ああ・・・鬱陶しい・・・・

「ねー、神田ぁ」

うるさい

「神田ってばー?」

邪魔

「・・・・・神田」

目障り

「・・・・・。」

鬱陶しい

「カ・ン・ダ・君?」


フと耳に吹きかけられた息に
ゾワリと鳥肌が立った




nnular
entiment





「〜〜〜〜〜っにしやがんだテメェは!!」

そう言って、背中に張り付いたヤツを振り払った。
ヤツとはつまり、のこと・・・

「そーツレなくすんなってー。
 アタシと神田の仲じゃん?」

「テメェと特別な関わりを持った覚えはねぇ」

「"テメェ"じゃなくて""ちゃん」

リピート・アフター・ミー!とか言い始めたヤツを放って
後ろから、煩く文句を垂れるヤツはついて来た。

「なぁっんで置いていくかなぁ!」

「テメェと違って俺は忙しいんだ。
 用事もねぇのに引き止めてんじゃねぇよ」

――スタスタ・・・

――スタスタスタスタ・・・・・


2人並んで、競歩となる歩み。
通りすがりの科学班の連中が、何事かと振り返る。

ああ・・・鬱陶しい・・


「失っ礼だなー
 用事があるから話しかけてるんじゃん。」

「・・・・だったら、さっさと用件言ってどっか行け」

邪魔だ。

付足して言うと、は何処かムっとしたように言う。

「どっかの猪突猛進男よりはマシですよーっだ。」

ベーっと舌を突き出して
一体何処のガキだとか思わなくもないが
話がまた拗れるので思うだけに留まる

は、持ち前の立ち直りの早さなのか・・・

ニッと笑って見せてきた。

「ところでさ、本日12月12日は何の日か・・・・
 バカンダちゃんの頭にはインプットされてる?」

「今日?」

問われて思わず足を止めた。

今日・・・・

12月12日・・・・?

何かあっただろうか・・・・

・・・・・一時の、間

「・・・・ポッキーの日・・・・?」


・・・・・・・・。

「ぶっ」


一瞬、ヤツは動きを止めて・・・・
かと思えば、今度は止まる事を知らないように突然笑い出した。

「ッンだよ」

不機嫌ゲージは溜まる一方。

そんな感情を前面に押し出して問えば、
笑いすぎで涙目になって、途切れる言葉を紡ぐ

「だ、だって・・あの・・神田が・・
 ぽ、ポッキー・・・っ!ヒー・・・おなか痛い〜」

あははははははは・・・・・

本当に煩い。

プッツン

頭の中で何かキレる音がして
腰につける六幻をスラリと構えた

「・・・安心しろ。腹が痛いなんて
 感じなくさせてやる・・・・」

据わった目で言うと、
笑いに浮いた涙を拭いて、慌てたように言う


「わ、ちょ、タンマ!
 神田ちゃん目がちょーマジ!!」

目の前に突きつける六幻に
は降参のポーズ。

神田は、イライラと息を吐いて六幻を戻した。

がホゥ・・と安堵の息を吐く

「・・・で、なんなんだよ、結局」

「ん?」

「今日だ。なんかあるんだろーが」

さっさと会話を終わらせて部屋に戻らせろ。

コイツとの会話は、何故だか無償に疲れる。

は、ああハイハイと笑顔で言った。


「今日はナント!
 私のハッピーバースディなんだなぁー♪」

・・・・・・。

「それだけか」

「それだけだ。」

思わず問いかけたら、真顔で答えが返ってきた。

コイツ・・・・

こめかみの辺りの神経が引くついたのを感じた。

「用件は済んだな。」

「いんや。
 プレゼント寄越せ」

話が終わったのなら早く戻ろうと思ったのだが・・・
真顔で、ものすごく横暴な事を言ってきた。

「・・・なんで俺がテメェに
 なんか物をやらなくちゃならねぇんだよ」

「アタシと神田の仲だから」

「だからっ!」

「アタシ神田の1番大切なものが欲しい」

「勝手に話進めてんじゃねぇよ!!」


人の話を聞かないヤツだとつくづく思った。
だいたい・・

「1番大切なモンをテメェになんかやれるワケねぇだろーが」

「ま、そりゃそーだ。
 神田の部屋ってあまりにも殺風景で
 物貰っていく方が心許ないしなぁー・・・」

そう言って、いつの間にか着いていた
人の部屋の扉を無断で開けた挙句に中を
観察するようにグルリと見回して戸を閉め
大きな溜息をついた

「・・・・・・悪かったな、殺風景で」

「ホント。可愛げのない部屋で。
 まさかあの蓮の花貰っていくわけにもいかないしなぁ」

何を貰おうか・・とか、腕を組んで考えてる。

何でもいいから、さっさと帰ってくれないだろうか。

ホント、いい加減疲れてきた。

「ま、しょうがない。
 今はコレでいいや」

ヤレヤレと息をついて、
瞬間、体を前に引かれてよろめくと同時に
唇に触れる暖かい柔らかさ

鼻先を掠める、甘い香り

「っ!!?」

「神田ちゃんの初チューゲット」

スッと離れた温もりと、柔らかく微笑む
ようやく状況を理解する。

一瞬にして顔が熱を持ったのが、
自らわかった

「な、て、テメっ!!」

口を拭って言ったときには、
は既に、廊下を走り始めていて、
声を聞いて、振り返りニコリと笑んだ


だよ、名前」

「〜〜〜っ!待ちやが―・・・」

「神田ちゃん」


後方の窓から冬の清らかな光を受けて

鮮やかな笑顔に、不覚にも目を奪われる自分がいた


「今度は、形に残るものにしてね!」


言い残して、結局追いかけも出来ないまま
は光の道の奥に消えていってしまった。

呆然と、アイツが消えた後も廊下を眺めて

未だ、あの感触が残る唇を指で押さえた


「チッ・・・
 次に会ったら六幻の錆だ・・あの馬鹿が」


悔しいから、ヤケに『馬鹿』に力を込めて言ってやる。

それでも、結局は彼女と会ったのなら
また上手くやり込められてしまうのだ


邪魔だし、鬱陶しいし、煩いし・・・

きっとそれでも、嫌な気分になることは無いのだ。

これから先も、結局、ずっと―・・・・・




                      ― fin....




烏洸蓮しゃんにハピバな気持ちを込めて送ります。笑

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