自分は貴女のものですと、カイトはよく、自分に言う。


カイトはボーカロイドで、自分はマスターだから、それは間違っていない。


カイトは、自分のものだ。


けれども、フとして思う。


それならカイトは、何を持ってるのだろうと。


自らを捧げるカイトに、残っているものは果たして何?



「ねえカイト」

「あ、はい?」

「カイトってさ、私のもの・・・なんだよね?」


「どうしたんです?藪から棒に・・・・」



首を傾げて言うカイトに、んー・・・と、答えにならない答えを返す。


カイトは不思議そうにしながらも、小さく頷いた。


「俺の声も、身体も、心も――
 全部貴女のものです、マスター」


「・・・・・・うん。」


カイトに言われるその言葉が少し好き。


自分の両手が満たされて行く、不思議な感覚。


でも、世の中ギブ・アンド・テイクって、ある。


「ねえ、カイト」

「はい?」

「カイトが私のものならさ、」


私もカイトのものにしてよ。


真っ直ぐ見つめて、そう言った。


カイトが、目に見えて固まる。



「あ、の・・・マスター?」

「ん?」

「それって、だから・・・あの・・・・」


応答に何とも困っているカイト。


少し、面白い。


「全部、あげる、カイトに。」


心も、身体も、貴方と同じように。


それで貴方の手の平が、私と同じように満たされたなら


私はきっと、幸せだろう。



戸惑うように、恐る恐ると、カイトが髪に触れて


窺うように落とされた、小さな口付けに満たされていたのは


自分と彼、どっちだったのだろう




貴方のものは私のもの、私のものは、あなたのもの








- CLOSE -