人々の集まる、休日のショッピングモール。


お値段的に可愛くないお店が多いから
特別何かを買おうという気もないけれど


目の保養の意味も込めて、
ウィンドウショッピングには良く訪れる。


暇な休日の時間つぶしにはなるし、
家に引き篭っているよりは健やかだ。


黒形で纏められたギターショップに、キラキラと華やぐ雑貨店
海外からの輸入っぽいおもちゃ屋さんとか


もちろんブティックなんかも揃うショッピングモールには
実に多種多様な人々が集まっていて


損な要素の中に、自分とカイトがちょっと混ざっていたって、
まあ目立ちはしても違和感は無い。


・・・・・・多分。


そんなこんなで、カイトに付き合ってもらって
ウィンドウショッピングを楽しんでいれば

果たして偶然か、バッタリ友人に出会ってしまって。

まあそれが、カイトの事についても
気の置けない友人であったから良いのだけれど


ともすれば、必然的に行動は共にする様になる。


その勢いで買ってしまった、ちょっとお高いワンピースは
金銭的にピンチな自分にとっては、かなりの冒険だ。


「マスター、アイスが食べたいです」


一通りモール内を回って、さて休憩でもしようか、と
なった頃合を見計らって、カイトはニッコリ言って来た。


いつものパターンだから、今更怒りもせずに
ハイハイなんて受け答える。


カイトは、やった!と諸手を挙げて、今日はあそこが良いです、
と、モール内にいくつかあるアイス屋の一角を指差した。


ここ最近、すっかりカイトのお気に入りになったお店だ。


嬉しそうに駆けるカイトを見守っていると、
やんちゃな子供を見つめる母親の様な気分になる。


正直、複雑だ。


「いやあ、カイトも随分人らしくなったじゃない。」


同じようにカイトを見守りながら、は言う。

まあねえ、と答えてやれば、
「あんたもすっかりお母さんねー」とか。


言わないでくれ、切ないから。


「ねー、カイトの方も落ち着いてきたみたいだしさあ
 そろそろ他のボーカロイドも買ったら?
 MEIKOとかミクとかさあ。」


個人的にはMEIKOが好きかなーとか言う
は苦笑して見返す。


「んー・・・とりあえず今は
 他のボーカロイド買うつもりないからなあ」

「えー、なんでえ?」


何でって言われても・・・・


は頬を掻く。


カイトは既にアイス屋に入って、
今日のフレーバーを吟味しているようだ。


その様子を、見なくてもリアルに想像できる。


「まだまだ、カイトだけで手一杯だしねえ・・・」

「でも、余裕が出来たら買ったりしないの?」

「多分、買わないと思うよ」


言うと、は怪訝に自分を見つめた。


どうしてー、とでも言いたそうな顔だ。


「あんまり、あっちもこっちも手ぇ出したくないし
 きっと他の子買ったら、そっちに付きっ切りになっちゃう。」


寂しい思いをさせるのは可哀相だし・・・


そう呟いた後、照れ臭そうに笑って「それに」と付け加えた。


「カイトの声が一番好きだからさ、
 手は掛かるけど、アイツ一人いれば十分だよ」



言ったら、は一瞬驚いたように目を見開いて

それから、からかう様な笑みを向けてきた。


「っはぁ〜、愛だねえ、ラブだラブ。l・o・v・eだね」

「ちっ違う!カイトにはそんなんじゃなくって・・・!!」

「何よ、まさかloveじゃなくてlikeーとか、言うんじゃないでしょうね」

「う"っ・・・・」


いやまさかそんな・・・


は口篭る。


loveとかlikeとか


そういった次元の話じゃない。


カイトに対しての感情


なんて言うんだろう、そうじゃないんだ、これは――・・・



「loveでもlikeでもなく・・・・ですね」

「んー?」

「カイトに対しては・・・・」


必死に頭の中の辞書を掻き捲って


ようやく引っ張り出してきた単語は
多分これで合っている、と思う。



「favorite!!」



そう、言い捨てるように言って


はカイトに、「アイス決まったー?」と声を掛けて
ほとんど駆け足に近寄った。


は、の言葉に思わず足を止めて、
けれどもは、カイトとキャイキャイ騒いでいる。


「マスターぁ・・・どれも美味しそうで決まらないですー・・・」


「あー・・・とりあえず、2つに絞り込めば買ってあげるから」


その言葉に、パァっと晴れるカイトの表情は
少し離れた此処からでも分かる。


やれやれ甘いなあ、なんて思いながら、フっと微笑んだ。


「そういやあアイツ、英語死ぬほど駄目だったっけ」


呟いてから、喉の奥でクツクツと笑う。


きっと『お気に入り』の意味で言ったんだろう事位は想像付くけれど。


favoriteじゃ好きを通り越してるじゃん、と
心の中で突っ込んでおいた。


もちろん、届いちゃ居ないけれども。


「大好き宣言してったわ、アイツ」


まったく、無意識に言うなんて、どれだけ好きなのよ


ようやく2人に追いついたものの、
なんとも笑いが止まらずに


いつまでも笑い続けるに、
カイトとが首を傾げて顔を見合わせた。






大 好 き 宣 言
気付かないのに気づいてて、僕が君を大好きだって





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