一応三倍返しです
Ver,ジェイ









「おおおおおぉぉぉ?」




はその光景を、ひたすらにポカーンと見つめていた。



何が一体どうしたわけだか


自分はいつもと変わらずに、
このモフモフ族の村に来たわけなのだが


果たして、モフモフ族のこの状況――



主にジェイ宅のこの光景はなんなのだか。



そこに高ーく積み上げられたお菓子の数々に
はそろそろと首が痛くなるのを感じていた。



何だコレは。



村中の非常食でも集めてきたのか、新手の嫌がらせか、
はたまたジェイがまた何か企みでもしたのか・・・・



何にしてもこの状況、ちょっと普通じゃないよなあ
誰がこんなに食べるんだろう、お菓子・・・・と


やはりいつまで経ってもポカーンと見つめている
けれども扉から出てきたこの家の家主の一言で、固まった。



「ああ、おはようございますさん。
 早速ですけど、これ、なるべく早く片付けて下さいね」


「・・・・・・・・はい?
 あ、あの・・・状況がよく飲み込めないのですが・・・・」


「やだなぁ、さんが言ったんですよ?
 ホワイトデーは三倍返しが基本だって。」



その言葉で分かるのは、とりあえず
このお菓子の山が自分に向けられたものだという事で。


いやちょっと待て、この山は
明らかに三倍返しとか言う可愛いレベルじゃない


十倍とか、下手するともっとだ。


何と言っても、この村の中では一番大きいはずの
ジェイの家の屋根をも、遥かに越えて聳えている。



何をしたらこうなるんだ、とジェイに目で訴えれば
ジェイはニッコリと



「モフモフのみんなからのプレゼントです」


「・・・・・・はい?」


「ホワイトデーの話をしたら、みんな、さんに
 日ごろのお礼がしたいって張り切りだしまして。
 どこかで話が捩れて3倍返しの話が伝わったみたいですね」



まあ伝言ゲームではありがちですが、とジェイ。


は引き攣る頬で、その山を見上げて
恐る恐る、尋ねた。



「ま、まさかこれ・・・・モフモフの一人ずつから3倍返し・・・・?」



「はい、そんな感じです。」



「・・・・・・・・・。
 因みにコレ、食べきるって事は・・・・・」


「考えてないでしょうね、多分。」



お礼をする事だけを考えて渡されたんだと思いますよ、と
ケロリというジェイに、はちょっと膝を着きたくなったりして。


10倍返しとか、可愛いもんだったかもしれない。



これどう消費するんだよ、
明らかにこれ一人で食べたら肥えるよなー・・・と


お菓子の山に目をやった。



見えるのは、チョコレートや飴
ホタテグミの変り種から様々だ。



気持ちは嬉しい。


けれどもやっぱり、これは新手の嫌がらせだと思う。




うわぁ・・・・と見上げた、高々としたお菓子の山


何ていうかもう、壮観だ。



「と、言うわけですので・・・」


「はい?」


「これが、僕からのになります。」



はい、と渡された、綺麗なラッピングのソレ。


3倍返し、と言う大きさではないが、
凝った装飾をされている。



それを受け取ったままの形で固まった
ジェイは小首を傾げたが



「あ、ありがとう・・・・・」



これだけ貰った後でも、
やっぱりジェイから貰えると嬉しいわ・・・・と



やはり何処か呆然としたままで言った



ジェイは面食らったように赤面しながらも
「大事にしてくださいよね」と、照れたように付け足した。



(あー・・・・でもこれどうしよ・・・・)
(自分が蒔いた種なんですから、自分で処理してくださいね)
(ジェイのおにー・・・・)
(何言ってるんですか、運び出すくらいは手伝ってあげますよ)
(うわぁ・・・・・)







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