『永遠』なんて言葉は、よく聞くもので


そんなにその言葉が魅力的か、と
思ったりするのが正直な所で。


言ってしまえば、自分にとっては興味がない。


それは自分にとって、
あくまでも他人の意見に過ぎないから。



永遠なんて言葉に、自分は心動かされることもなく



ただ在るがままに時は過ぎ



―― 時には草食動物を狩ったりしながら



そしていつか時が来れば、
きっと自分は、自然に『死』と言う現象を向かえる。



―― 死が怖いと、言う奴もいる



それも結局、他人の意見だ。


基本的に興味がない。


死はやがて来る自然の現象だ。


抗おうとして出来るわけでもなく、その意味も無い。


来る時には来て、死ぬものは、死ぬ。


―― 自分が誰かに殺されるなんて事、在り得ないから


自分はもしかしたら
来るべき時に、あっさり死んだりするのかもしれない。


それはそれで構わないとも思うし


こればかりは自分の好きな時に、と言うわけにも行かない
そんな現象が、少しばかり、苛立たしかった。




「あ―――――」




室内の暖房が効いた空間は
穏やかで、寒さに凍えることのない落ち着いた空間だ。


そんな中、一際暖房設備が万全に整えられた応接室で
年末の纏めとも言える大量の作業をしていた彼女は
小さく声を上げて、窓辺に寄る。



その声に釣られる様に、
自分も作業の手を止めて顔を上げた。


窓が結露して、白く曇る。


制服の袖で拭うと、外の様子が少しだけ見えるようになって
彼女が声を上げた理由も、少しだけ分かるようになる。



「雪?」

「だね、どうりで寒いと思ったー」



今年初めての並盛に降る雪は、
綿雪なのか、随分とゆっくりとした速度で舞い落ちている。


もしかしたら、積もるかもしれない。


冬ももう本番か、とそれを見て思う。



「ねえ雲雀。
 少し外、行ってみない?」

「君の席にあるその大量の紙はなんだい、



言ってやれば、は言葉を詰らせる。


彼女の作業の量が多いのもあるけれど、
今日は幾分か、作業を進める手が鈍い。


年末のこの忙しい時期に、遠慮して欲しい所だ。


「それに、何でわざわざ寒い所に出たがるのかな」


このまま、外の様子を
眺めているだけで良いじゃないか、と思う。


わざわざ外に出る必要なんてないだろう、と。


は少し不満そうだったけれど
再び結露した窓を拭いながら、外を眺めた。


「ねえ、雲雀」

「なに、」

「じゃあ、少しだけ、休憩してこっち来ようよ。」

「なんで」

「ん、何となく。」


でもホラ、綺麗だよ、外


そんな風に手を招くがいて



手元の書類に目を落とす。



彼女と違って、自分の方はそろそろと終わる頃合だ。



溜息を一つ付いて立ち上がると、
はパァっと嬉しそうな顔をした。


相変わらず、単純に出来てると思う。



―― この子を他人と扱えなくなったのは、果たして何時だったか



興味のない事だったし、どうでも良かったけれど


何となく、腹立たしいのは八つ当たりなのだろうか。



窓際に立つと、冷えたガラスのせいで
少しだけ肌寒く感じる。


深々と降り積もる雪を、見上げたり、見下ろしたり。



そっと寄り添って来た
何、と問いかければ、何となく、とのお答え。



よく分からない人間だ、相変わらず。



―― 別に



彼女が永遠を望むなら、とか

彼女が死んだらどう、とか



そこまで彼女に思い入れているわけでもないと思う。



勝手に永遠にいろ、と思うし


彼女が死んだら――


殺された場合には、
殺した相手を殺す位はするだろうけど


それでもきっと、さよならをするのだろう。


彼女は自分にとって他人ではないけれど他人で


自分の行動や思考にまで、
受け入れてやるものじゃない。


けれど ―――・・・・



「・・・・・雲雀?」


「・・・・なに」


「なんか、眉間に皺が寄ってるんだけど・・・・・」


「すごく不快な考え事をしたからね」



小首を傾げる自分の事を、とは、
まさか思わないのだろう。


は大丈夫ー?とか聞いてくる。


答えはYesだしNoだし


けれどもどちらを答えてやるのも
ちょっとばかり癪だったから


そろそろ仕事に戻るよ、とその一言で
は盛大にブーイングを上げて。


それを無視してやる事で
少し自分の中で腹立たしさが消える。


ちょっとばかり、意地悪だけれど。


「ねー雲雀、何考えてたの」

「さあね」

「私が仕事遅いから?」

「分かってるなら、口より手動かしてよね」

「はーい」



―― 永遠に



今、この時間


君と過ごす冬が続けと思った、なんて


腹立たしすぎて、不快で


そして少し気まずくて


言えるはずもなくて―――

した故に矛盾




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