「何もいらない」


強がりばかりの繰り返し


本当はその手


握り返したいのに




にだって打ち勝てるよ、
この
いだけは。



好きな人ができた。

思いがけないような所で


多分、今まで好きになった人の中で、一番好きになったと思う。


なんて、今まで好きになった男の数だけ、
もう他の人は好きになれないとか、一番貴方が好きですとか。

そんな事思ってきたりもしたんだけど。

それでも、今回ばかりは嘘偽り無いと思った。


笑い掛けられただけで、心臓が爆発しそうで
いやぁ、自分乙女しちゃってるなぁとか。


しみじみと思ったりもしたけれど。


彼から『好きだ』といわれた瞬間、私の中で何かが冷めた。


「なぁ、どうしてもダメなん?」


彼・・・・・ラビは不満そうな顔で後ろをついてくる。


ラビに告白されてから、もう一週間。
それは同じくして、自分が彼をフってから一週間と言う事で、
その間、彼はずっとこんな感じだ。


「だめ。」


ムスーっとしているラビに、短く返す。



申し訳ない気持ちが無いわけではない。

けれど、だってなんか。

今更言い訳がましいと言われればソレまでなのだけれども、
なんとなく、この気持ちに素直になるのはいけない気がして。


ラビの気持ちを聞いて身体が冷めたのは、
ラビを嫌いになったせいじゃない。


実際、今こうやって一緒に歩きながら話をしているだけで
正直、浮き立つような気持ちだってあるのだ。



けれども、この冷えた感覚は、多分、警告。


それは神からの物か、体からかは謎だけれども。


「なぁ、どうしてダメなんか、
 せめて理由くらい聞かせて欲しいサ」


ラビが言う。

その言い分は、まあ最もか、と何となく、歩いていた足を止めた。



「私、器用じゃないから・・」

「?」

「今は、エクソシストとしての道を優先させる時でしょ?
 私、器用じゃないもん。ラビと付き合っちゃたら、
 多分、両方とも疎かになっちゃうよ。」


紡いだ言葉も、また本当。


冷めた気持ちが、自分の思うとおり『警告』であったとして
それを発したのは、恐らく前者だ。



神からの警告。



恋に現抜かす暇はないと。


多分、そういう事。


神様に従うのも気に食わないものだけれども、
それでも、自分だって自分の性質みたいな物を理解しているつもりだ。

両方を中途半端にするくらいなら、
片方を捨てる勢いでなくちゃいけないと思う。


だから、此処は仕方ない
カミサマの仰る通りのままにしている。


それだけ。


「なんだ。そーゆう事か」


理由を聞いたラビは、晴れ晴れとした表情だ。

自分の言うことに理解を示してくれたという事か―・・・・



「んじゃさ、全部終ったらイイって事さな」


「・・・・・・・・・・・・・・は?」




思いがけない言葉がラビの口からぽんっと出てきて、
思わずラビの顔をまじまじと見つめてしまった。


ラビはキョトンと見つめ返す。



「一度に一つの事ができないんなら、
 全部終った後になら問題ないっしょ?」


「いや・・・・えー・・・・あー・・・・ない・・・けど・・・・」



いや、イイのかな。

そういう事でイイのかな・・・?


「なら、またそん時に言うさ」


ニッコリ。

どうにも、彼のこの笑顔には勝てる気がしないんだ、自分。


確かに、自分は問題ない・・・と思うけれども。



「・・・・・・ラビは、良いの?」


「ん?」


「いつ終るかも分からないんだよ?
 その間に、別な人だって好きになるかもしれないんだし・・・・・」



言ったら、ラビは少し考えるそぶりを見せる。

けれども、またすぐにニッコリ笑顔だ。



「俺サ、の事、今まで好きになった人ン中で一番好きなんサ。
 多分、これからもソレは変わらねぇと思うから、ヘーキさ。」



今まで、何回だってこんな言葉聞いてきた。

恥ずかしげもなく、自分だって言って来た。


ずーっと一緒、とか。


でも、案外終わりは呆気ない。


それ以上に好きになる人は結局出来るし、
人の気持ちなんて、面白いくらいにコロコロと変わる。


信用なんて、出来るはずもないんだけど・・・・



「それに・・・・」


そう続けるラビは、何かに挑戦するような笑みで
思わず、その笑みに惹きつけられる。


「ハッピーエンドは、物語の最後のページに、っしょ?
 うん。悪くねぇ。後味も好い気がするしサ」


その言葉に呆気に取られている間に、
ラビは結局ニッコリ笑顔に戻って、ドサクサに紛れて
手なんか繋いで歩き出した。


なんだか、それが余りに自然に紡がれた行動だったから
も振り払う事をしないで、そのままラビと一緒になって歩く。



・・・・・胸が、苦しい・・・・



「・・・・・ヤバイ・・・・・」



「へ?」



「いや・・・・なんでもない・・・・です。」



。顔赤い――・・・・」



「うわああぁっ言うなああぁぁっ!!」


ラビの言葉は途中で遮った。


カミサマの警告を無視して、胸が熱い。


笑顔のせいだ。


彼の柔らかい笑顔のせいだ。



・・・・・この手の心地良い温もりのせいだ・・・・・



「・・・・・・・。」



この想いは、神様にも打ち勝ってしまうかもしれない。



「・・・・・ラビ」


「ん?」


「待ってて・・・・・ね?」


「おうっ」


当たり前っしょ。


そう言って、また、あの笑顔。



この笑顔に想いが耐えられなくなるのは、時間の問題だ。



                            ―fin...




special thanks[哀婉

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