一応三倍返しです
Ver,雲雀












「はい、」

「・・・・・・・・は?」


本日


いつもの様に風紀の仕事をやりに来て
学校にしては上質な、黒い皮のソファに腰を掛けたところで

雲雀から差し出された拳の意味が、サッパリと分からない。


「な、なに?この手・・・・」

「良いから、手、出しなよ。」


促されるように言われて、
出された拳の下に、手の平を差し出す。


その上にパラパラと落ちてきた、桃、緑、黄


3色の小包に、は目を丸くした。


「何コレ・・・・飴?」

「見て分からないの」

「・・・・・うん、飴だね。」


手の平で転がして、マジマジと見てみても
それは飴にしか見えなくて

なぁに、これ、と尋ねれば
カレンダーでも確かめてみれば、と言われる。


何が何だか分からずに
仕方ない、頭の中でカレンダーをなぞる。



そうして導き出された答えは
何だかどうしても、信じられないことだった。



「もしかして、ホワイトデー?」

「たまたま覚えてたからね」


良いながら、雲雀は書類に素早く目を通す。

いつも通りのポーカーフェイスで、
他意の『た』の字も感じられない。


何だかいつも通りのコイツ過ぎて、
どう反応したものかポカーンとしていると、雲雀は
寸の間こちらを見やって


「・・・・何間抜けな顔してるの」

「ま、間抜け言うな!!」


失礼な!!と、再び動き出した
雲雀はほんの少し笑って見せた。


それから、「これで約束通りだ」と言う彼に
は首を傾げる。


「ホワイトデーは三倍返しだろう?」


言われて、しばし破顔した。


思っても見なかった言葉に、暫く思考が停止していた。



「ちょ、待って。三倍返しって・・・・・」

「チョコを一つ貰ったんだから、それで三倍返しだろ」



言った雲雀は、口角をニヤリと持ち上げた。



チョコ一つって・・・・


そりゃアンタ、一箱の間違いでしょう、とか思うも


何ていうか、三倍云々を言うよりも
『お返し』を貰えた事の方が嬉しくて



「・・・・ありがと、雲雀」



3つの飴玉を両の手の平で包み込んで
目の前の彼に礼を言えば


彼は満更でもなさそうな顔で
「さっさと仕事しなよ」と、照れ隠しかのようにそう言った。







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