君の為に愛の歌を

それが君への子守唄になればいい

君が僕の腕の中で

ただ安らかに、眠れればいい








夢はに堕ちるしかないのだ






真っ白の布団が好きだった

ふかふかで、太陽の匂いと君の匂い

手を伸ばせば、君の髪に触れられて

擽ったそうに笑う君が好きで

怖い夢を見た夜は、君は子守唄をせがむ。

余り上手ではないのに、小さな子供みたいに。

それでもそんな歌を好きだと言って、眠りに就いた君を
ただそっと、見つめているのが大好きで


嗚呼、どうして今、此処はそんな、幸せな光景じゃないんだ


冷たい地面の上で

血の匂いと、乾いた土の匂いと、曇り空の重たい空気の匂い


腕の中に君は居て、手を伸ばせは髪に触れる事も出来るのに


君はもう笑わないし、子守唄もせがんで来ない


だって、どうして?


君は怖かっただろう?


自分の体から血が溢れて、そして迫ってくる、死の恐怖


まるで怖い夢を見た夜みたいに、それ以上に


怖かったはずだろう?


自分の体が、じわじわと冷たくなっていく、その感覚は


それならまた、自分に子守唄をせがんでくれれば良いんだ

あまり上手じゃないから、また少し渋ってはみるけれど


君がただ優しく「アレン」って、名前さえ呼んでくれれば


きっといつもみたいに、あまり上手くはない子守唄を歌って

君はそれを好きだと言ってくれて、そして君は眠りについて

僕はただ、それを見つめていて


抱きしめたその身体は、余りにも冷たくて
その身体が君だなんて信じられないのに、それでも


例えどうする事も出来なくても、その身体を抱きしめる腕を離せないんだ



、ねえ」


抱きしめた耳元で囁く声も、彼女には聞こえない


「君が好きだと言っていた歌、本当なら、
 難しいから、歌うのはあんまり好きじゃないんだ」


返事は聞こえないけれど、彼女は笑っているんじゃないかって


「それでも君が微笑うなら」


僕はまた、もう一度歌うから―――



曇り空に、鎮魂歌


鈍色世界に、深い紅で彩を


散華をどうぞ、白い花


真っ白な、真っ白な――


僕も一緒に、連れて行ってくれたら良いのに


紅い散華で見送れたなら、良かったのに


「嗚呼、ほら」


君は微笑う、僕の腕の中で

微笑ってくれた、気がするんだ


だから―――


その微笑みを、腕の中の微笑みを


手を伸ばして、髪に触れて


ただ見つめてみるんだ


もう一度彼女が目覚めるんじゃないか、なんて


意味のない願いだと、分かってはいても


ねえ、


もう怖い夢を見たら駄目だよ


僕はもう、子守唄を歌ってはあげられないんだから


甘くて優しい夢を、見続けてね


どうか、どうか―――



真っ白の布団が好きだった

ふかふかで、太陽の匂いと君の匂い

手を伸ばせば、君の髪に触れられて

擽ったそうに笑う君が好きで

怖い夢を見た夜は、君は子守唄をせがむ。

余り上手ではないのに、小さな子供みたいに。

それでもそんな歌を好きだと言って、眠りに就いた君を
ただそっと、見つめているのが大好きで


そんな君が、大好きだった


君の為の愛の歌が

君への子守唄になればいい

君が僕の腕の中で

ただ安らかに、眠れればいい


「おやすみ、


君はもう、怖い夢なんて、見なくて良いんだからね




special thanks[哀婉



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