一応三倍返しです
Ver,KAITO










カイトにチョコレートを渡したのは、丁度一ヶ月前。


という事は、ホワイトデーに当たる今日は
カイトからお返しを貰う日という事で


は車を運転しながら、少し苦笑した。


さて、どんなお返しが待ってるやら、と


ここ数日、カイトは大分眉間に皺を寄せていた。


やはりきちんとしたお返しをしたいものの
ボーカロイドの身の上で稼ぎが無い彼には、
金銭的に無理な話と言うもので



別に気持ちだけで良いのに、とか言ってみても
彼はやはり納得せず


そうして数日間の彼の百面相は
見てるこちらからすれば面白いの一言になるのだが
当の本人は、それはもう神経が磨り減るほどに悩んだらしく


ついに昨日の夜には、
あのカイトがアイスも食べずに眠ってしまった。



ああこれはよっぽどだ、と思いながら
結局彼の中で問題が解決したのかも分からないままに
今日と言う日を迎えてしまった。


さて、鬼が出るか蛇が出るか


少々怖いものも無きにしも非ず、だ。


「ただいまー」

「あ、マスター!おかりなさいっ!」


暖かい光と共に帰宅した自分を向かえたのは
いつも通り過ぎるカイトで、何だか少し拍子抜けする。


どうしました?と首を傾ぐカイトに
いや・・・・・と、ちょっと曖昧な笑みを返して。



リビングに入れば、綺麗にセッティングされた
テーブルの上に、は目を丸くした。


いや、カイトの料理はいつも綺麗だし
彼がこの家に来てから、家中それはもう綺麗だけれども



何ていうか、そういうのではなく



まるで特別な日であるかのように
豪華な料理が並ぶテーブル


綺麗にデコレーションされたケーキ



少しおしゃれに生けられた春の花





ポカーン・・・と立ち尽くす
カイトはエプロンを取りながら、少し苦笑した。



「ちゃんとしたお礼したかったんですけど・・・
 やっぱりお金の面で無理があって・・・・」



料理でお返しじゃあ、あんまり普段と変わり映えも
しないですよね・・・・と視線を落としたカイトに


けれどもは「ありがとう」と笑んだ。


きょとんとしたカイトに
「だってコレ、私の好きなものばっかでしょ?」と言えば
「あ、気付きましたか・・・・」だそうで。


「カイトの料理美味しいもん。
 これで十分お返しになるって。」

「うー・・・でも・・・・」


それでも尚納得しない様子のカイトに
は少し意地の悪い笑みを浮かべた。


「じゃあカイト、今日は晩酌、付き合ってよ。
 それで許したげる」


「へ・・・・・?」



カイトがアルコールを好きじゃないのは承知しているが
そこまで納得しないのなら仕方ない。


それで手を打とう、と言うとカイトは
嫌な顔をするでもなく、少し呆気に取られた様子で



それからようやく、ニコリと笑った


「喜んで、マスター!」




(料理、お酒、デザート・・・うん、三倍返しじゃない。)
(マスター・・・それ、ちょっと無理矢理・・・)
(えー?なあにー、聞こえなーい)




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