうなるのだろう・・・?


「私は平気だよ。
 ラビの幸せそうなところ見てれば、十分幸せだから」

言ったら、もう一度溜息を吐かれてしまう。



「じゃ、やっぱは嘘つきな」


「だーかーらーぁ」



そんなことないっ!と反論しようとするの口に
ラビは自らの唇で制する。


柔らかい温もりに、溺れていく自分が居る



ゆっくりと離れた唇に、は顔を少し赤くして俯き、
ラビは、そんなの頭をもう一度撫でた。



「嘘つき。
 だって、今にも泣きそうだった」


「そんなこと・・・」


「なくない。
 それが本当だったら、あんな顔しないサ」


言い返す言葉もなくて、さらに顔を俯かせる。



 オレの事、キライになったん?」


尋ねると、首を懸命に横に振った。


「嫌いになたなら・・こんな事、言わないし・・」


「だろ?
 オレも今、以外は眼中ナシ。
 今スキなんは、だけなんサ。」



「・・・っうん・・・・」


良くもまあ、
こんな恥ずかしいセリフをサラッと言ってくれる。

こっちが恥ずかしくなって、まともに顔を合わせられない。

ラビは、それでも尚微笑んで、言った。



の事だけしか、今は考えられないから、
 が居てくれれば、今のオレは幸せだからさ。
 今からそんな、微塵も思ってないこと言うのはヤメ!

 それよりも、2人で幸せになれる・・・
 そっちの方法を一緒に考えて行く方が、絶対に楽しいって。
 な?」


そう言って、覗き込んでくる。

この人は、本当に優しい人だな・・・

赤くなる顔を抑えて、ラビの顔を見た。

欲しい言葉を惜しみなく、むしろ、何倍にもしてくれる。



「・・・・・うん。そだね、ラビ」



微笑んで答えたら、「よし、イイコだ。」なんて、
また頭を撫でられる。


完璧子ども扱いだなぁ・・・なんて思いながらも
自分もまた、他の人が考えられないくらいにこの人が好きで・・・



「ラビ」


「ん?」


「私がラビと一緒に居る事を幸せだと思える限り・・・
 此処に、居てくれる?」



問いかけ。



「やぁっぱ、は我がまま」



でも、そう答えたラビの表情も、満更では無さそうだ。






愛してる



誰よりも


それだけはきっと変わらない



貴方を、愛し続けるから


お互いが隣に居る事を幸せに感じられる限り


傍に居て 微笑んで 喧嘩して


君が 私が


この先ずっと


幸 せ で あ り ま す よ う に ・ ・ ・ ・ ・





                               ― fin.....



- CLOSE -