「一つ素朴な疑問なのですが。」

「はい?」


冬の遠い空を眺めて、吐いた息が窓を白く曇らせる。

特に会話があったわけでも無しに、アレンもベッドで暇そうだったから
この機会に、今まで不思議だった疑問を、1つ。


「アレンは一体、私の何が良くて好きになったのさ。」

「・・・随分今更ですね。」

「聞く機会を逃してましたからね。」


どうせ暇なら聞く位良いでしょ?と
別に良いですけど・・・とはアレン。


「どうしても聞くんですか?」

「うん。」

「後悔しますよ、絶対。」

「なんかそんな覚悟決めて聞かなくちゃいけない理由なわけ?」

「・・・・・まあ、割と。」

「マジで?」


その言い様に少し怖気づきそうになる自分を叱咤。

いやいや何を言う、そんな覚悟が要る理由、逆に聞いてみたいじゃないか。

そうだろう?女、ド根性。


「じゃあ、ぶっちゃけますけどね、」

「はいはい、ドーンとぶっちゃけろ。」


それでも聞く姿勢を止めなかったに対して
ほんの少しの溜め息と共にアレンが言って。


「誰でも良かったんです。」

「・・・・・・はい?」

「最初は、単なる思い付き。」


ケロっとした表情で言う、目の前の可愛い顔した少年A。

ハニーフェイスで今何毒吐いたんですか、え?


「お、お、思いつき・・・とな?」

「ええ。『あ、何か恋してみたいな』みたいな。」

「え、マジで?」

「ええ割と。」


で、そう思った後最初に会ったのが貴女でした、と。


「後悔、しました?」

「・・・・・割とガッツリ。」

「だから止めたのに。」

「一体誰がそんな
 いきなり鳩尾ガッツリ殴られたような事言われると思うのよ。」


いきなり重たいんですが、
ちょっとどうしましょうか、コレ。


「私・・ちょっと君との付き合い考えようかな・・・」

「あ、それは困ります。」

「何でよ・・・・」


割とショックを受けていた自分に軽く驚きながら
毒吐きハニーフェイスをゲッソリ気味に見つめ返す。


アレンは、さっきとは少し違う、
何処か照れくさい様な笑みを浮かべていた。

そうしていると、いかにも少年らしい。

「言ったでしょう?」と、少し躊躇いがちに、言葉。


「最初は、単なる思い付き。」

「うん。」

「次に貴女に会って」

「うん。」

「本気で恋に落ちました。」

「・・・・・うん?」


その言葉に、怪訝そうに眉根を寄せる
アレンは何処か悪戯っぽい笑みで、笑った。


「つまり、一目惚れです。」


上目遣いが犯罪的に可愛いとか思った自分は、
相当彼に恋してる。


「ねえ、それって先の前置き必要あったの?」


あんな爆弾発言を投下しなくたって、
その一言だけ、サラッと言ってくれりゃ良かったんじゃ、とか。


「だって、今更そんな事言うの、
 なんか凄く照れ臭いじゃないですか。」

「そんな可愛らしい理由であんな爆弾発言したのかアンタは・・・」


やっぱり少し、コイツとの付き合い考えようかしら・・・

何か、彼の一言で浮き沈みの激しい感情に、正直
少し疲れ気味かもしれない。


。」

「ん?」

「嫌いには、ならないで下さいね?」


本気で恋に落ちたから、嫌いになられたら困るんです。

アレンはそう付け足して、だからその上目遣い、どうにかしてくれ。


素直に返すのも癪だから、たまには此方から、軽いキスを送ってやった。


散々遊ばれたのだから、これ位させてくれても良いと思う。


と、それはちょっとした建前で。

この位でアレンがそんなに動じないのも、そりゃ知ってるし。


「どうしたんです?急に。」

「何となく、したくなったから。」


結局口を付いて出る、素直な言葉。

やっぱり、ちょっと気に食わないけれど。


、」

「ん?」

「もう一回。」

「・・・・アレンがしてくれたら、しても良い。」

「あ、珍しい。」

「?」

が素直だ。」

「・・・・もう絶対してやんない!」


言って背けた顔だけれども、抱きしめられたらそれも無意味で
そっと落とされた口付けは優しくて、甘かった。


「ねえ、。」


さっきまで、心にもなく酷い事を吐いたハニーフェイスが
今はその顔に見合う、甘い言葉を耳元に囁く。


「もう一回、して?」




心にもなく、いことを言う
それでも君から逃げられない、私は君の虜になった。





special thanks[哀婉

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