『ガキ』

君の口癖は、それだったね

今でも君は

私にそう、言うのかな――・・・?





どんなにぎても
 おはガキだよ






「ねぇー。ユウー」

一つの十字架の前で、は言う。

風が、その柔らかい髪と戯れて、
遠くで鳴る教会の鐘の音を運んできた。

「ねぇ、ユウ。私、今年で19になるんだよ?
 ユウよりも、お姉さんになっちゃった。」

あはは・・とは笑う。
十字架はだんまりを決め込んで、返事を返して来ない。

『ユウ!またアレンと喧嘩したって!?』

『うるっせーよ、ガキ』

『だぁれがガキだ、誰が!!』

『そーやってムキになる時点ですでにガキだろ。』

『ムキーッ!!』

ずっと、昔・・・

まだ、自分の方が年下だった時の事。

「ガキだのなんだの言ってたクセにさ、
 やる事は一通りやっちゃったくせに。」

キスだって、それ以上だって、全部。

やって、しまったのに・・・

いつまでも、子ども扱いだった。

最後まで、子ども扱いだった。


『ユウっ!!』

あの日、彼は大怪我して帰ってきて・・・

たんかで運ばれる彼の横で、
名前を呼んで泣くしか出来なかった。

そんな自分に、ユウは血で汚れた手で、頭を撫でた。

――・・・・』

『ユウ、ダメ!喋んないで!!』

自分の言葉なんて、完璧に無視で――・・・・・

『泣い・・・て・・んじゃね・・・・ぇよ・・・ガ・・・キ・・・・・』

最後の言葉が、それだ。
本当、君らしすぎて、笑えてきて、涙が零れた・・・・

ロマンチックなんて言葉、
君には一欠片も無くて―――・・・・



「最後くらい、もうちょっと優しい事言ってくれても
 いいのにねー。」

十字架をピンッと指で弾く。

沈黙の十字架は、何も言わない。

「ねーユウー。私、お姉さんだよー。」

だって、あの日から君の時は止まったままだ

「ねぇ、ユウ。今の私に君が会ったら・・・・」

もう、ガキなんて言わない・・・・?

――― ガキだよ。何時までたっても、テメェは ―――

何処かで、そう言って笑ってる気がした。

は、立ち上がると、う〜んと伸びをする。

「もう行くね、ユウ。
 私も、何時までもガキでいられないから。」

笑って、歩き出し、2・3歩行って、止まった。

「また、来るね。」

後ろの十字架は、優しく笑っている気がした。

は、再び歩き出す。

振り返る事もせずに。

今度来るときは

『ガキ』だなんて、言われないように――・・・・・


                          ―fin...




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