基本は三倍返しです!
Ver,KAITO










2/14。


恋の代名詞のような、その日。



「マースータ♪」



自室で寛いでいた自分に、
ヤケにご機嫌な様子でやって来たのは、例の如くにカイトで。


ベッドで寝転がる自分の元に
スキップで近寄ってくると、膝を突いて目線を合わせた。


その顔が、やけにニコニコしている。



「今日、何の日だか覚えてます?」


「・・・・・・・バレンタイン?」


「はいっ」


「・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・。」




ご機嫌なカイトにそれだけ返すと
カイトは何か期待するような視線を此方に向ける。


暫く、自分にとってのみ痛い沈黙が続き
結局、折れたのは自分の方だった。



「れ、冷蔵庫の中に・・・・
 ダッツのチョコが入ってるけど・・・・」



一応この間、セールしてたから買ってきた。


無類のアイス好きな上に、特に好物のダッツと来たのだ。


それで満足してくれるだろう、と思ってたのだが
思いがけずカイトは、不満顔で口を尖らせる。


「今日は、ちゃんとしたチョコが良いです。」

「・・・・・・・ない。」

「えぇっ!!?」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・。」



先程の反して切なそうな顔で自分を見つめるカイト。


またしても痛い沈黙が、先程よりも長い時間続いて



「あー、もうっ」



やっぱり、折れたのは結局、自分だった。


溜息を一つ盛大に付いてから
クローゼットを開け放つ。


その片隅に置かれていた小包を取り上げて
少し乱暴に、カイトの方に投げた。


慌ててキャッチするカイトは
少し危なっかしいながらも、しっかりそれを受け取って。



「ホワイトデーは三倍返しだからね!」



結局の所、少し気恥ずかしさとかあって
渡しにくかった、けれどもしっかり用意されたそれ。


照れ隠しにそんな事を言ったら
彼は少し泣きそうな微笑を返してきて、「はいっ!」と
いつも通り、綺麗な返事を返した。



「マスター?」



クローゼットを閉めて、照れを少しでも紛らわせようとする
自分を、カイトはやっぱりご機嫌な声で呼んで



「一緒に食べませんか?」



その極上の笑みに、完全に赤くなっただろう頬を意識しながら
は不精不精頷いた。








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