白いエリカの彩る夜に
歩み寄る先3








「今日のパンは一味違うキュ!」

さんは料理上手キュ〜!」

「すぅっごく、おいしいキュ!」


モフモフ3兄弟が口々にそう言って笑顔を作る。
思わずこちらもつられてしまうような笑顔。

思わず口元がにやけるのを感じながら
はジェイを見やった。

「どんなもんよ?」

口角を吊り上げて言う。
ジェイは、納得行かない・・・と顔を顰めていた。

話は、約数時間前に遡るわけで・・・・








「だーもー・・つっかれたー!!」

走りに走ってモフモフの村について、
思わずその場にペタンとヘタレこんだ

途中の休憩も、気休めになってたらいいな〜なんて希望の彼方。

水晶の森での休憩なんて、あって無いに等しいような気がした。

少なくともあと2時間は動きたくない・・・

早速そんな気持ちになる。

しかしジェイは、これ見よがしに時計を見やって言った。

「アレ、もうすぐお昼ですね。
 さん、仕事ですよ。」

「お、鬼が一匹!!」


立ってられない程疲れている人間に、ソレを言うか!?

講義をするだが、ジェイはコレでもかと言うほどニコリと笑っていた。

「別に構わないんですよ?僕は。
 さんを解雇して今までどおりの生活を送―・・・」

「さぁって、お昼ごはんの準備しようかな!」

疲れの残る体に鞭打った。

あーもうチクショウこの鬼がとか思ってはいても
解雇されてはこちらも困る。

しがみ付いてでもここに残らなければならないのだ。

フラリと立ち上がって、カラ元気でジェイたちの家へと向かう
に、ジェイはヤレヤレと溜息をついた。





「ん〜・・・と・・・うわっホタテばっか!?」

食糧庫を覗くは、顔を引きつらせる。
冷やりとした空気の立ち込めるそこは、魚独特の生臭さが立ち込め、
主に、その広い空間を占めるのはホタテばかり・・・

(やっぱアレか・・・ラッコが進化した亜人種だからか?)

小分けにされる箱の中を覗きつつ思考をめぐらせる。

「んー・・・今からじゃパン生地は作っても間に合わないよね。
 ねージェイー。余ってるパンか何かある?」

もう一つ箱を開けながら、後ろからついてきていたジェイに
問いかける。

「余りの・・・ですか?
 確か、食パンはまだ残ってたと思いますよ。」

「ほー。
 んじゃぁとりあえずは手軽にサンドウィッチか。」


よいしょと婆くさい声とともに立ち上がり、
開けた箱からレタスやらトマトやら、あとはたくさんあるホタテも取り出して、
入り口の方に歩いていく。

ジェイが、こちらを見ていた。

「・・・何?その疑いの眼差し。」

「いえ、一つ重要な疑問が浮かびまして。」

あ、きっとものすごっくイラっとくる質問してくる。

直感で悟ることと言うのは、あながち全てハズレでは無くて・・・


「・・・・さん、料理できるんですか?」


「ハッハー、予想はしてたけどやっぱりその質問かコラ」

ああどうせそうでしょうよ。
ええ、料理が出来るようには何時だって見られませんよ。

「あのねぇ、私だって独り暮らしに近いような暮らしはしてたんだから。
 『料理』を作ってる以上それ以外のものなんか出しません。」

材料を片手に、片方の手は腰に当てて半眼で目の前のジェイを見やる。

「『料理』の原型を留めていても
 それ以外のものが入っていれば料理でなくなりますがね。」

「・・・・・どうゆう意味か、説明してもらおうか?」

肩を竦めて見せたジェイの、冗談ではなく本気で行っている事を示す
その眼光に、はその瞳を睨む。

分かっている。
先ほどの言葉の意味、自分は予想できている。

「『毒』でも入れられたら大変・・・とでも言いたい?」

「・・・まぁ、そうゆう事です。」

やっぱりそうですか・・・と、溜息。

用心深いこっちゃな・・と自分より僅か背の低い少年を見やる。

「怪しいのは認めるけどさー
 私にジェイやキュッポ君たちを傷つける力が無いことは、
 昨日今日で分かってることでしょ?」

「念には念ですよ。」

「ふーン・・・・あっそ。」

ま、良いけどさ。と呟いて
は食材を持ち直し、ジェイの横をすり抜けた

彼の用心深さ・・・

それはある意味、仕方の無いことだ。わかっている。

クソッロンロンめ!!とか、過去を酷いものにした
『お師匠様』に悪態をついて

それにしても、ゲームで見たジェイよりも、
なんか警戒心が強いなーとか、考えて

は、食料庫の扉に手を掛ける。

「あ、そだジェイ。ちょっと言いたいんだけどさ」

「な、なんですか?」



「私は絶対に、ジェイの大切な物を傷つけない。」


真っ直ぐに、その瞳を見つめて言った。
少しだけ、ジェイが怯んだのが分かった。

はフワリと微笑み続けた。


「モフモフの皆も、もちろん、ジェイの事も。
 昨日今日の付き合いだけどさ、私、
 君たちの事結構好きだし。」

「なっ!?」

目を見開くジェイ。

微笑を絶やす事無く続ける
何処か自信に満ち、それは、自分の『好』の感情に対する
素直さから来るものだった。

「だからさ、もし私が約束を破った時には・・・


 いつでも私を殺せるようにポケットの中で掴んでるその小刀で
 私の事、殺して良いから。」

ジェイの瞳が、尚一層大きく開かれる。

気付かれてるとは思ってなかったのだろうか・・・

は笑って「すぐにご飯できるからね?」とだけ
残して、食料庫を出た

ジェイは思わず、気が抜けたようにその場に座り込む。

「あ、そうだ。」

「っ!?」

しかし、次の瞬間再び体を強張らせた。

扉が再び開いたのだ。

ヒョコリと、先ほど出たばかりのが顔だけ覗かせる。

「あともう一個言い忘れ。」

「な、な、何ですか!?」

動揺するジェイに、はニッと子供の様に笑って言った。

「料理が出来るかなんて私に聞いたこと、
 絶対に後悔させてやるから、覚えときなさいよ?」

んじゃねー。と、はまた扉を閉め、
それからは、は戻ってくる気配はなかった。


ジェイは一つ息をはいて、
後ろの箱に体を預けた。

「・・・・なんか・・・ペース崩されっぱなしだ・・・」


冷やりとした食料庫に、ひとつの呟きだけが響いて消える。




そんなこんなで、結局30分するかしないかで昼食になり
初めへと戻るわけだが・・・

は、言葉通りジェイに、『料理が出来るか』と問うた事を後悔させる。

毒も入って無いし、
これは普通にすごくおいしい食べ物だし・・・


「ねージェイ、言うこと無いのー?」

ん?と下から覗き込むように見てくる。
ジェイはグッと言葉を詰まらせて、それから言った。



「・・・・悪くは無い・・・んじゃないですか」

「素直じゃないの〜」



その様子に、は噴出した。
モフモフの3人も、声を立てて笑って、
ジェイは、顔を少し赤くしてホタテサンドを口に頬張った。

打って変わり和やかに、昼食の時は過ぎていく・・・・










― to be continue...








・・・・何が書きたかったのかと問われれば、少し警戒心が強いジェイ君を・・(汗
さん・・・ジェイ君で遊んでます;;
同い年の設定なんだがなぁ・・・(滝汗