「さようなら。」と「こんにちは。」と

それから、それから・・・・





リアリスト 幻影






「暇です」と言ったら、怒られた。
なので、暇つぶしにと、散歩に行く事にした。


確かに、現状を知る者としては、
不謹慎に当たるのかもしれないが、いつもは忙しい自分達なんだし、
たまの骨休めくらい、あってもいい良いじゃないか、と思うのは、
単なるエゴと呼ぶに相応しい。

晴天下の元、夏の風を感じる今日この頃。

趣も何もない黒のコートに、脚に隠れる対アクマ武器がもの悲しい。


、何処行くんサ?」


外に出ようと門に手を添えたら、
聞きなれた声が引き止める。


「こんにちは、ラビ。」

一応形式上の挨拶をすると、ラビもまた、
青空に相応しい笑顔で、「こんにちは」と返す。

やはり、異質な黒が物悲しい。


「で、何処行くん?」

「暇だから、散歩に。」

「その格好で?」

団服は、教団員が必ず着る様に言われている。
その問いは、自分達にするには、少々違和感が残る。


「折角ヒマで休めるんだから、
 私服で行っちまえばいいじゃん。」


「コムイに叱られる」


みんなが忙しい中、一人暇する自分の、ちょっとした罪悪感。
コートを着ることは、自分の使命を忘れないこと。

ラビは、青に映える赤髪を風に遊ばせていた。


「構わねぇっしょ。
 いっつも、俺らだって忙しいし、たまの骨休めくらい。」


先ほど、自分がエゴと呼んだ言葉を、サラリと吐く。

この男の考えは、未だよく知れない。

ラビは、その考えを読んだように、
少し寂しそうな笑顔を浮かべた。

青空には、映えない。


「現実だけ見るのは、辛いっしょ。」


その言葉と、笑顔の意味がわからない。

でも、何となくその笑顔に自分も悲しくなったから、
背伸びをして、手を伸ばして、そのふわふわの髪を撫でてみた。


ラビは、少し驚いた顔をして、それから微笑んで、「ありがと。」と言った。

いつもの笑顔で、安心する。

夏に映える、綺麗な笑顔。



「ラビ、ヒマ?」

「ん?まあ、やる事はねえけど・・・」

「なら、一緒に出かけない?
 1日だけの、現実逃避。」

言って。手を差し出す。
ラビの大きくて、熱いほどに熱を持つ手が触れた。


「喜んで。」

そして、私たちは出口と逆の、本部の方へと向かう。

理由は、明確且つ簡単。


「着替えたら、門の前集合な」


「うん。」


そして、数分だけの「さようなら。」

再び会えば、また、「こんにちは」

それから、それから・・・・


「さあ、出掛けっか。」

「うん。」


手を繋いで、外の世界へ現実逃避。




私服のまま、現実に戻ったら、
どっかのファインダーのおっさんに怒られた。


そしてまた、現実を生きていく―・・・・





               ― fin...




BGM;beyond


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