白いエリカの彩る夜に
異世界の歌姫5








その後も、思いつく限りの歌を唄った。
唄うことは元々好きではあったが、こんな所で役立つとも思わなかった。

少し、照れくさい。



「あっ、アイツです!あの女!!」


ふと、囲む人垣から、雰囲気に異質な声。
集っていた人々は、顔を強張らせて
逃げるように散り散りに去って行った。


何事かと首を傾げていたも、
その声の主を見て納得した。

昨日時代遅れのチンピラが、親玉らしき人と仲間であろう人々を
数十名ほど引き連れてやってきたのだ。


(あ、あはは・・・
 なんっつー王道パターンなの・・・)

ゲームをやっている時は、結構皆人が良くって
街中和気藹々〜なんて雰囲気があったのになぁ・・・・

あ、でも最初に、セネルがジェイに騙された所で
『5万ガルド』に釣られて喧嘩し様とした人達が居たっけ・・・

そんなどうでも良い事を考えながら
回収したガルドを掻き集め、袋に入れてカバンに放り込む。
そして、足につけた鉄扇を抜き取った。

広場に誰もいなくなるころ、チンピラの横に立つ親玉と思しき人が
目つきも悪く近づいてくる。

「よぉ嬢ちゃん。
 昨日はウチのモンが世話になったみてぇだなぁ」

(子分が時代遅れなら、親分も時代遅れだなぁ・・・・)


思わず、呆けたように男を凝視してしまう。


「コイツがよっぽど愉しかったらしいんでなぁ。
 ちょぉっと俺達とも遊んでくれや。」


「いい歳してバカみたいにはしゃいで遊べるほど
 頭、軽く出来てませんから。ご遠慮します。」


ニッコリ。

そんな擬態語が良く似合う。
明らかに機嫌が悪そうになる男を見て、
内心では冷や汗をかきまくりなのだが・・・


あのチンピラは弱くてバカで阿呆だったから
どうにか、初心者の扇術・・・もとい、後頭部殴打でどうにかなったのだが・・・

多勢に無勢。
プラスして、この男。

さすがに、この数を纏めているだけあって、
それなりにオーラが違う。

きっと、弱くはない・・・・


さて、どうしたものか・・・



「まぁ、そうつれなくすんなや。
 どうせ10分とかからねぇんだ。」

そう言って、指を鳴らして男たちが近づいてくる。

は鉄扇を構えるものの、後ずさった。


冷や汗が 滲む


逃走路の確保に、視線を横にずらした。


「はあぁっ!!」

そのスキをついて、チンピラ達が数人、殴りかかってくる。

とっさに、鉄扇の軸でソレを受け止めるも
その衝撃に手が痺れ、骨が痛む。

女子供一人の力と大人の男大勢では、明らかにこちらが不利だった。


昨日のチンピラが、下卑た笑いで近づいてくる。

(ヤッバ・・・・)

もまた、後ずさる。

昨日の様に声が助けてくれることも、無さそうだった。

絶体絶命・・・


そんな言葉が頭を過ぎる。

だって、男たちはなんかヤバそうなエモノ片手にドンドン詰め寄ってくるのだ。



後数歩で、噴水の淵で足を止められてしまう。



――その時だった。


「ぁ"あ"っ!?なんだテメ・・・ぐぉっ!?」


チンピラ集団の向こう側の端から、そんな声と、人の倒れる音。


「おい、何ご―・・・ぅぁあっ!!」

親玉の男が、何事かと尋ねようとした時
空から鋭い閃光が男を直撃する。

バシィンっ!と音を立てたソレは、
男の意識を奪うには十分すぎるものだったらしい。

状況をつかめていないチンピラの横。
親玉が、倒れた。


「なっお、親分が・・・・」

何処かで、情けない声。

頭を失った集団が脆いとは、良く聞く話。

この場もまた、然り。


「ひっに、逃げろぉっ!!」

「うわああぁあぁぁっ!!!!」


情けないにも程がある。

先ほどの威勢が何処に行ったのか聞きたくなるような声を上げて
男たちは逃げ出した。

それは本当に、一瞬の出来事―・・・


街の人が逃げ出したこの噴水広場に残ったのは、
と、気絶した男と、そしてー・・・


「あっ、昨日の・・・」

昨日、この場での窃盗を目撃した少年、ジェイだった。

は安堵からか、思わずその場に座り込む。

「あ、ありがとう・・。助かったよ。」

ふぅっと息を吐き、言う。
ジェイは、呆れたように近づいてきた。

「昨日の今日で、あんな目立つことするからこうなるんですよ。
 ・・・・立てますか?」

「あ、うん・・・。」


差し出された手に掴まり、なんとか立ち上がる。
スカートの汚れを払うのを確認すると、ジェイは言った。


「じゃぁ、面倒ごとに巻き込まれるのはイヤなんで
 急ぎますよ。」

「えっ?・・・って・・・うわぁっ!?」


言うと共に、その腕を掴まれ走り出されたので
はバランスを崩す。

何とか転ばなかったものの、相当焦った。

「ち、ちょっとっ!なにすー・・・」

ふと、周りから何か、ドラムでリズムをとるような音が・・・


「・・・・何の音・・・?」


いや、ゲームの通りだというのなら、
きっと・・・彼等ですよね?

「確認したいなら此処に居てください。
 ぼくは面倒なので行きます。」

「あ、ち、ちょっと・・・」

言って、ジェイが行こうとするので、は慌てて後に続いた。

いや、本当にあの格好をしたフェロボンが出てくるのかは
ちょっと・・・・大分・・・相っ当気になったのだが・・・


♪ヨウヨウ 其処行くボウヤ 街の掟を知ってるか〜い?♪

道具やの前を通り過ぎる頃。
そんな歌が聞こえたのを、
『おー、生フェロボンだー』
とか、ちょっと感動したりしながら聞き流した。

後には、派手な格好をした男女ペアが
人の居ない広場でしょげていたとか何とか・・・・










― to be continue...








っつーわけで、出会い4をお送りしとります。
ハテ・・・?4話にしてようやく会話らしい会話が;;
次からはちゃんとした会話が出てきてくれる・・・と、思います(ぇ
フェロボンさり気にスキじゃー!(聞いてない。

でわでわ、
次回もまた、お付き合いくださると嬉しいです^^*