どうせなら、晴れた空が見たかったなぁと


呟いた、彼の隣。


肌にクタリと馴染むシーツの上に身を横たえて、あまり気のない返事をしたに、
ラビは同じように隣に寝転がりながら、ムスッと拗ねて見せる。


読んでいた本を枕の隣に押しやって「普段の行いが悪いからじゃない?」と笑うと
普段からこんなに行いが良い奴いないさ、だそうで。


「この間、アレンの部屋壊して大目玉食らったの、誰だっけ?」


言ったら、ラビの視線は天井の向こう辺りに飛んでいった。




窓の外では、雨が降る。


彼の誕生日と言うこの日に
何ともタイミング良く、降水確率は100%。


これはやはり彼の普段の行動に起因していると思うのだが、
ラビは断固として否定するので、あまり触れない様にはしている。



珍しく任務もなく。

しかしこれといってやることもなく。



結果、雨音をBGMに読書をするだけの時間になってしまった。


何かやろうとラビが言ったのは、数時間前だったか


何をやるんだと問い返した自分に、
しかし何も浮かばなかったらしいラビが言葉に困り
結局はそのまま、読書の時間が継続中だ。


しかしそろそろ、自分も飽きた。


枕元に投げ出した本は
何となく、再び開こうと思える気分ではない。



「ラビー、ひまー」


「何やるんさ?」


「・・・・・・・寝る?」


「却下。」



普段だったらオーケーするクセになぁと思いつつ


いくら彼でも、どうやら寝ずに過ごしたいと思う程度には
今日が特別なものであるのだと感じているらしい。


とは言え、それなら何をやるんだと問われて閉口しては
先程の二の舞甚だしい。


さて、ではどうしようか、と考える。



「じゃあ、散歩。」


「この天気でか!?」


「青空を探しに行こう、とか、言っといてみる。」


「え〜・・・そういうガラさ?」


「・・・・・・自分で言って後悔する位には。」


「だよなぁ・・・」



自覚があって何よりさ。


言われたので、それはどうも、と返す。


雨音が鳴り響き雑音になるだけの室内。



しばし、沈黙。



「よ、っと・・・」



反動を付けて起き上がったラビに、ベッドのスプリングが揺れて



「どうしたの?」


「ん?行かないんさ?青空探し。」


「・・・・・・マジで?」


「まぁ・・・割りと?」



どうせ、暇だしさ。


言って寝乱れていた髪を適当に直すラビに
は、窓の外に視線を移す。



雨は、中々に気分がノッているらしく
止む気配を見せてくれない。


ため息を、吐いた。


絶対、日頃の行いが悪いんだ。



「・・・・・・な、何さ?」


「べっつにぃ?」



スプリングが、軋む

立ち上がった反動に、ベッドは結構しつこく鳴いた。



「お、行く?」


「ま、あんまりお天気に嫌われてるんじゃ、ラビが可哀想だしね」


「・・・何さ?その理由。」


「散歩に青空探しとか言うこっ恥ずかしい名目付けたのと似た感じ?」


「・・・ああ、」



何か納得。

されてしまって、何とも複雑な気分にもなったけれども



「んじゃ、まあ」


「ん?」


「世界から誕生日プレゼント、貰いに出てみっか。」



そんな、彼にとってもガラじゃない、名目。


少し笑ったに、ラビも笑みを返し


何となくの様に差し出された掌を、ごく自然な動作で、受けとる。



「仕方ない、お付き合いしましょう」



どうせ、暇だしさ。


理由なんてきっと、どうしようもなく単純で。



「ラビの日頃の行いが、ちょっとでも良い事を祈ってるわ、」

「ちょっだから俺のせいじゃないって!!」



彼の誕生日には似合わない、雨降りの今日に

どんよりと重たい空に似合わず、笑い声が過ぎて行き


遠く、遠く、何処かに顔を覗かせる青空に、思いを馳せながら。






鮮やかに、は咲く
(ぼくたちは世界に歓迎されるため)
(不確かな世界に飛び出した)



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