「アレンは白うさぎかな。」


「はあ?」


唐突に。


本当に、唐突に。


其れは何の前触れもなく。


彼女の口から発せられた言葉に、
アレンは隠すでもなく、盛大に声を上げた。



―― 唐突に白うさぎって、何だよ、一体。



「不思議の国って、あるじゃない?」


「ああ、はい。」


「本読んでたら、何となく思っただけ。」


「はあ・・・・・」



其れはやっぱり、唐突な言葉だったらしい。


自分が理解できなくても仕様がない。


言い聞かせにも似ているけれど、しょうがないのだ、うん。



「白うさぎ・・・・か。」



がアリスなら、考えてもみますけどね。


言えば彼女はカラカラ笑う。



「私はアリスってガラじゃないなぁ」



そんなに、アレンはニッコリ笑って返した。



「僕を白うさぎにした事、後悔すると良いですよ、アリス?」


「は?」



キシリと、


彼女の座っていたベッドが軋んだ。


人工の光を白い肌に受けていた彼女に、
大きな影が重なった。


は、目の前にある、アレンの綺麗な顔を
呆然と見つめる。



その表情は口元のみに湛える笑みで、
目元は少しばかり黒みを帯びて、笑っていない。



色の黒みではなく、その――・・・・なんだ、うん。




「チェシャ猫になんて助けさせませんよ、僕は。
 不思議の国の、更に深い所まで迷い込ませて
 帰らせませんから。」



ずっと僕と同じところに、ね?



そうして今度こそニッコリとした笑みを
逆行となったその顔の上に乗せる。



「だから、アリスはじゃないと嫌ですよ。」



言ってから、小さなリップノイズを響かせて口付けた彼に

何を考えていった訳でもなかったの方が、
ポカンとしてしまう。



そして暫くの間の後に、は頭を掻きながら、言った。


「まあ、アレンが一緒なら。」


そしてお返しと言わんばかりに
小さな口付けをその頬に返して



アレンはほんの少し笑って、その体を抱きしめた。







当然のように、愛しい君に



彼女と居られるのなら、いっそ



迷い込んでしまおうか、共に






それは素敵なワンダーランド

「でもアレンの白うさぎって   
 素で道に迷ってそうだよね。」


「うっ・・・・・」


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Image : ALICE SYNDROME