何も言わない貴方だから

私は時々不安になる

『愛してる』なんて

空虚な笑みで言わないで




だけでは
りなさ すぎ







「っでさぁ、そん時ユウのヤツ、なんて言ったと思う?」

いつもの様に、ラビは私の部屋にいた。
いつもの様に、なんでもない会話をしていた。

風に揺れる赤毛が、時折、春の日差しにキラキラ透ける

笑顔も、変わらずに優しかった

おどけたように、なんでもない話を、まるで何か素敵な物語の様に語って聞かせる。

異国の、甘い響きの声

心地良い

いつでも いつでも―・・・・



――なのに・・・・


「ね、ラビ」

「ぁん?」

話の途中で遮られ、マヌケな声になる。

「・・・・何か・・・あった?」

問いかけ。
少しだけ、ラビの表情が強張った。


「・・・・何かって?」

「わかんない。でも・・・なんとなく。」


笑顔の合間。

ラビは時々、耐えられなくなったように悲しい顔をするから

それでも、無理矢理耐えようとする笑顔があるから―・・・・・


「・・・・なあ・・・・・・・」


「ん?」

「ちょっと・・・良い?」

「ぇ―・・・・?」

突然の問い。
意味を理解する間も無く、ソファに座っていたラビは、
その腰を上げて、ベッドに座っていたに抱きついた。

「なっラ、ラビ!?」

突然の事に体制を崩して、
思わず壁へと寄りかかる。

その体を、ただ抱きしめる腕はきつい

「・・・ラビ?――ンっ―・・・」


息つぐ間も無く、口付け。

長くて 浅い

ただ、体温を感じるためだけの
時を止めるキス

スッと唇が離れると、ラビはそのまま
の首筋に顔を埋めた。

何処か荒っぽくて、今までに見たことが無いくらい
余裕の無いような

キス 抱きしめ方 口調 ―・・・・


「ラビ・・・」

君は、いつだって何処か余裕に溢れてて
いつだって、優しく笑ってて

こんなラビを見たのも 初めてだった


「・・・・ワリ・・・
 俺・・・いまメチャクチャ情けねぇサ・・・」


震える声の謝罪。
胸の奥が、どうしようもなく苦しくなる

人が、涙を流す悲しさ―・・・


思わず、その体を抱きしめ返す

きつく きつく・・・


「情けなくなんか・・・ないよ。
 むしろ、私は嬉しいかもしれない・・・」

「・・何サ・・・ソレ」

耳元で、少し濡れた不服の声。

だって・・・と、クスリと笑みを一つ漏らして言葉が紡がれる


「嬉しいよ。ラビはいつでも笑ってて、大人びてて・・・
 近くに居る私にだって、感情を出してくれないんだもの」


どんな事があっても笑ってる君を見ていると

私はすごく不安になるから



「こんな風に・・・感情を出してくれた事
 私は・・・すごく嬉しいよ」


貴方がどんなことで悲しんでいるのか

貴方が本当に笑っているのかさえ

私は分からなくなってしまうから・・


「私の前でなら・・・情けなくても良いから・・・」


無理矢理貼り付けた笑顔を向けなくても良いから

言葉で足りないのなら
こうして、ただ君を抱きしめるから

ただ一緒に、涙を流すから



いつだって、何も言わない君だから
私はとても不安になるの

『大丈夫』なんて、空虚な笑みで言わないで

私の前では 貴方の全てが欲しいの


「・・・サンキュ・・・・・」

小さく囁かれた言葉。

満たされていく胸の奥は、嘘なんかじゃない

「・・・どういたしまして・・・」


泣いていいよ

君のままの感情が欲しい

ありのままの 貴方の全てを

私は愛するから―・・・・




                  ― fin....






[BGM:雨色小唄]

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