例えばそれが、何てことない日だとして。 フと見上げた空が、 あの日、あの人と見た空の色に似ていた、だとか 何となく気付いた風の匂いが、あの日の風に似ていただとか。 ああそうだ、あの日に咲いていた花が 同じように風に揺れていた、とかでも良い。 それだけで、今日一日はあの人の為のものになる。 お花を買うお金はないから、 途中に咲いている綺麗な花を摘んで行こう。 あの人の好きだったアイス――・・・ ガリガリ君で、誤魔化されてくれないかな。 「まあしょうがない、今日は許してあげましょう」 あの人なら、そう言いそうだな。 大好きなあの笑顔で、そう言ってくれそうだな。 唄う歌はどうしよう アイスの代わりに、せめてあの人の好きだと言った歌を唄おう 明るい歌が良いな この空に似合う、透き通る歌が良い。 ゆっくりと、陽は真上へと昇って行く。 「・・・・いってきます、マスター」 貴女に会いに、行って来ます。 少しゆっくりしてから、すぐに貴女の元へ戻ってきます。 例えばそれが、何てことない日だとして ただそこにあっただけの空とか、風とか、野の花 そこにある何てことない全てのものに、貴女を見出す。 そんな日は、貴女だけの日 貴女の為に花を摘んで、アイスを買って、歌を唄って 貴女の為に家を出て、貴女の元へ帰って来る。 何処へ行ってもずっと一緒な、貴女だけの日。 大丈夫、俺は一人じゃないですよ。 ずっと、貴女と一緒です。 ああ、明日はどんな、貴女の為の日になるだろう |
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