君は 何時まで

僕の心を捕えるのですか・・・?




の一番 くに たい



君の居ない日々は、
信じられない位に変わらずに過ぎて行きます。

君なしの生活は出来ないと、いつかの日に言ったのに
僕の心は、ただ大きな穴が開いただけで

いつもと変わらずに

時が過ぎます

君は今、冷たい柩の中で一人

静かなときを過ごしてるのかな?

君は、僕が居なくても、大丈夫?







「じゃぁ、12時にこの時計台集合ね。
 それまでは、聞き込みをしましょう?」

リナリーの言葉に、ラビとアレンはオーケーと
頷いて見せる。

「あ、でも俺、時計持ってねぇや。」

「じゃぁ、僕のを貸しますよ。
 2つ持ってるんで。」

「マジ?お前、準備いいな〜。」

ラビは呆れたように、もしくは感心したように言う。

アレンは、曖昧な笑みを返して、
自分の鞄をあさった。

別に、準備が良かったわけじゃない。

ただ、あの頃のクセが、抜けなくて――・・・・


「ハイ。ちゃんと返してくださいね。」

「わぁってるって。」

そんなに俺、信用ないか〜?とラビ。
リナリーは苦笑してて、けれど、ラビはふと気付いたように
時計台の大きな時計と、今アレンから受け取った時計を
忙しなく交互に見比べた。

「どうしたの?ラビ」

「いや、アレン。幾らなんでも
 この時計、進みすぎじゃね?」

「ぇ・・・・・」

「だってサ、今が9時23分っしょ?
 この時計、もう10時指してるぜ?」


時計が壊れているわけでは無さそうだ。
一体何分、時計を進めているのか・・・
今度は、ハッきりとした呆れの目で見られた。

「・・・ゴメン。
 まだ、直してなかったみたいだ。」

君がまだ、僕の隣で笑っていた頃。

君はいつでも、約束の時間より早く来るから。

やっとの事で、君より早くこれるように設定した時計。

自分の周りの時は、
君の為に、ずっと先を進んでいた。

君に、どうにかして追いつきたくて・・・・


「貸して。直すよ。」

「ん」

冷やりとした金属質の時計の重み。
ネジを巻いて、時間を合わせる。

君の為に進めた時間は、
もう意味が無いものだと

そう、言っているかのように、

時計はみんなと同じときを刻み始めた。

「ハイ。じゃぁ、これで問題ないですね。」

「あぁ。」






任務での聞き込みも、上手くいかなくて、
時計台に戻れば、昼が近いからだろうか

人は、あまり無かった。

「・・・・・・・・」

君の背中を、ずっと追っていたんだ。

君が居なくなったら、僕は生きていけなかったんだ。


ねぇ、

君は

僕ナシでも大丈夫なの――?



愛してるんだ

何よりも 誰よりも




『スキ』なんて、軽く言い合って笑ってた日々が

ずっと続くと思っていたのに

呆気なく消えた 大切な人

人が脆いものだと

僕は知っていたのに・・・

「・・・っ何が・・・神の十字架だ・・」


僕は結局

また

大切なものを

守れなかった




伸ばした手に触れたのは

冷たい肌


君を染め上げたのは

綺麗な赤


僕の心は

また コワレル――






壊れた心の中で

それでも君は僕に笑う


それでも君は僕を笑う



君の背に追いつきたかったのに

いつの間にか、その背はなくなってしまった

僕の向かう先を 失った。

それでも君との想い出が

僕を照らして道を作り上げていく



この世界に存在しない君が

未だ、僕の心の中で どんどん

大きくなる


時計が刻む、時間の音

君が居ない、時の音

長く 長く 長く・・・・

抱きしめる事も もう許されない



「アレンくん、どうしたの?」


覗き込んでくる、仲間が居る。

静かに涙の伝っていた、頬を拭って

頼りない笑みを、向けた。



「・・・なんでもない。」




ねぇ、

君の居ない日々は、
信じられないくらいに変わらず過ぎていきます

それでも、あの日、悲しみに満ちた空間は
少しずつ、君の影を消してきます。

みんな、もう殆ど、前の暮らしと変わらない―・・・

ねぇ、

僕は一人だけ取り残されたまま

君の背中を追ってる

見えない背中を、追っています



「なんでも・・・ないんだ・・・・。」


ただ、止まった時を動かし進むことも

後戻りする事もできない

中途半端な自分を、愚かだと、感じただけ


ねぇ・・・・・



「いつまで・・・・僕を捕らえるの・・・・?」





                 ― fin....





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