雨音が、響いていた。

雨が、窓を壊そうとするように、
何度も何度も、細かく打ち付けていた。


それは、言えば小さな手が
幾つも幾つも乱暴に窓を叩いているようだった。


風が、まるで人の唸る声だった。


光る雷は、まるで自分を怒鳴りつけているように聞こえた。



定期的に、自分たちの体を揺らす振動。


その中で、隣の寝息は酷く穏やかで
外の喧騒とは真逆に、静かで現実味すらなかった。



目の前の席は空。




この雨も重なってか、自分たちの乗った汽車は込み合い、
折角の一部屋を、満員の為に、他の客と相席になったのだが・・・


その2人も、2つほど前の駅で、既に下車している。


部屋には元の通り2人だけで、だったらその前の席に移動すればいいのだが、
自分が、隣で首をもたげる少女の唯一の支えになっているのでは、
流石に無闇に動くことは出来なかった。


それをしたら、多分彼女は、雨の打つ窓とこんにちは、だ。


異様に近い顔に、ラビは平静を保とうとする。


目の前の対象に、どれだけ無感情を装うか。


今のラビには、それだけだ。


「ったく、よく寝てらぁ」


思わず、ぼやいた。


連日の任務で疲れているだろうこともわかって居るつもりだが、
何か独り言でも言っていないと、なんか自分の中で色々と大変なことになる。


それはまあ、色々と。

言えないけれども、色々と。


うん。


「おーい、そろそろ起きろー。
 暇で死にそうさー」


初めから起こす気も無い小声の呼びかけ。
予想通り、彼女は少し眉を顰めただけで、起きはしなかった。

朝からの悪天候で暗くはあるが、
今はまだ、昼の中ごろ。

教団付近の駅までは、まだまだずっと遠くて。

話し相手なし、持っている本は読み終わり、
身動きも満足に出来ないとなれば、暇を潰すのはこうした独り言くらい・・・


寂しい状況なんて、言われなくても分かっている。


隣の少女が呻き、身を捩る。


耳元で、妙に艶っぽい声が聞こえて、思わず身を固めた。

いつもの能天気な声とは違う、妙に女を意識させる声。


コイツ、こんな声出せたのか、とか。

ああ、そういやコイツも女だもんなー、とか。


ほら、色々大変な事になってきた。


その時、唐突に汽車が強く揺れて、
少女の頼りない体は前に傾き、目の前の席とこんにちはしそうになる。


ソレをギリギリで引き止めたのはラビで、
状況体勢としては、少女の体はラビの腕の中に納まっている。


そんな感じ。


流石に少女が眉根を寄せて呻く。
やはり、その声は艶っぽい。


薄っすらと瞼が持ち上がり、状況を理解していないように
ぼんやりと辺りを見ていた。


ほら、更に色々と大変になってきた。


寝ぼけ眼の少女と、視線が打つかって、
嫌な汗が、背中に伝った。


さて、これからどうしようか。



躊躇いの 物語
此れを人は不可抗力と呼ぶのだろうか




拍手夢になるハズの物だった為に名前変換が無しです。汗
special thanks[哀婉

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