本日8月17日。

私の誕生日。

一般的には、お祝いされる立場・・・のハズ。


あくまで一般的に。

そして、私にこの『一般的』は、通用しない。


「次、この書類片付けといて。」

「・・・・うぃーっす・・・・」


この女王様が居る限り、雑用係な自分に
そんな夢みたいな一般的が、通用するわけないのだ。


雲雀はソファに座って、一応書類に目を通してはいるけれども
すぐに興味無さそうに、テーブルに放り出した。

多分あの書類も、後で自分が処理する事になるんだ・・・

思わず、溜息。


「・・・・何、やる気が無いの?」

「いえ、滅相もないっす。もーやる気バリバリ。」


そんな溜息に反応した雲雀さんに、慌てて書類に向き直る。


怖い、怖い、いやもうマジに逆らえねぇよちょっと。


雲雀は分かってるんだか分かってないんだか、
「ふーん」とどうでも良さそうな返事を返して。


雲雀の肩には、誰が命名したのやら。
「ヒバード」と名の付いた黄色いふわふわの鳥が止まっている。



因みに、たまーにこの人が、この鳥に歌を仕込んでたりするを目撃してました、
なんて、恐ろしくて他言は出来ない。




「ねぇ、」


「はい?」




珍しく彼のほうから声を掛けてきて、
動かしていた手を休めて、目の前に座る雲雀を見る。


夏の重たい風が、カーテンを揺らし入り込んで
雲雀の前髪をサラサラと揺らしていた。



「君、今日誕生日なの」


「へ!!?え、ええまぁ。」



驚いた・・・。


だってまさか、そんな誰が
雲雀さんが自分の誕生日を知っていたなんて思うんですか。


雲雀は、ふーんと、また興味なさそうな呟き。


そして、唐突に立ち上がってコチラに歩み寄る。


なんだ自分なんかしちゃった!!?と身構えていたのも束の間で、
頭に、ちょっと硬くて鋭い何かが頭に軽く突き刺さった。




微妙に、頭がなんか温かい。




「・・・・・え、あ、ヒバード」



何故頭に乗せられた?



疑問符大量で、頭に乗せられたヒバードに触れる。

と、唐突に。

本当に唐突に、ヒバードは歌いだした。




『はーぴばーすでー とぅー ゆー はーぽばーすでー とぅー ゆー
 はーぴばーすでー でぃあ げーぼくー
 はーぴばーすでー とぅー ゆー』




・・・・・・・うん?



今この鳥、『下僕』っつった?え??



いや、まあそれはこの際置いておこう。

ツっこめないし、この人に。

置いてはおくけれども・・・・



「・・・お祝いしてくれてます?一応」


「さあ?そう思ったならそうなんじゃないの」



相変わらず、その辺は濁してのお答え。



・・・・・でも・・・・



「あははっ
 いつの間にこんなの仕込んでたんですか?雲雀さん」


「君が覗き見してた時じゃないの?」


「ぉおっ!!?
 き、気付かれてた!!」


「ふーん。やっぱり見てたんだ。」


「ああああ違います違います滅相も御座いません!!
 たまたま通りかかった無害な一般人です!!」


「何それ、草食動物が嫌いな僕に
 そんなに噛み殺して欲しいんだ?」


「ぼ、墓穴!!」



ヤッベ、自分誕生日が命日になるかもしれない!!


そ、其れはさすがに!


流石にちょっと!!!


雲雀が不機嫌そうに手を伸ばしてきて
思わず強く瞑った瞳。


黒く覆われた視界に痛みはなくて、
変わりに、頭に大きな手が乗せられる。


・・・それから、唇に触れた僅かな温もり。



「・・・・・は?」



流石に何されたか分からないほどボケちゃいないが
何故ソレをされたかを理解できるほど
聡明な頭は生憎持ち合わせていない。


開いた瞳の先、思いがけず近くにあった
その吊った瞳の綺麗な顔立ち。


今更になって赤くなる顔を見て、
雲雀は僅かに口元を緩めた。


思いがけない、優しい顔。


この人、こんな顔も出来るんだ、とかしみじみ思ったなんて
言ったら、きっと噛み殺される。


だから言わないつもりだ。誰にも。



「 H a p p y B i r t h d a y 」



その先ほど自らの唇に押し付けられた綺麗に整った唇の紡いだ
そんな思わず口元がにやけるほどの言葉も。


絶対に、誰にも言わないつもり。






C a r o  m i o  b e n
貴 方 の そ の 言 葉 は 私 だ け の 物 な の








日記に書いていた自分で祝おうお誕生日企画がついにこっちに進出です。
誕生日は固定です。申し訳有りません。
これでも一応無期限フリーの扱いです。
[BGM by Amor Kana / Image by MAPPY]

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