基本は三倍返しです!
Ver,ラビ









「ただいまっ!!」

「あ、ラビ。お帰りー」


咳き込んで食堂に入ってきた赤毛の青年の姿を
確認して、はヒラリと手を振る。


明らかに手当てをされていない傷だらけの肌に
まだ少し土埃を被った団服。


「・・・・コムイさんには、ちゃんと報告してきたの・・・?」

「い、一応・・・・」


明らかに何を差し置いても、と言う風体でやって来た彼に
呆れたように言う


タジリとした様子で、ラビは答えた。


それから「そんでさ、」と頬を掻くラビの表情は
何処となく落ち着きがない。


「今日は去年みたいな事にならんように、
 頑張って帰ってきてみたんだけど・・・・」

「そだね、ギリギリ今日中。」



対してはといえば
それなりに落ち着いた様子で、時計の時刻を確認する。


まだ時計は辛うじて本日が終えていない事を指していて、
確かに、彼が去年のように任務でこの日に帰ってこられなかった、
なんて事にはなっていない事を物語っていた。


しかも去年は、帰ってこられなかった挙句に、
折角のチョコケーキの方が駄目になってしまっていた、と言う
残念なエピソード付きだ。


本日の頑張りは、及第点だろう。


はクツクツと笑いながら
ハイ、と忙しなく瞳を動かす彼の前に
綺麗にラッピングされたソレを差し出す。


「・・・・・・手作り?」


「い、一応・・・・味の保証はしないけど・・・・」


ついでにお腹も壊しても知らない、と
付け加えた彼女は、微かに口ごもりながらも
「方舟で、手料理食べてみたいって言ってたから・・・」
なんて、懐かしい話を持ち出して


甘い香りのするそのラッピングは
今日だからこそに意味を成す、チョコレートで



2/14の日が、特別になる瞬間で。



悪戯っぽく笑った彼女は
小首を傾げながら、言った。



「勿論、ホワイトデーは三倍返しでしょ?」



それに返すように、笑ったラビに
彼女は微かに頬を染めて、
春の日差しのように、柔らかく微笑んだ。



「気持ちもしっかり三倍にして、お返しするサ」





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