太陽の陽射しが、窓越しに入り込んでくる

割れた窓は、普段どうして直さないのか不思議だけれども
今はその割れ目が乱反射してキラキラしていて

別にこの為に割ったままにしている訳でもないのだろうけれど
これはこれで有りなのかな、とも思う。

所々壊れてはいるものの、割と清潔にしてある辺りが
この人っぽいな、とか。

ベッドに腰掛けて本を読んでいる
この部屋の主を見ながら、思ってみる。


それにしても、折角暇潰しにと遊びに来た部屋で
見事に放置プレイもまた寂しいもので


遊びに来る人の部屋間違えたとか、そういう根本的な問題は
この際軽やかに思考をスルーさせる事にしても、だ


「神田さーん暇でーす」

「なら出てけ。」


・・・・・スミマセン傷付いてもイイデスカ


「出て行きません相手しろ。」

「テメェと話す事なんざねえよ。」

「私はある!いーーーっぱいある!」

「知るか」

「ちょびっとくらい知って欲しいかなー・・・とか・・」

「・・・・・・・。」

「分かったよ睨むなよくそう」


そんなあからさまに邪魔だオーラ発されたら
いくら自分でも流石にしょ気る。

やっぱり、遊びに来る人の部屋間違えた事
素直に認めた方が良かったのかもしれない・・・・


「ねー神田ー。
 じゃあ一つだけ質問ー。」

「・・・・。」

「・・・・・ソレに答えてくれたら私もお暇しようかなー。」

「聞くだけ聞いてやる。」


そんなに邪魔か、このヤロウ。

確かに本読んでる最中にちょっと煩いかなーとは
思わなくもなかったけれども、ここまで態度に出されると
正直な所複雑であったりなかったり。


「んじゃお聞きしますが、」

「・・・・・。」

「私の事、どう思う?」

「・・・・・・・あ?」

「さあ答えをドウゾー」

「・・・・ちょっと待て」


さあどうぞーとアクション付けて聞いたのに
それをぶった切って神田が――割と真剣な面持ちで肩を掴む

「な、なんでしょう?」とか、その剣幕に僅かに身を引きながら問えば
「一体どういうつもりの問いかけだ?」との事で。


「た、他意は御座いませんが・・・?」

「・・・・・。」


エヘっとか、似合わないの承知でやってみる。

神田は、呆れたのだか何なのだかよく分からない息を付いて
「お前相手にしてると疲れる・・・」と、唐突にのたまって肩を落とした。


「だ、大丈夫?」

「お前が聞くんじゃねえよ」


じゃあ誰が聞けって言うんだ、この2人しかいない部屋で。


言ってから、改めて部屋の中で2人きりとか
認識したようになってしまって、無意識に赤くなったりしたら
何故か神田まで一緒に赤くなってしまって


「なっ何で神田が赤くなんのよ」

「て、テメーが赤くなるからだ。」

「そ、そんなのに釣られるようなタマじゃないでしょう?!」

「ぁあ!?てめーが変な事言い出すからだろ!」

「へ、変な事って何よ変な事って!?
 私はただ部屋に2人きりーって・・・・やっだ
 やらしい事考えてんじゃないわよバカンダ!!」

「お前こそ変な妄想してんな!」

「もう、そ・・っって、せめて想像って言いなさい!」


ああもう論争の観点がズレてきてる!

息せき切らしてが言う。

神田もグっと息を呑んで、フンっと顔を背けて見せた。


「そ、それで、答えは?」

「ぁあ?」

「不機嫌になってても聞くからね!私の事どう思うのよ!」

「大体、何でいきなりンな質問なんだよ!」

「だから、他意はないってば!!」


神田こそ、何でそんなに其処に拘るんだ!とか

言ってみたけれども、赤い顔のまま不機嫌モードになっていて


――って言うか、その顔で不機嫌になってても、あんまり迫力はない


「他意・・・はっ」

「あ?」

「他意はない、けど・・・・っ」


なんか、その微妙な空気が耐え切れなくて
こっちはこっちで赤い顔のまま、視線をずらす


ああクソ、やっぱり素直にラビの部屋とかに
遊びに行っておけば良かった


今更思ったって勿論遅いとは言え、思わずには居られないわけで――


「き、期待と願望くらいは・・・ちょっとあった・・・かも?」

「・・・・・。」

「や、やっぱ答え良いッス!
 ら、ラビの部屋、遊び行って来よーっと・・・・」


そそくさと扉の方に向かう。

何かもう、これは最早告白とか、そう言う話――に、なり気味だろう。

うん、告白とは認めない、

これは告白なんて認めないゾ


「―――少し待て」

「は、はいぃ!?」


少し乱暴に掴んで開きかけていた扉のドアノブを
その大きな手が、自分の手ごと押さえつける。


予想外な行動に、返した自分の声は取り乱しまくっていて
なんか微妙に悔しかったりもしたけれど


「な、なに・・・?」

「答え、聞いてから出てく約束だろうが。」

「ちょっだから、答え良い――って言うか、
 普段そんな律儀じゃないくせに・・!!」

「るせーよ。」


背後から、低い声で言われて身を固める。

あれおっかしいな、何でこんな状況になってるんだ自分?とか

オーバーヒートしてる頭が、状況把握しようと必死に働くが
あまり効果を見せずに頭の中をグルグルしている。


「こ、答え、聞いてやろうじゃないの。」


どうにもこうにも

強気で返した声は可笑しなトーンで引っ繰り返って出てきて

何とも情け無いったらない。


「・・・・煩い。」

「は?」

「煩い、鬱陶しい、とろい、煩い、鈍い、」

「・・・・・・・。」

「弱い、煩い、喧しい、煩い――」

「ちょちょちょちょっと待って、
 とりあえず煩いのは分かったから先に進もう」

さっきから煩いだけ何回言ってるんですか

別に煩いの自覚がない訳でもないけどさ、

って言うかなんか聞かなきゃ良かった答えばっかりなんですが

割と素でショックを受けるんですがどうでしょうかその辺?


ポンッと、大きい手が頭の上に乗る。


結構大ダメージ受けていたりして少し俯いた顔を持ち上げる。

そっと窺うようにして振り返り見れば、
神田は不意打ちの様に優しい顔をしていて

慌てて、再び扉と対面した。


頭から、手が、離れる


「嫌いとは言ってねぇだろ。」


今度こそ、勢いよく振り返った。

神田は、もうソッポを向いていて、見えない。


「ちょっそ、それってさ!」


神田的最上級じゃないの!?

言ってみたけれど、知るか、とのお答え。

いや、今度こそ知っていて貰わないと困る。


だって、アレンなんか大っ嫌いの域に入っちゃってる人だし
ラビも嫌いだーって言ってたし、

そもそも神田に合う人なんて滅多に居ない現状だし

だって、それって、やっぱり・・・・


「質問は一つだけなんだろ、」

「うっ・・・・」


そりゃ確かに一番最初にそう言ったけど、
ついでに答えてくれたらお暇するとか言っちゃったけど


それはやっぱ融通利かせる頭の柔らかさが必要って言うかさ
だからバカンダとか言われるんだよとか・・・

だ、駄目だ、流石に今この状況で言える勇気は持ってない


けれども其処の所はハッキリさせておいて欲しいって言うか

やっぱりホラ、
キッチリさせておかないといけない所って言うかさ?


一人悶々とそんな事を考え始めても、当の本人はと言えば
「さっさと行けよ、清々する」だそうで


「ら、ラビに慰めてもらおっと!!」

「あーそうかよ」

「今優しくされたら惚れちゃうかもね!」

「ハッ煩ぇ同士で似合いだろ」

「〜〜〜〜〜神田以外になんか惚れるかこの馬鹿!!」

「・・・・どっちだよ」


何処となく呆れているのだか面倒なのだか

そんな声音で言われて、言葉に詰まる

どっちだなんて言われても、だって

どっちだって本音で、決めろとか言われても正直困ってしまって


だからきっと答えは――



「大っ嫌い・・・!
 っだけど、惚れたんだからしょうがないでしょうが!!」


もう沸点を越えた頭では、そんな答えしか湧かなくて

自分でも滅茶苦茶言っているのは分かったけれども

それだけ残して部屋を飛び出た。


後を追ってこない神田に、
コノヤロウ此処は乙女を追って飛び出してくる所だろうとか
よく分からない怒りを覚えたけれども

ああいう奴なんだからしょうがなくて、

それに惚れたんだから、しょうがなくて


やっぱり、嫌いだけど好きとしか、言いようがなくて





あなたのことを好きじゃないの
そんな単純な言葉で表すには、アイツへの感情は複雑すぎて


special thanks[哀婉

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