これ以上

 貴方を愛さぬように・・・・




ForMe






「ねぇユウ。別れようか」

何の前置きも無く、何の予告も無く、
彼女から淡々と告げられた言葉

表情は、俯いているせいで読み取れず、
声音からは、何の感情も見出せなかった。

「何・・・・言ってやがる・・・?・・・」


そんな彼女の言葉に、
少なからず抱いた動揺は、自分の声に
嫌と言うほどに現れていた。

神田のその様子に、は顔を上げる。
黒い瞳が真っ直ぐに体を射た。

「そのまんまだよ。ユウ。」

その微笑むような表情は
何故、こうして自分に向けられているのか・・・・

「もう、飽きちゃった。
 だから・・・・別れて?」

嘲るような笑いは
何故、どこか悲しそうなのか・・・・・・





















ダメなんだよ
これ以上、貴方を愛したらいけない。

自分達は、いつ死ぬのかもわからない身だ。

もし、突然貴方失ったら、

今の私は

どうなるだろう・・・・?



「一緒にいると疲れるんだよね。
 アレンに馬鹿みたいに噛み付いてさ。
 年下と一緒になって喧嘩して・・・」



でも、そんな貴方が
気が狂いそうになる位に好きで


「一緒に食事しても
 嫌いな物があるとガキみたいに文句ばっかで・・」


それでも、残さず食べる貴方らしさが好きで


「少しラビとかと話したくらいで、
 すぐに怒りだすし・・」


そこに強い愛情があることも知っていた・・・・



「ユウといると疲れる。
 もうヤなの。別れて・・・・」


何よりも、愛してる

だから、別れて欲しい


これ以上 愛したら

きっと後に戻れない




貴方を失った時


私はきっと、すぐに壊れてしまう―――・・・



「ねぇ、ユウ・・・・」



何か・・・・言ってよ・・・・・・














・・・・」



優しい声で呼ばれる。

どうして、そんな声で私を呼ぶの・・・?


「本気で、言ってるのか・・・?」


優しい視線で見られる。

どうして、そんなに優しく見つめるの・・?



「・・・・・そうだよ」



「・・・・・そうか・・・」




ゆっくりと、自分に近づいてきた体は、
冷たく横を通り過ぎた。



「―――――っ・・・・・」


これで、良かったのだと・・・
思っても涙は止まらなくて


そんな、自分の不安から
別れてしまった彼に、申し訳なくて仕方なかった。



廊下のほうに遠ざかる足音に、
静かに流した涙は消えず

扉に手を掛ける音に、
きつく瞳が閉じられた。



「・・・・・・・・・・・・」



自分を
それでも尚、優しく呼ぶ声。



「俺は」



その声を聞いているだけでも

愛しくて気が狂いそうになるのに・・・・


ソレなのに


私は・・・・・・・・・






「お前と別れるつもりは、さらさらねぇ。」




その、強い言葉。
思わず振り返れば、戸に手を掛けたまま
こちらを真っ直ぐに見つける、優しい姿。



「・・・・な・・・・んで・・・・・?
 なんでよ!!
 別れてよ、もう私は貴方といることに疲れ 「そういう台詞は・・・・」



自分の言葉を遮った、
決して大きくなく、けれども、強い意思の言葉。



「そういう台詞は、
 自分がどんな顔をしてるのか、わかってから言え。」

「・・・・・っ」


言われて、横の鏡を見れば
情けない顔をした自分の姿が、鮮明に写っていた。


「・・・・好き・・・・なのに・・・・・」



鼻の奥が、ツンと痛くなる。
零れる涙が、握り締めた両手に落ちた。


ポンと、頭に置かれた大きな手。
嗅ぎ慣れた香りに、思わずしがみ付く。

優しく抱きしめ返してくれる、大きな体が
誰よりも、何よりも、好きなのに・・・・・




「いなく・・・ならないで・・・・ユウ・・・」


望み と 祈り

悲しみ と 不安



ソレをかき消してくれるのは

貴方しかいなくて――・・・・・



「頼まれても、いなくなんてならねぇよ」


その、少し笑みを含んだ声音。

顔を上げれば、甘いキスが落とされて



耳元で


囁かれたのは―――・・・・・











を置いてなんか、行けるかよ」






                        ―fin...




柏陽しゃんとの相互記念に50%の愛と50%の感謝を込めて。

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