降り注ぐ陽の光に、目を細める。


初夏の太陽は眩しくて、
強い日差しが柔く歪曲しながら落ちてくる。

真っ青な太陽に、白い雲はよく映えた。

花が、揺れる。

咲き始めのひまわりは、まだまだ暑くなるこの季節を物語る。


世界はただ巡るだけで意味などなく、
在るがまま、為すべき事を為しているだけだ。


それを評価する人間なんて、おこがましいにも程があるけれど


それでもやっぱり、思ってしまうのだ。



「綺麗、だなぁ・・・・」



木漏れ日に、踊る光。

自分の肌で、彼の髪で、光はチラチラとステップを踏む。


思わず呟いたに、ラビは小さく笑った。


「なんつーか、夏だな」

「うん、暑いね」


言いながらラビの肩にもたれる自分を、
矛盾していると、彼は言うだろうか。


ラビは楽しそうに笑って、髪を撫でるだけで。


「教団、戻りたくないなあ・・・・」


たまの暇だ、外に出ようとなったのは成り行きで、
最初は渋ってみたものの、ここは静かで心地良い。

暑さもあるけれど、
それが逆に、夏に、世界に、抱かれているようで。

陰湿で暗鬱なあの空間に戻るのは、どうにも嫌になってくる。


ラビは空を仰いで、笑った。


「あー、エスケープしちまうかあ」

「あはは、何処に行くのよ」

「何処にでも?どっか適当にブラブラ旅してみんのも、
 きっと楽しいだろうしさ。」

「2人だけで?」

「そ。何つーの、愛の逃避行?」

「駆け落ちとか、今どき流行んないって」


困ったように、笑う。


何処か遠くで、鳥が啼いた。


ああそれでも、
あの鳥がいるそのまた向こうまで、彼と行けたのなら


幸せ―――だろうか


自分は、自信を持って頷く事が出来ない。


彼の気持ちに応えきれない自分は、酷い奴だろうか


微かに瞳を伏せた自分に気付いたように、
ラビはポンっと頭に手を置いて、困ったような笑いを見せた。



「ただの冗談だから、そんな顔すんな。」

「う、ん・・・・」


本当に?


問いかける勇気が、自分にはなかった。


光のステップが、早くなる。


髪を乱す風が、少し、乱暴になった。


「さ、戻るか、

「うん。」


差し出された手を、受取る。


自分達は今、夏の腕に抱かれている。


美しい季節。


だけれども、口に出す事も躊躇うような――


自分は今、この世界の様に、
ただ成すべき事を成すように生きているだろうか。


否、今現在、そうである様に生きているのだろうか。


自分は世界の一部でしかなくて、其処に揺れている花と変わらず


生きて、流されて、ただそれだけ



嗚呼だとしたら、それは何て、寂しいんだろう



「ねえ、ラビ」

「ん?」

「人は、何の為に生まれたんだろう」



花の様に生きる為なら、世界の様に生きる為なら

自分達はただ花であり、世界であれば良かったのだ。

人は何で、生まれたのだろう


また難しい事言い出したな、と苦笑するラビは


「きっと、愛するため」


そう、答えた。


「ただそこにあるだけの世界を、素晴らしいって言ってやる為で、
 何となく咲いただけの意味のない花に、綺麗だなって言ってやる為。
 人は、世界を愛してやるために、きっと、生まれてきた」


世界は無意味で、そこにあるだけの現象でしかなくて


それではきっと寂しいから


無意味なものに意味を与えるように、人は生まれてきた。


愛される事のなかった世界の全てを愛するために、人は生まれたのだろう


ラビは、そう言って笑って見せて。


「だからきっと、人は愛するんさ。
 世界とか、花とか、もちろん、人も」


この世界には、愛するための人がたくさん生まれて


この世界には、愛するためのものがたくさん溢れている。


それが結果的には、伯爵の力になるわけだから皮肉だけれども


世界は、寂しくなんかないっしょ?


ラビは、首を傾けて振り向いて見せた。


ああ、ねえだったら


「私がラビを好きになる事も、許されるのかなあ」

「あー、それはあれだ、俺が許してやっから」


どんどん好きになってくれ。


戯れるように笑ったラビに、釣られるようにして、自分も笑った。


「それじゃあ、私も許してあげますか」

「そうしてくれると助かるさー。
 好きになるなとか言われても逆に無理があるって」

「あはは、どれだけ愛されてるのよ、私」

「んー、世界よりは、きっと愛してっかな。」

「スケールがデカすぎて分かんないわよ」


世界と比べないで頂戴な、割と複雑だから。


言うとラビは急に立ち止まって。


首を傾げた自分を、ギュっと抱きすくめた。


驚いて固まったままの自分に、そっと耳元で囁くのは―――



「このまま教団になんか帰らせないで、
 どっかに連れ去って、俺だけの物にしたいくらい、愛してる」


何だ、やっぱりさっきの、冗談じゃなかった。


思わず零した苦笑は、彼にはきっと気付かれていない。


フワリ、風が吹いて


ひまわりの鮮やかな山吹色が、蒼い空を泳ぐように揺れている。


ただ、それだけ。


でも、何故だろう


世界は世界として、花は花として


そして、人は人として、生きれば良いと


そう、言われたような気がして


ほっと、肩の力が抜けた気がした。



「ねえ、ラビ」



彼の背中に、手を回す。


暑くなる季節に、それでも彼の体温が心地良い。



「行くなら、夏の綺麗な所にしてね、」



そうして、またこの空を、雲を、花を、愛するのだ、この世界で。


彼と一緒に、彼の隣で


彼を愛して、愛されながら、人として



言ったに、ラビは一瞬だけ驚いて



「・・・・何処が良いか、考えておくさ」



そうして、すぐに微笑み言った彼に、楽しみにしておく、と返して。


開きかけた向日葵が、揺れる。


世界はまだまだ、暑くなる。


自分は何処まで人として生きて、世界を愛せるだろう。


きっと彼以上に愛せる事はないな、と


身体全体で彼の体温を感じながら、思った。










僕らは世界に招かれて
きっと私は、彼を愛するために生まれてきた





相互して下さいましたはるりn様に120%の愛と感謝を込めて。
えー、リクエストでは『幸せほんわか』な感じとの事だったのですが・・・・
毎度の如く何かが違っている気がしますorz
ほ、ほんわか・・・・・?滝汗
何だか疑問符が大量発生する感じではありますが、お受け取り下さいますと嬉しいです^^;
そして返品は可です、逆に申し訳ないlllorzlll
この度ははるりn様、相互を有難う御座いました!!

[BGM:&soleil/PICT:空に咲く花]

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