基本は三倍返しです!
Ver,ジェイ









「はい、」


「はい?」


突如として目の前に差し出された、ソレに
ジェイは目を丸くする。


果たして、今日自分は何か
プレゼントを貰うようなことがあっただろうか、と。


異世界からやって来た彼女が当然のように差し出しているのは、
綺麗にラッピングされた小包で、自分はソレと彼女とに
忙しなく視線を行き来させる。



誕生日、と言うわけでもなし
突如渡されるプレゼントの意味が、さっぱりと分からない。



「今日は2/14、バレンタインデーだよ、」

「ばれ、ん・・た?」



聞きなれない単語に怪訝そうに返せば
彼女は、「あー、やっぱりこっちの世界にはないかー」なんて
苦笑を返してみせる。



「簡単に言っちゃうと、
 女の子が大切な人にチョコを渡す日。
 恋人然り、家族然り、友達も然り。もー最近なんでもあり。」


「はあ・・・・・」


「まあ、外国の方では男の人から
 女の人に何か渡す日らしいんだけどね。
 私の国だと女の子からだから。」


「・・・・・・・・。」


「3/14はホワイトデーって言って
 バレンタインのお返しをする日だから覚えておいてね」


「お返ししろって事ですか・・・・」


「そりゃ勿論。」


じゃなきゃ何のためにチョコ渡すのよ、なんて
当然のように言った彼女に一つ溜息を返す。



ついでに、と付け足した言葉に
ピっと人差し指が突きつけられた。



「お返しの基本は三倍返しで!」


「・・・・・・・要りません。」


「・・・・・・・・いや、冗談だーって。」




受け取りかけた手を思いっきり引っ込めたジェイに
ヒラヒラてを振りながら苦笑する彼女。


けどそのタイミングで言われたら
そりゃ受け取るものも受け取らないというか。


冗談なんですね?と念を押して、
彼女が頷くのを確認してから、ようやくそれを受け取った自分に
はホっと息を吐いてみせた。


「大体、その三倍返しって言うのは
 一体何処から出てきたんですか。」


「えー・・・っと、
 チョコを渡すときの決まり文句?的な?」



語尾を疑問符にしてエヘッとか言う彼女に
やっぱり溜息を返して。



「3/14でしたっけ?お返しの日は。」


「え?あ、うん。」



そうだけど?と、すっかり用事を済ませて
踵を返しかけていた彼女は、きょとんと返事をして。



「カレンダーにでも書き込んでおいて下さい。」


「・・・・・・了解しました、っと」



溜息混じりに言った言葉に、
はニっと笑って頷いた。










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