時は巡って、また1年

過ぎた時を振り返れば

また随分と、濃い季節を送ったものだ





        隣に いた
オンシジューム






妹が、今年7歳になった。
本来なら、学校に通わせる歳なワケだが、
の意思を尊重して、引き続き、科学班の連中に
家庭教師を頼んでる。

みんながみんな、何かに関してのスペシャリストなわけで、
多分、ならそこら辺のガキよりも、ずっと頭がいいはずだ。

「あっ、お兄ちゃん!!」

のこの笑顔を失わずに済むのも
何だかんだでみんなのお陰。

「お兄ちゃんはヘタレなんですか?」

あー・・・・本当に、我が妹ながら頭が良いな・・・・

ー?またそんな言葉、
 誰から聞いたんサ」

またリナリーか?
思って、目線を合わせた頭を撫でる。

この間は、『セクハラ』なんて言葉を教え込まれて・・・

あん時は、マジで大変だった・・・・

一ヶ月は、頭を撫でることすら出来なかったサ・・・・・

ホント、リナリーには勘弁して欲しいって言うか・・・

「アレン君です!」

「・・・アレン・・・」

次に会ったら覚えておくサ・・・・

でもまぁ、反抗期も無事過ぎて、
今では2人、仲の良い兄妹やってる。

「んじゃ
 少し散歩でも行くか?」

「ダメです。
 これから、リナリーお姉ちゃんとお買い物ですから!」

・・・ああ、着実にお兄ちゃん離れも進んでるわけね・・








が冷たいサー・・・」

そんなワケで、ヒマになってしまった俺は、
ユウの部屋に押しかける。

数少ないユウの部屋の家具である椅子を逆向きに腰掛けて
背もたれに顎を乗せる。

ユウは、ウザがってるけど。

「っるせーよ。
 さっさと妹離れしろ」
「ムリ。」

「・・・即答かよ・・・」

今にも六幻を抜きそうだけど、ンなこと気に留めていられない。
付き合いは、長くも無いが短くも無いのだ。

「チッ・・・テメェ、そんなんで
 アイツが嫁にでも行く時、どうするつもりなんだよ」

はお嫁になんか行かねーもん」

「ほぉ?」

「俺と結婚すんの」

「ほざいてろ」

あーもう、相変わらずだけどユウは冷てぇサ・・・

「でもサー・・・真面目な話
 マジどうしようって感じでサ」

「ぁあ?」

突然真面目に切り替わった俺に、ユウは怪訝そうだ。
それでも話、聞いてくれんだからイイヤツなんだよな

「今は、リナリーが面倒見てくれてるし、
 でも、これから先ずっと・・ってワケにもいかねぇっしょ」

それこそ、リナリーだってお嫁に・・・
あのコムイが行かせるかどうかは別として、いつかは行くだろうし。

「・・・の肉親は・・・俺だけだし」

いつまで一緒に居られるかもわからない。

俺達には、常に死神が纏わり付いてるんだ・・・・

「・・肉親だから、心配するのは構わねぇがな・・・」

「ん〜?」

「アイツの居場所は、アイツで決めんだろ」

「・・・・そう・・・さな・・・」

だって、もう、自分の居場所・・・位・・・

「まだ、お嫁にはやんねぇけど」

「やれる歳でもねぇだろ。
 話済んだなら、さっさと出てけ」

ユウ・・・冷てぇサ・・・









「お兄ちゃん、ただいまです!」

「おー、お帰りー。」

部屋で本を読んでたら、がようやくお帰りだ。
手には、本を数冊持ってる。

「あれっ、、その本何サ?」

「これですか?リナリーお姉ちゃんがくれた
 学校のパンフレットです」

「学校?、通うんか?」

初耳だ。

でも、は寂しそうに俯いて、首を横に振った。

「・・違います。でも、リナリーお姉ちゃんは、
 の将来を考えて、通った方がいいって言いました。」

・・・また、リナリー・・・か・・・

思わず溜息をつく。
小さいの体を持ち上げて、膝に乗せたら
イヤがって逃げようとした。

でも、逃がしてやんねーんだ。

ムリだってわかったのか、諦めて大人しく乗ってる。

「で、お兄ちゃんには相談なし?」

「・・めいわくじゃ・・・」

「ないってば。
 のお兄ちゃんっしょー?」

苦笑が漏れる。

は、顔を歪めた。

「どう・・しよう・・・」

小さい手で、しがみ付くように服を握る。
その頭を、出来るだけ優しく撫でた。

は、ここの皆が嫌いか?」

尋ねたら、首を横に振る。
思わず、微笑んでしまった。

「なら、此処にいれば良い」

驚くは、大きい目で、ずっとコッチを見てる。

思うより、子供はずっといっぱい考えてんだな・・・

改めて思う。

考えても、経験が無いから、どうして良いかわかんないだけ・・・・
なんだな。

の好きなところに居ていいよ。
 学校に行きたいなら、学校でも・・・」

「此処が良い!!」

大きい声で、少し部屋に声が反響する。
思った以上だったのか、は恥ずかしそうに俯いた。

でも、言う。

幼い声で、必死に、自分の気持ちを

「此処が良い・・です。
 みんながいる・・・此処が・・・」

「・・・・そっか。」

それなら、ココに居れば良い。
言って笑ったら、も嬉しそうに微笑む。

この笑顔があっから、俺も頑張れんだな・・・

今、すごく実感した。

「じゃ、俺もに、何か教えよーかな」

「なにを教えてくれるんですか?」

「んー・・算数?」

「それは先生が教えてくれてます」

「センセイ?」


誰サ?ソレ


「リーバーさんがそう呼べって言ってました」


リーバー・・・まさか、そうゆう趣味が・・・・?


「んじゃ理科は?」

「コムイお兄ちゃんです」


お兄ちゃんて歳でもねぇだろ


「国語は?」

「リナリーお姉ちゃんが」


あぁ・・・だから日々、危うい言葉を覚えてくるワケね・・・


「社会」

「おじいちゃんが教えてくれます」


ジジィ・・・何時の間に・・・・



って言うか、他に何かあるっけ・・・・?

とか思ってたら、がニッコリ笑っていた。


「お兄ちゃんは、のお兄ちゃんですから。
 がお部屋に戻った時に、お迎えしてくれる役です」

「・・・・了解サ。かぁいいお嬢様」








時は巡ってまた1年

過ぎた時を振り返れば

また随分と
濃い季節を送ったものだ


それでも

その時間の中に居るのは
たくさんの人に世話になったからで

俺たちもまだ
一人では生きていけないワケだ


これからも


きっと ずっと


迷惑掛ける 俺らだけど・・・



の居場所は、お兄ちゃんのいる所なんです」



これからの時の中に

俺の姿もあってくれれば良いって

今の俺の願いは、それだけなんサ・・・・。





                     ―fin...




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