歩み寄る先9 |
朝ごはん・・とは言っても、建物が破壊されてしまったから とても簡単なものでしかないのだけれど、 瓦礫から掘り出してきた机の上に並べる。 こりゃ書類の発掘に骨が折れるな・・・とか遠く考えながら はジェイの前にパンを置く。 ジェイは、難しい顔をして唸っていた。 どうしたのかとは暫くその顔を見つめてみたが まあ、それに気付く様子は無くて 「えいっ」 「!?」 ジェイの額を人差し指で突いてみた。 「な、なにするんです!?」 「眉間のし〜わ〜」 ウリウリと眉間の皺を伸ばすフリして 指を押し付けて、ジェイは顔を少し赤くして手を振り払った。 「止めて下さい!」 「へーへ。 んで、どしたの?難しい顔して。」 キュッポたちは、 まだ少し慌しい外を宥めに行っている。 大変だな・・なんて思いつつも手伝いに行かない自分は考え物だ。 「・・・・さん。」 「ん?」 「貴女に相談するのも気が引けるんですが・・」 「どーも突っかかるね、君は。」 「・・・この場所について、どう思います?」 「この場所って・・・この地下空間のこと?」 問いかけを問いかけで返すと、 ジェイは難しい顔をして、頷いた。 は少し唸ってから、口を開く 「そ・・・だね・・・ ぶっちゃければ、あんまり良くは無いと思う。 ディノワームだって、今回はモフモフのみんなに 被害がなかったから良かったけど、このまま住み続ければ なんとも言えない。 それに、ディノワームはこの空間を大きく揺らすから、 此処が崩れる可能性だって低くは無いよね。 みんなの安全面も入れたら、あんまり良い環境とはいえないと思う。」 「やっぱり、そう・・・ですか・・・・」 言うと、また考え込んでしまって、 一体何なんだ・・・?と首を傾げざるを得ない。 「さん」 「はい!?」 かと思えば、また人の名を呼ぶ。 本当に、なんなんだろう、今日のジェイは・・・ 「少し、みんなに伝えたいことがあるんです。 付いて来てもらえますか?」 「あ、う、うん。いいけど・・・」 ヤケに今日はお願い事が多いね。 とか、考えてみたりなんだり・・・ 既にある意味を成さないドアを開いて 外に出る。 そろそろ、慌しい雰囲気も落ち着いてきて、 村の修復が始まる頃だった。 「みんな!聞いて欲しいんだ!!」 さして広くも無い空間に、ジェイの声が響き渡る。 一緒にいたも予想外で、思わず驚いた。 「ど、どしたの?ジェイ・・いきなり。」 「いーから、黙っててください。」 突いて来いと言ったと思ったら 今度は黙ってろかコノヤロウ・・・・ とか思っていたら、モフモフのみんなが集まってくる。 ジェイがこう言ったら集合の合図なんだろうか・・・? 「どうしたキュ?ジェイ」 「うん。ずっと考えてたことなんだけどね、 この機会に、みんなに相談したいんだ。」 「キュキュ〜? ジェイ、なにか悩み事キュ?」 「うん・・実は、 村の移動をしたいと思うんだ」 ・・・・・・・ はい? 結構けったいな事言いましたね?今。 「ちょ、ジェイ、いきなり村の移動って・・・」 思わず、その腕を取る。 ジェイは真剣そのものの目で言った。 「いきなりじゃないですよ。さっきも言ったとおり、 ずっと考えてたことです。 ずっと思ってたんだ。地下空間、ディノワーム・・長長悪魔の存在、 それに、人里から大きく離れたこの場所・・・ 此処は、危険な条件が揃ってる。早く移動すべきだと思っていたのに 今回、こんなことが起きてしまった。」 確かに、此処は危険なのだ。 もう少し人里近ければ、魔物もなかなか近づいては来ないのだが・・・ 村の移動も、考えて当然といえば当然といえるかもしれない。 (そーいやぁ、ゲームでは、此処は"跡地"の場所だったね) ゲーム開始時では、既にモフモフの皆は、村の移住をしていた。 「みんながもし嫌じゃなければ、 この機会に、村は別の場所に移動した方がいいと思うんだ」 「でも、移動って言っても、何処に行くキュ??」 ポッポが心配そうに問いかける。 移動するといっても、その先があっての移動 って事は、やっぱりあそこだろうか・・? ジェイは、にこりと微笑んだ。 「それなら大丈夫だよ。 ちゃんと見つけてあるんだ。」 そう言って、ポケットの中から地図を取り出し、 地面に広げる。 みんなが、地に足を付くなり、身をかがめるなりして 覗き込んできた。 も、便乗して、ジェイの上から覗き込む。 「此処が、灯台の街。で、此処は内海港。 此処から、船の移動で約1時間の場所の此処の島だよ。 海が近くて、食料にも困らないし、 街も船に乗れば然程遠くない。生活条件としては 此処は悪くないと思うんだ。」 ジェイの言葉。 皆が考えるそぶりを見せる。 あ、やっぱりあそこだ。なんて、。 けれど、まぁ生活条件の揃った場所と 今の場所となら、否定の条件は無いに等しいもの・・ だったのだろう。 「さん! この間の仕事の書類、何処ですか?」 「それは・・えっとアッチ! あの本棚の横にあるよ。」 思い立ったが吉日とでも言うのか、荷造りが 村全体で行われている。 箱やら袋やらに必要な荷物を放り込んで・・・ とは言え、みんな壊れたり予め纏めてあったりで 其処まで苦労はしない。 「あ、ピッポ君。こんなの見つかったけど、どうしようか?」 「それは・・たしかジェイに貰ったものダキュ!」 「そか。じゃあ一応取っておいたほうがいいね。 こっちの袋に入れておくよ?」 「ありがとうキュ!」 荷造りは結構順調に進んでいく。 「あ、ジェイ。衣類の方は―・・・」 「それは、僕達が自分でやります!」 「な、何怒ってんの?」 「怒ってなんか居ませんよ。 ただ、見られたくないものだってあるでしょう!?」 ジェイが、顔を赤くして怒るものだから、 は、ああ!と手を打って答えた。 「下着とかか!」 ――バスンッ!! なにか柔らかいものの入った袋が顔面に直撃した。 「〜〜〜〜ったぁ〜〜っ!!! なぁにすんのさ!!」 「あまりに頭の悪い発言をするからでしょう!!」 「なに照れてんのさ、思春期の男の子じゃあるまいし。」 「思春期真っ只中の男なんですよ!僕も!!」 「・・・・・あ、そか。」 「・・・どうやら、更に頭が悪くなったみたいですね」 「アハハハハ、そう向ムキになるなって、思春期ー」 「認めたくありませんけど 貴女も同い年でしょう!!」 ギャーギャーギャー・・・ 微笑ましくなるような口喧嘩。 見ながら、キュッポ達は声を上げて笑った。 「ジェイ、最近すごく柔らかい表情するようになったキュ!」 「さんのお陰ダキュ!!」 ポッポとキュッポがニッコリと言う。 「キュッポ兄さん、ポッポ!ちょっといいキュ?」 そんな2人をピッポが手招きして、 喧嘩を続けながら荷造りする二人をおいて、ひとつの提案を持ち上げた。 それはー・・・・ |