基本は三倍返しです!
Ver,雲雀












「・・・・・・・・はい、」


「・・・・・・・・・何、これ」



いつもの通りに風紀の仕事で応接室に来て

仕事に取り掛かる前、鞄の中をあさって取り出した、
綺麗にラッピングを施された、それ。



彼専用のテーブルの上に、
少し気まずそうにしながらも差し出せば、そんな風に返された。



「い、一応・・・チョコ。バレンタインの・・・」


「へぇ。」




反応が、薄い。


いい加減一方的に気まずい
及び、気恥ずかしい思いをしている自分が
何だかちょっと腹立たしくて


っていうか!と机を叩いた。



「『何コレ』って!!アンタ朝から
 かなりの量でチョコ貰ってるでしょ!?」



普段はヒバリさん怖い怖いヒバリさん、な女の子達が
2/14の今日と言う日は大胆で


直接でもないが、下駄箱の中や応接室の机の上に
絵に描いたようなこんもり山が出来上がっていた。


普段群れるのが嫌いの何の、と言う彼だけど
差出人も分からないそのチョコを突っ返すことが出来るわけもなく

変なところ律儀なことに
食べ物を粗末にするような真似をする人間でもないから
やっぱり、彼の机の横には、これまた絵に描いた様な
巨大紙袋と、そこに入る山のチョコが、でんっと存在を主張していた。


だとすれば、自分が渡したソレも
大体の予想がつきそうなものに。


「製菓類の持ち込みは校則で禁止されてるけど
 そんなに咬み殺されたいのかい?」

「・・・・・・じゃ、あげない。」


フンっと澄まして、テーブルの上から
チョコを撤収させようとすれば、目の前からチョコは消えていて。


・・・・・・・だったら最初から素直に受け取れってんだ。


「手作りかい?」

「まあ、一応は。」

「・・・・・・。」

「な、何よその疑わしそうな目は。
 食べられる物しか入れてないし作ってないから平気だっての!」


っていうかアンタ毒盛ったって死ななそうだし平気でしょ!と


雲雀は納得したんだかしないんだか。


手渡したそのチョコを、その他大勢の紙袋ではなく
丁寧に自らの鞄の中に入れ込む。


・・・・・・別に、嬉しくなんかないし、本当に。



「因みにホワイトデーは三倍返し――嘘よ冗談よ
 あんたにそんな怖いこと本気で言えるわけないでしょ。」



っていうかそんな望めないこと、と
言えば、雲雀は満足そうに口元に笑みを浮かべて。


何だか、折角チョコ作って来て渡したってのに
散々だチクショウ・・・・と肩を落として


本日の風紀の仕事に取り掛かろうと、ソファに腰を下ろす。



「忘れてなかったら、ね。」




その時、微かに聞こえたその言葉に
一瞬、聞き間違いか、別の話かと自分の耳と頭を疑ったものの


やっぱり、微かに浮かべる彼の笑みが
ホワイトデーの話なのだろうと分かると



「う、うん―――・・・?」



明らかに予想外だったその言葉に
ただ目を見張り、頷くしかなかった。





- CLOSE -