異世界の歌姫4 |
鳥の声で目覚めるなんて、なんてメルヘンなんだ・・・ そんな事を思って目覚めたのは、朝の9時近くだった。 「って、ヤバ!!学校遅刻・・・・してないんだっけか。」 ベッドから飛び起きてふと気付く。 自分の通う学校なんて、この世界には無い。 目が覚めたら夢でした・・・・なんてオチ あるわけ無いとは思っていたけれど・・・ はぁ・・・っと一つ溜息をついて、昨日買っておいたパンを口に放り込んだ。 髪を梳かしたり荷物を準備したりして、 鉄扇を足に括りつけてから、は宿屋を出た。 日差しが眩しくて、昨日の雪が嘘の様に暖かくて―・・・・ 思わず、一つ伸びをした。 季節が廻り卯月の初めの夜 導きの光は灯火の北西の方向より立ち上がる 愚かなる子等の導きに古き大地は導かれん 4月に入った初めの夜、物語は始まる。 セネル達がこの遺跡船に着き、光の柱が立ち上る。 丁度、この”灯台の街 ウェルテス”から北西の海岸で―・・・ そして、彼等によって導かれる。 この、遺跡船は・・・・ 子等と共に古きを導け。 選ばれし8人の者達に付き 我が声を聞き光を導け。 選ばれし8人・・・ このゲームのメインキャラクター達と共に、 この世界の伝説を創り上げる ”声”を聞き、彼等と共に―・・・ 汝 偽りの影に選ばれし者 汝の役目は此処に在り 偽りの影とはどうゆう事か。 分からなくても、理由はその先にあると言う。 夢にしては、妙に胸に残る。 そんな、声―・・・ 信じてみるなら―・・・・ 「・・・よし。」 は一先ず、噴水広場へと向かった。 今日はとても天気が良い日だ。 こうゆう日は、人の心とは寛大に、また逞しくなるものである。 だから・・・ 「いーもん・・・ 別の働き口を探せばイーんでしょーよ・・・」 午前中に訪れた店約8件を全てバイトとして雇ってくれなかったとしても ヘコタレたりなんかしないのだ。 この世界で生きる事を決めたなら、 どうにかして生活出来るだけのお金を稼ぐ必要がある。 流石に、窃盗で生きていくには無理がある。 物語が始まる前には鉄格子の中・・・ そんなオチが付きかねない。 ・・・と言うことで、まともに働く事を選んだ気だが・・・ 世の中、そう上手くは行かないものなのだ。 「ぁー・・つっかれたー!!」 噴水広場のベンチに両足を投げ出して座る。 重いバッグを横に下ろした。 「あと回ってない店は何件あるんだろ・・・」 やはり、ゲームで表示されていた家々よりは 軒並み揃える街並みだが・・・・ もし全部のお店がダメだったらどうしようか・・・? 思わず思考は暗い方向へと回る。 呆然と、空を見上げた。 そう言えば、今日はこの世界に来て初めての晴れの日だ。 空が青い。 海は、もう何年も荒れているというが それでも空が澄んでいた。 潮風が心地良くて、目を細める。 鳥の声が、何かの楽器の様だ。 ゆっくりと、立ち上がる。 何を考えていたわけでもない。 けれども、その口から高く澄んだ歌が零れた。 青き大海原 爪術を使う指導者が 遥かなる星からやって来た 「大自然の生命は星を輝かせる秘宝」 それらはとても白い氷壁で覆われていた その指導者は欠けた白い翼で ゆっくり大海原を飛び 大気 空 海を渡る船、そして金属 また知恵を備えた生命を誕生させた 知恵を備えた生命 つまり人々は、ひとつ彼に願いごとをした 星のもとで祈る人々は 「白く覆われた氷壁を溶かす1つの赤い炎が欲しいと」唱え続けた 風上で祈る人々も 風下で祈る人々も 白い氷壁は 赤く染まり ほとんどの氷壁が消滅した 彼が作った赤い炎は輝く星になり 祈る人々の願いを1つ叶えた。 この国の古い言葉 ゲームを開始した直後、最初のマップで流れてきたこの音楽には 本当に衝撃を覚えた。 いや、そもそもレジェンディアのBGMは全部が全部素敵だったが・・ 思わず近くのCDショップに走って、 サウンドトラックまで購入したほどだった。 うろ覚えだし、所々誤魔化している所もあったけれども この国の人たちが知っているはずも無いだろう。 広場に集まる人々が何事かと振り返る。 街を、澄んだ歌声が一掃した。 異国の少女の甘い響きの歌声。 穏やかな日常を彩るに相応しい声だった。 ゆっくりと一音一音奏でるその姿もまた 何処か華やかに見える。 「うわ!!?」 歌が終わる頃、の周りには 分厚い人だかりが出来ていた。 盛大な拍手が広場から沸き起こる。 は目を見開いた後に、ふわりと微笑んで礼をした。 途端、辺りから降ってくるのは この国の通貨だ。 中には小さなお菓子なんかもある。 太陽の光を映して煌びやかに映えながら の足元に、幾つも、幾つも、落ちて来た。 ― to be continue... |