異世界の歌姫1 |
雪がまだ、道に残る。 僅かにその身を削り始めた白い塊達は、排気ガスに汚れて お世辞にも綺麗とは言えない産物。 風は僅かな春の香りを運ぶ。 意識しなければ気付きもしないが、今のこの晴れやかな気分は そう言った些細な喜ばしさに敏感だ。 「あーっ!なんかもう イロイロと解放された気分ーっ!!」 はひとつ大きな伸びをした。 コートに身を包む同じ年頃の子達が、コチラを何事かと見ては通り過ぎる。 その様子に、友人のがオタオタとした。 「ち、ちょっと! 声大きすぎ!!恥ずかしいなぁ・・」 「まーまー、良いじゃん良いじゃん。息苦しい受験も終わり! しかも見事本命校に受かり、入学式も無事終了・・・・なんかもー開放的ーっ!」 そう言って、まだまだ小さな雪が舞い落ちる中で、 小さなターンを軽やかに決めてみせる。 「それはそうだけどっ! もー、場所くらい弁えてよぉ!」 言って、は困ったようにの腕を引いた。 その思った以上の力には少しよろけて、 ハイハイと苦笑して見せる。 「でもさ、やっぱ嬉しいじゃん。 とも同じクラスになれたし、今すっごい幸せなんだよ。」 そう言って、微笑んでみせる。 素直なその言葉が風に乗り は少し口を尖らせた。 彼女が照れた時にする、その仕草―・・・・ 「まったく・・・ その笑顔に騙されるのは良くないなぁ・・・」 その呟きも、もう何年彼女の口から聞いてきたんだろう・・・ そんな会話をしながら、2人はゆっくりと家路を歩く。 とは幼馴染で、家も歩いて10分程で着ける距離。 親が共働きで、幼い頃から家で一人だったは、 良くの家にお世話になっていた。 今ではまるで、 本当の姉妹のようだ。 「よっし、んじゃぁこのまま景気付けに カラオケとか行ってみる?」 「ぁ・・・ごめん・・・」 ニッと笑って見せたに、が申し訳無さそうに謝る。 家が目前に迫ってきたときの事だ。 付き合いの良い彼女が断るなんて珍しいな・・と はの顔を覗き込む。 は、言いづらそうに言った。 「親が・・さ。 高校の入学祝だーって、外食行く事になってるんだよ・・・ね。」 その言葉を聴いて、一瞬間があった。 「・・・・あ、そっか。んー・・・まぁそうだよね、うん。 フツーの家ならやっぱお祝いか!!なーによ、謝る必要ないじゃん」 もう何年の付き合いよー。 言って彼女の腕に絡む。 自分の親は、今日が自分の入学式だったなんて 記憶のスミにも残っていないのだろう・・・ そういう人たちだ。 「ごめん・・・」 知っているから、は謝る。 「謝る必要ないってば。ああ、それにホラ私、今秋羅からゲーム借りてんだよね。 もうすぐクリアが近いから、駄目なら駄目で無問題!クリアに向けて一直線!!」 ラスボスめ!いざ尋常に勝負〜!! おどけた様に言って、腕を空へ高く上げ笑う。 も、その柔らかい笑顔に力なく笑みを返した。 「てな具合でっと。じゃ、私は此処でね!外食、楽しんできて!!」 皮肉ではなく、心からの言葉。 だからは、に微笑み返すのだ。 「うん。 も、ゲームクリアがんばっ!!」 そう言って2人は、交差点を左右に分かれた。 ―――・・・・・。 「ぇ・・・?」 ふと、誰かに話しかけられた気がして振り返る。 後ろには、ただ歩き続ける幼馴染の真新しい制服が風に靡かれるだけだった。 「ただいまー。」 帰って早々、靴を投げ出す。 当然の様に、誰もいない。 リビングを素通りして二階に上がると 廊下の角の部屋を押し開けた。 自分の部屋に入るとテレビのすぐ傍に腰を降ろして 学校で配られた教科書や、夏の制服。体操着。 その他諸々が入る黒いビニル製のスクールバッグを、近くに放り投げた。 「へっへー、よぅっし、今日は徹夜でゲームクリアを目指すぞ! うん、今日こそは!!!」 そう言って、PS2の電源を入れる 学友から借りた、去年の夏に発売された某大手会社のゲームソフト。 新作も出ているのだが、何となく本屋で見かけたそのゲームの宣伝文にずっと どんな内容だか気になっていたのだ。 で、実際にやってみれば、まあ凝り性の自分は嵌りに嵌ったわけで、 とは言えゲーム音痴だから時間は掛かりに掛かったわけで・・・・ やっとの事で、クリア間近だ。 ・・・・が、ここしばらく手をつけていない。 あのシュバルツ戦前のボス連戦が面倒だなんてことは口が裂けてもいえないが どうも、何度プレイしても最終決戦の前で全滅になるので 数日前に面倒で投げたのだ。 けれども、そうも言ってられなくなったのは、友人の一言。 『終わったんならさっさと返せよ。 あれ、攻略本と一緒に売るから。』 仕方ないので、友人の言う『攻略本』を、半ば強奪の形で 本日借りてきて、徹夜をしてでも明日には返そうというのだ。 制服から着替えるよりも、教科書を確かめるよりも 真っ先にテレビの前に座る自分もどうかと思うが・・・ しかし、何時まで経ってもオープニングが始まらない。 壊れたか!?とか少し焦り始めた頃。 ドンッ!!と大きな音がした。 体がガクリと揺れて、何が起こったのかわからない。 そのあまりに大きな揺れが地震であると気付いたのは暫くしてからだ。 「ゎっなっなに!!?」 咄嗟にバッグにしがみ付く。 階下で、食器が落ちて割れる音がした。 「〜・・・・っ」 力ない声。 その自分を名を呼ぶ声に驚いて部屋の入り口を見れば、 何故か、十字路で別れたはずのがいた。 「!!?なんでこんな所に・・」 気心知れた中のには合鍵も渡してあったりして、 彼女だけは出入りも可能なのだが・・・ 立っているのもキツイ大きな揺れは長く は床を這うようにしてに近づいてきた。 その手には、先日彼女に貸した本が握られている。 「こ、此れ・・に返すの忘れてて・・・。」 「別に、わざわざ今日返しに来なくたって!!」 「だ、だって〜・・・」 近づいてきたは、に縋り付く様。 その瞳は、僅かに涙目だ。 ―――・・・・・。 また、声がした。 自分を呼ぶ声だ。 何処か、懐かしい・・・・ 「な、なに!?アレ!!」 地震が続く中、が指差したのは窓の外。 その外の風景に愕然とした。 空が、ドス黒い。 夜の闇とは違う。 墨汁をそのまま空に零したかのようだ。 ―――・・・・・。 ハッキリと、名を呼ぶ声。 ――― 我が元へ・・・・ その声と同時に、電源の入りっぱなしだったPS2が ガガガガと怪しげな音を立てる。 テレビが、壊れたかのように白く眩い光を点灯させて 部屋を明るく、暗くしていた。 何かが起きている事など、考えるまでもなく―・・・・ ―――我が声を・・・・・ テレビの光が、完全に部屋を包み PS2がガシャンッと大きな音とともに砕け 大きな地震も収まった頃・・・ 「と、止まっ、た・・・?なんだったの・・・今の・・・・――?」 其処に、が縋り付いていた少女はいなかった。 ただ、砕けたゲーム機とテレビがある部屋 その家の中にいたのは 今までこの家に住んでいた少女の、友人だけだった―・・・・ ― to be continue... ![]() はじめましての方も、いつも有難う御座いますの方もこんにちは。 えー・・・ヘタレ作者な星野ひまわデス。 ジェイ夢を逆ハーチックに・・なお話に書き上げたく思うこの「白エリ(略)」ですが・・ 「少しでも2人がイチャ付いてくれる話にする」を、モットーに書いていきたいです。 って言うかそれくらい頑張らないと・・・相手がジェイ君ということで・・・・ね。 『恋愛』の項目に、『今のところ興味がない』とか答えちゃう 可愛い可愛いジェイ君ということで・・・ねっ!!← 友情夢ならまだともかく、こと恋愛に関しては、ヒロインに対して特別な感情すら 抱く事無く終わるという最早夢に非ずな事態に陥りそうなのでorz 不器用ながらにいちゃらぶするようなお話にして行こうと脳内会議中です((笑 てなワケで、こんな調子で進んでいく話になるかと思いますが、 次回もまた、お付き合いくださると嬉しいです^^* ![]() |