ゆらゆら揺れる 赤い髪


炎の様に照らしてる


遠退く背中


ゆらゆら、ゆらゆら―・・・





『待って―・・・・』



―― 届かない



『行かないで―・・・』



―― 聞こえない



『置いていかないで―・・・』



―― 触れられない



『私はまだ、あなたに言いたいことが―・・・』



―― もう、見えない





「――――――――っ」





夢の中で暗闇に放り出されて、は目を覚ました。



辺りは暗かったが、目が闇に慣れるにつれて、朧に輪郭が作られてくる。

辺りは暗かったが、完全な闇ではなかった。



上がった息を数回繰り返して、体は嫌な汗をかいていた。


今のは、夢であり、現実。



『ラビ』の存在が消えてから、もう一週間が経っていた。



あの赤毛の青年は、もう此処には居ない。


自分は、声を上げることも出来ずに、その背を見送った。



その場に居たのは、あくまでも偶然だったけれども、
物陰に隠れて、身動き一つ出来ずに、遠ざかるその炎の様な髪を見送ったのだ。



「ねぇ、」



不完全な闇に融ける呼びかけ。




「あそこにいたのは、まだ『ラビ』だったの・・・?」




答えのない問いかけは無意味で、答えはなくても結果は出ていた。


あの日の夜、朧な月が照らす闇の中。



この教団の敷地を踏み越えた瞬間に、
『ラビ』という存在は、この世から消えた。



まるで夢だったかのように呆気なく。




自分はただ黙って、其れを見守るしかなかった。



事実上の、『ラビ』が死ぬ瞬間・・・




ゆらゆら揺れる、赤い髪


炎の様に照らしてる


遠退く背中


ゆらゆら 、ゆらゆら―・・・





「ねえ、『ラビ』」




―― 届かない




「貴方に言ってない事があったの」




―― 聞こえない




「まだ、貴方が『ラビ』の内に言いたかったな」




―― 触れられない




「好きよ、『ラビ』。愛して、た―・・・」





―― もう、見えない






ラメント・ ラバイ
此れは、貴方への嘆きの子守唄





special thanks[哀婉


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