歩み寄る先4 |
今日もまた、最近始まった『いつもの日常』が始まる。 ”この世界”での毎日が、もう既に何日過ぎ去った事やら。 始めのうちは、走るジェイの背中を追いかけながら、魔物との戦い 途中からは歩いたりもしていたが 暫くすると、本当に走りだけでモフモフの村まで行く事になった。 それだけで、体力を持ち合わせていないにとっては モフモフの村につく頃にはヘトヘトで、家政婦の仕事なんて ほとんど出来ていないような状態だった。 しかし、また時が少しだけ過ぎて ジェイの隣を走れるようになり 家政婦の仕事もそれなりにこなせる様になると 今度は、走りながらの勉強が始まる。 曰く 「魔物にも属性と言うものがあり それぞれに、苦手な属性、得意な属性があります。 苦手な属性の攻撃をすれば、当然、本来よりもダメージを与える事ができますし 逆に耐性のある属性の攻撃をすれば、そのダメージは激減します。 また、魔物は時折スカルプチャと呼ばれるものを落とします。 これは新しい技を学ぶ際に必要になり―・・・」 こんな感じで修行は進むものだから 結局は、一日が終わる頃には、意識も朦朧としているのだ。 「ジェイ さんは女の子なんだから、 もう少し考えてあげないとダメだキュ」 フランフランしながら家事をするを見かねて ポッポが一度、ジェイに言ったことがあった。 「あー、私なら大丈夫だよ。 気にしない、気にしない♪」 けれども、ソレをは、笑顔で制すものだから、 特にその後は何も言わず仕舞いだ。 「ね、キュッポ君。 お願いがあるんだけど・・・」 「キュ?」 食事の席で、突然がキュッポに話しかける。 キュッポは、持っていたツナサンドを飲込みながら首をかしげた。 「あのさ、私に体術・・・教えてくれないかな・・・?」 「・・・どういった風の吹き回しです?」 おずおずと言ったに、 横で聞いていたジェイが、怪訝そうに聞いた。 は、頬をかいて苦笑する。 「う・・ん。 ほら私さ、今ジェイと毎朝ここまで通いながら修行してるでしょ? 鉄扇の扱いとか、まだまだ拙いけど、何となくは分かってきたんだ。 でもすぐに疲れるし、注意力散漫だし、動き鈍いし・・・ もっと基礎的なところが必要なんじゃないかと思って。」 毎日、戦闘を繰り返すうちに思う。 やっぱり、これはあくまで現実であって、 物語の様に上手く行くわけもなくて・・・ 異世界から飛ばされてきたら、突然体の動きが身軽になりました、とか。 そんなオプションは、どうやらついていないらしい。 ただ、鉄扇の使い方。 これだけは、ジェイが驚くほどに扱いが上手くなったという。 けれども、それは『学んで』上手くなった と言うよりは、なにか古い記憶を思い出した時に似ていた。 体が、動く感覚を取り戻して来たと言うか・・・ そんな不思議な感覚に襲われる。 とにかく、鉄扇だけが扱えてもどうしようもない。 道具を扱うための『土台』である体を、作ったほうが良いと思ったのだ。 「まぁ、賢明な判断・・・ですか。」 「・・・ダメかな?キュッポ君」 「全然大丈夫だキュ! 喜んで教えるキュ!!」 キュッポは、笑顔で応じてくれた。 「で、なぁんでジェイも着いてくるかな〜?」 「今日は特に仕事も無いので。ついでです。」 広がる草原を駆ける風が、柔らかく髪を靡かせる。 キュッポとだけでなく、何故かピッポとポッポ、それにジェイまで一緒だ。 今日は一際天気も良くて、春の日差しが心地良いから、 こうみんなでワイワイ歩いていると、ピクニック気分になってくる。 「仕事って・・私ジェイが仕事してるトコあんま見たこと無いんだけど?」 「そうですか?さんが見てないだけでしょう。」 「ウソ!絶対あんまりやってないよ!! それで日々の生活遅れるんだから、一回の情報料 どれだけぼったくってるんだか」 「失礼ですね。情報料は、内容に比例して適当です。 それに、情報提供の依頼は、決まった手順を踏む必要があるので 滅多なことでは依頼は来ないんですよ」 「ふぅ〜ん?」 疑いの眼差しを向けてから、キュッポのほうに向き直る。 キュッポは何時の間にやら胴着に着替えていて、準備は万端だった。 「さん、準備は良いキュ?」 「あ、うん。宜しくお願いします。」 「それじゃあ、ポッポ達は離れたところから観戦してるキュ!」 「ぅえぇ〜緊張しちゃうなぁ・・それは」 「誰もさんのことなんて意識して見ませんよ」 「何か言ってる?」 「いえ、別に?」 また長引きそうな口論はピッポとポッポがジェイの手を引っ張り 2人を離して引きとめ、キュッポとの修行が始まる。 「それじゃあ、修行を始めるキュ! 押忍!だキュ!!」 「押忍!」 便乗して言ってみるに、キュッポは嬉しそうに始める。 体術の心得を最初に聞いて、基本の型を覚え・・・ 原理は、空手に似たもののようだった。 「足は肩幅よりも少し広めに開いて・・腰は落とすキュ。 引き手は胸の位置にとって、脇はちゃんと占めるキュ!」 キュッポは一つ一つ丁寧に教えてくれるから 自分もやりやすかった。 「さんは筋が良いキュ! それじゃぁ、さっきの型を流してやってみるキュ!」 「あ、うん!」 そんな感じで数時間の時が過ぎ、 体も火照ってきた頃・・・ 「・・・・さんは、すごく優しい目をしているキュ」 キュッポは、なんの前触れも無く突然言った。 「ぇ、ど、どうしたの?キュッポ君。突然・・・」 突然言われたものだから、も驚いて ガラにも無く慌てたりしみてしまう。 キュッポはニコリと笑った。 「凛と前を見つめる、とても強い目だキュ」 それは、なんの曇りも持たずに真っ直ぐに見つめて言われるから、 はくすぐったい気持ちになって、少し顔を赤くした。 「あ、ありがとう・・・」 言って少し微笑むと、キュッポも尚微笑んだ。 そして、少し遠い目をする。 「ジェイは・・・少しだけ心に弱いところがあるキュ・・・」 「ぇ・・・?」 「ジェイも。人を信じたいんだと思うキュ。 人を信じて・・・本当は、心から信じることの出来る人が 必要なんだと思うキュ。・・・・でも・・・」 「・・・・何か・・・恐怖心が邪魔してる・・か・・」 「キュ?」 『彼の過去を知っています。』 言ったら、きっとジェイは自分の事を軽蔑するだろう。 だから、この事は隠しておくつもりだ。 いつか・・・いつか、時が来た時に、そっと言ってやりたい ゲームをしながら、彼の過去をこの目で見ながら ずっと、ずっと、言ってあげたかった気持ち・・・ 「ま、それは何となく何だけどさ。 ジェイ、少し人間不信なところがあるから・・・ でも、無理に聞きたいとも思わないんだ。」 「キュキュキュ??」 ポツリと呟いたに、キュッポは首を傾げる。 はニコリと微笑んだ。 「ジェイが人を信じる事を拒む理由は 話してくれても、話してくれなくても・・正直、どうでも良いんだよ。 昔に何があろうとも、ジェイがジェイである事に変わりは無くて・・・ 今私の見ているジェイが、結局私に関わる彼だからさ。」 昔がどうであろうと関係はない。 今のジェイが、今の自分のジェイだから・・・ それは、自分がそんな環境とは全く離れたところに居て、 それでいて、彼の過去をすでに知っているからこそ、 口に出来るのかもしれない。 けれども、自分は知っている。 知っているからこそ、彼を近くで見守ってみたいのかもしれない。 「だからさ、キュッポ君たちも、無理に話す必要は無いよ。 話して楽になるなら聞くし、そうじゃないなら、私には必要ないから。」 言うと、キュッポは少しだけ微笑んだ。 「やっぱり・・さんは強い人キュ」 「そう? ただ冷めてるだけかもよ?」 キュッポは首を横に振り、そしてもう一度繰り返した。 「前だけを見つめる強い人間だ」と。 「・・・ありがとう」 そんな事言われては照れくさかったけれども、 自分の考えを肯定してくれたキュッポが、嬉しかった。 「さ〜ん!キュッポ兄さ〜ん! そろそろ休憩にするキュー!!」 遠くで、ピッポが二人を呼んだ。 キュッポとは顔を見合わせて、微笑みあった。 「わかったー!」 「今行くキュー!!」 手を振る皆の下に、2人は走った。 ― to be continue... ![]() あ、アレ?? キュッポ夢??(汗 ![]() |