遥か空に手を伸ばす事

届きもしない星を望む事

全て夢現に過ぎていくのに、リアルを求める自分は滑稽?

独り散歩道を歩いてみても、果てない回廊に思えるだけで、
何となく誘った君と歩くと、少なくとも、道中暇な事は無くなった。


冬の夜は空を仰いで、夏の昼は雲を仰いで


いつだって、上ばっか見てた。


前に進む意思だけに没頭して、いつの間にか止まってしまっていた足にも
俺達は気付けなかった。


だって、こんな日常が、余りにも僕たちに定着してしまっていて―・・・


前に進む必要も無かったし、前に進めなかった。


あと一歩を踏み出したら、あってはいけない境界線にぶち当たる。



「秋だねぇ・・・」


「ああ」


「寒い・・・ね。」


「寒いな。」


「中、入らない?」


「んー・・・もう少し、歩かねぇ?」


北風に身をさらして、それでもは「いいよ」と笑う。


高鳴るような胸は、この寒さのせい。

浮き立つ思いは、風に散る枯葉の輪舞のせい。


自分の首から外したマフラーを、彼女の首に巻いてやって。


「・・・ありがと」


これでもう少し、一緒にいられる、なんて

きっと秋の寂しい景色のせい。


「ねえ、ラビ」


「んー?どうしたさ?


「大好き・・だよ。」


フイを打たれた気分だった。


嗚呼、なんて選び抜かれた言葉だろう。


使う場面もあくまで的確で、
使い方も何も、間違っちゃいなかった。


ああ、なんて達の悪い事だろう。


「そうさなぁ・・・・」


「うん。」


「・・・うん。」


「・・・・うん?」


「好き・・・かもな。」


あくまでも正しい言葉でしかない告白に、
誤魔化す術を、自分を知らなくて。


ただ頷いて、曖昧に笑って見せた。






大好きだよ、だけ言って
上ばっか見てた俺は、すぐ足元の境界線にも気付けなかった













special thanks[哀婉

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