恋ってもんは、厄介で。

恋は盲目なんて言葉がある程、
人は恋をすると周りが見えなくなってくる

自分ではコントロール出来なくなる感情が嫌いで
恋をして、馬鹿になった自分が嫌い。


だから恋なんかするもんかって


思いながら、過ごしてきてた。


将来結婚とかしたくないかって言われたら
別にそういう訳でもないんだけれども

とりあえず今は、色々と大変な時期だし

恋なんてしたら心の余裕が持てなくなって
任務にも支障が出そうだし。

そういう気分の時なんだろう

そう思いながら、気侭にいたつもりで、


でも何処か、頑なになっていたのも、気付いてはいた。


普段は別にどうにでもなる

でも、フと夜に寂しくなったりとか

任務で何日も会っていなかったりだとか

そうした時に浮かんでくるのはアイツの能天気な顔で

時々見せる柔らかい笑みとか、当たり前の様に髪を撫でられたり
フとした時に見える、少し大人びた表情とか

いつもとほんの少しだけ変えてみた髪形に、
一番最初に気付いてくれて、嬉しかったり

そんな些細な事で、どうしようもなく浮かれる自分が居て


それって、だから、つまり――・・・


其処まで来て、思考を中断させる。


だから、恋なんて面倒なんだって。


今はいらない、そんなの。


あれは多分、仲間としての何でもない感情なんだって

浮かれる自分に言い聞かせる。


何処か頑なになっている自分に、気付かずにはいられなかったけれど――・・・


「あ、」

「お、」


廊下の角を曲がったところで、偶然に鉢合わせをした。

それだけで、嬉しかったりする自分を、どうにか静める。


「ラビ・・・今帰り?」

「ん、ついさっき帰って来たトコさー」

「そっか、お疲れ。コムイさんの所には?」

「行った、で、まーた怒られた」

「また?何しでかしたの、今度は」

「コムイもケチ臭いよなぁ、ちょっと街の建物壊したくらいで・・」

「またですか!!?」


そりゃいい加減コムイさんだって怒るよ!!

言えば、え〜?とか何とか、不満顔。


ラビの豪快さも、慣れたとは言え苦笑を少々。


それはともあれ、またこんなに傷増やして・・・と手を伸ばせば
この位ダイジョーブだって、とその手を掴まれる。


自分で手を伸ばしておいて今更だが、その手の熱さに
軽く頭がオーバーヒートして。


だからそうじゃないだろと、自らを一喝。


「ご飯は、これから?」

「そ。あー、腹減ったぁ」

「あはは、任務ご苦労様でした。」

「ッて言うか一人とか寂しっ」

「ペアだった人と食べれば?」

「相手、ユウだぜ?」

「ああ、そりゃまた・・・」


付き合いの悪い相手とペアだったこって。


「それよりラビさん、そろそろ手を――・・・」


離しませんかね、いつまで掴んでるんですか。

言ってやれば、割とすんなり離された手がほんの少し寂しくて

行き場を無くして、そのまま身体の横に、定位置として戻っていく。

それとなく小さなため息を零しておいて。


「まあ良いや、てーワケでだ、〜」

「な、何よ・・・」

「ご飯御一緒しよーさぁ」

「わ、私リナリーと済ませてきたし・・・」

「デザートは?」

「た、食べたし。」

「うん、まあならもう一個くらい行けるっしょ。」

「あっこら、それどういう意味――って言うか強制連行!?」

「まあまあ、ちょーっと位付き合えって」

「痛――くないけど、ビックリしたぁ」


頭に乗せられた手に、条件反射で痛いとか言いそうになって
微妙に意見を切り返せば、一瞬見上げたラビは
思いがけず、優しく笑ってたような気がして


熱が顔に集合する。


「・・・・ああ、もう・・・」

「ん?」

「ラビの馬鹿・・・・」

「はい!?」


ポソリと呟けば、なんでいきなり!?と慌てたように、ラビ


「そ、そんなに一緒に食堂が嫌?」

「それは・・・むしろ良いんだけど・・・」

「ん?」


なんか悩みか?とか

覗き込んでくるラビに、胸はどうしようもなくときめいて


ああもう、何て言うか


こんなに、こんなにも――


こんなにも好きになってたら、否定しているのが馬鹿みたいで



ああもう馬鹿だ。


どうしようもなく、引き返せない所まで来てしまってるじゃないか。

折り返しが出来る地点は、とっくに通り越してしまっている。


「悩み、ね。」


まあ、そんなとこ。

よくよく考えてみれば、『好きじゃない』なんて否定
『好き』という概念がないと出来ないわけで

そんな事に気付かない所が、まず恋の落とし穴で


「んじゃ、食堂付き合ってもらうお礼に話くらい聞いてやるさ」

「そう?」

「おう、男に二言はねーさ」

「ふーん、」


恋なんかしない、別に好きじゃないなんて

否定しながら、自分は認めてしまっていたのに――・・・


「じゃあ、ねえ、ラビ。」

「ん?」

「好き――に、なったみたい。」

「・・・・・・へ?」

「食堂でご飯食べながら、ゆっくり返事聞かせてね、」


男に二言は無いんでしょう?

言って、少し笑ってみせる。

否定を続けていた心は、認めてしまえばずっと楽で

感情は、ただそれだけでしかなくて

認めてしまった方が、思考も口もよく回る。


結局は認めてしまった方が、ずっと無様で、ずっと良かった、なんて


自分に嘘は付けないな、なんて


ラビの赤くなった顔を見ながら、そんな事を思っていた


「・・・なあ、

「ん?」

「答え、此処で言ったら駄目?」

「・・・・・だめ。」

そこは流石に、自分にも心の準備ってモノが必要だしさ。





あなたにをつくだけ無駄だったわ
私の思考は私の体、自分で自分は騙せない、ね。



special thanks[哀婉

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