たくさんの人の 温かい笑顔も

嬉しい言葉も 優しい行動も

両手一杯のプレゼントも

みんな みんな

嬉しいけれど・・・・

やっぱり、君が居ないと

ダメなんだ――・・・・・





L ast K iss!


もうすぐで、今日は終わる。

今日は俺の誕生日で、例の如くという所か・・
コムイは俺の為にと、誕生日パーティーを開いてくれた。

サプライズパーティーで、任務から帰って食堂に向かうと
突然クラッカーがお出迎え、なんていうベタベタなパーティーは、
たくさんの人達の温かい笑顔や言葉に満ちていて
何だかんだでイザコザがなかった訳じゃないが、
とても楽しい一日だった。

「ふぅ・・・・」

けれど
バカやって騒いだ後の一人の部屋は寂しくて、
が居ないから、その寂しさは倍増。

「なぁにやってるんサ〜・・・・・・」

数日前から、は任務に行っていて、
さほど難しくはないハズの任務だったのだが、
未だ帰らない。

今日のパーティーは、なんとなく、
寂しさを紛らわす為の
コムイの気遣いだった気もする。

「本当ならサ〜、
 12時になると同時に
 チューで誕生日祝ってもらったりしたかったんだけどなー」

ベッドでゴロゴロしながら、呟く独り言は、
空しく部屋に響いて消えた。

12時と同時にどころか
今日一日、彼女には会えないかもしれない。

あと10分ほどで、今日は終わるのだ。

で今、頑張っているのだろう。
そして、帰ってきて
彼女はきっとたくさん謝ってくるから

だから、文句なんか言えない。

それに、言ったら彼女は悲しそうな顔をするから
言いたくないのが実際の所だ。


それでも、やっぱり寂しい夜はの温もりが欲しいし、
2人で誕生日祝おう〜なんて、少し前から話していたから。

だから、余計に空しくなるのかもな・・・・

そんな夜だから、頭の中は余計なことでいっぱいで

、怪我してないかな。とか
今何してんのかな。とか

心配で、心配で・・・・

でも、少しでも俺の事考えてくれてるかな〜・・
なんて、少し望んでる。


何にしても、ただ俺の妄想だけで終わるんだけど・・・


フカフカしたベッドに突っ伏した目の端に
サプライズパーティーで貰ったプレゼントの山が映る。

たくさんの人が、笑顔でプレゼントをくれた。
どれもこれも、きっと一人一人が一生懸命
選んでくれた物に違いない。

けれども、やっぱり・・・


たくさんのプレゼントも

みんなの優しい笑顔も

言葉も

楽しさに満ちたパーティーも


俺にとっては
が居なくちゃ

ただのガラクタで

意味を成さないもので

味気ないものに変わっちまうんだ。


〜・・・・」


プレゼントも

ケーキも

パーティーも

なんにもいらないから・・

そんな風に、特別な物何もいらないから

ただ 無事に帰ってきて。

そして、いつもの笑顔で、言って・・・

「ただいま」って。

そんで、遅れても良い。

お前の口から言って。

謝罪でもなんでもない。

そんなん、いらない。

ただ、変わらない笑顔で言って欲しいんサ。

「おめでとう」って・・・











何処か遠くから、バタバタと慌しい足音が聞こえてきた。
その音に反応して、ガバリと体を持ち上げる。

その体の反射に、思わず苦笑した。

「相当飢えてんだな〜・・俺。」

でも、だけど

しょうがないじゃないか。

心の中は、ただただ嬉しくて仕方がない。

ベッドから起き上がって戸に近づく。
間違えるわけがない。
あの、足音は・・・

「ただいまっ!ラビ・・」

バタンッと勢い良く戸が開いて、
待ってましたとばかりに、その姿に抱きつく。

小柄で、暖かくて、柔らかくて

優しい匂いが、懐かしい・・・・


「ら、ラビ・・?」

胸の中で、くぐもった問いかけがする。
布越しに吐息の暖かさが伝わって、くすぐたかった。

「おかえり、

何より欲した温もりが、今、ここにある。

それが、何より嬉しい事なんだ。

「あ、あのね、ラビ。
 一緒にお祝いしようって言ってたのに・・・・」



謝罪の言葉は、遮って。
目線を合わせて、ゆっくりと言う。

「もう、俺の誕生日は数分しかないんだからサ、
 言う事は、他にもっとあるんじゃね?」

は、一瞬呆けて、
でも、言ってくれた。

一番 一番

欲しかった言葉を・・・

「お誕生日おめでとう。ラビ」


なんか、涙出そうかも・・・
そん位、嬉しいんだ。


・・・・」

確かめるように、名前を呟いて、
ゆっくりと、唇を合わせた。

柔らかくて、暖かくて、の匂いだけがする。

こんな時が、ずっと続けば良いのに――・・・

唇を離して、を見れば申し訳無さそうな顔をしてて・・・


「あのね、任務から急いで帰ってきたから
 プレゼントも用意できなくて、
 一緒にも居られなくて・・・・
 本当にごめ―・・・」

もう一度、遮る言葉は、唇で。

だから、謝罪は聞きたくないんだって。

わかってくれよ、ホント。



ふと、耳に時計の鐘の音が聞こえた。

これで、俺の誕生日はもう終わり。


軽く触れるだけだったキスは、
軽いリップノイズを残して



「なんつーかサ、
 本当なら、12時になると同時にキスしたり
 ずっと一緒にいたり・・したかったってのは、
 俺の本音」

「・・そう・・だよね・・・」

「でもさ、」



また申し訳無さそうに俯くに、
微笑みかけてやった。

だって、俺が見たいのは
そんな顔じゃないんだ


とのキスで終わる誕生日ってのも、
 悪くないかもな」

驚いたように俺を見るに、
なんだかこっちが照れくさい。

でも

は、やっと笑ってくれた。

俺が、一番見たかった表情が、そこにある。





たくさんの人の温かい笑顔も

嬉しい言葉も 優しい行動も

両手一杯のプレゼントも

みんな みんな

嬉しいけれど・・・・

やっぱり 君が居ないと

ダメなんだ



ケーキも プレゼントも パーティーも

何もいらないから

君だけ居れば いらないから

傍に居て

一緒に喜んだり 驚いたりしてくれれば良いから

君の笑顔が

そのあったかい笑顔が、


どんな物よりも一番の誕生日プレゼント





                       ―fin...



こんなんでも一応、
無期限フリーだったりするのです。
[BGM:Litty]

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