始まりの光1 |
―― 何処か違和感を感じる、豊かな自然 それが、この『遺跡船』の一つの特徴かもしれない 大陸と変わらぬほどに、緑も、土も豊かなのに それがどこか作為的なものに感じる それを人に言えば、人は哂う 『此処は大陸と殆ど変わらない』と 人為的、作為的 他者に言わせると、そんなものは感じないと言う。 どんなに大陸の自然に似ていても、 自分のいる場所を大陸だと錯覚するような事はない。 違和感を常に感じている 他者は、それでも錯覚を覚えるのだそうだ 自分はどこか、人とは違うのだろうか・・・ 朝の日差しの眩しさに、意識はゆっくりと夢から覚めようとしていた。 しかし、昨夜の疲れが残っていてか、体はソレを拒もうとする。 朝霧の立ち込める森の中 結構高い位置の木の枝に、器用に身を乗せ眠るを、 獰猛なはずの魔物達は、ハラハラとした様子で下から見ていた。 何処かで高く、鳥が無く それがピヨピヨの声であることなど、確かめずとも分かった。 「んー・・・もうちょいぃ・・・・」 マヌケな声を出して、身を捩る。 ピヨピヨの声が、より一層高まる。 少女は目を覚まそうとしない。 やがて、痺れを切らしたのは目覚まし役であるピヨピヨの方だった。 ただならぬ気配を感じたが、ゆっくりと目を開けると、 ピヨピヨの鋭いくちばしが、目の前に迫っていた。 焦って首だけを横にズラすと カンッと、顔スレスレに高い音がする。 木の幹が振動し、幹伝いの耳にこれでもかと言うくらい大きい音が響く。 「わ、わざわざありがとー・・・」 命辛々の熱烈な起こし方に、 心臓を押さえながらは引きつった笑みで言った。 自らの仕事を終えたピヨピヨは、 膝の上で、満足そうにその柔らかな鬣を揺らしていた。 「んー・・・なぁんか、あんまり寝た気がしないなぁ・・・」 ポツリと呟きながら、は木から飛び降りる。 柔らかなスカートが高く鳴った。 がこの世界に来て、早1ヶ月半の時が過ぎた。 光の柱は立ち上る事無く、もすっかり、 この世界の生活に慣れてしまった。 約2ヶ月間の間で大きく変わった事といえば 彼女が寝泊りする場所・・・だろうか。 ある日突然、今までが寝泊りしていた宿に 新しい女の子が泊まり始めた。 お陰で、は寝床がなくなってしまい、仕方なく この、『導きの森』と呼ばれる森で野宿のハメになってしまった。 導きの森は、ゲームで言う所の『船橋』の隠れていた島らしい。 モフモフの村へも近いし、何故か、此処の魔物たちは に対して友好的だ。 ジェイにも相談した所、 『まあ、本人が良いならいいんじゃないですか』 だそうだ。 相変わらず、人に興味は無いらしい。 「ま、いいか。 最初に比べたら、全然仲良しだし」 呟いて、腕に光るジェミニシェルをゆっくりと撫でた。 最初の頃に比べたら、とジェイはずっと友好的だ。 最初の頃が、まるでウソの様に・・・・ ジェイが、この森での野宿に反対しなかったのも それなりに築きあがってきた、信頼関係の成す所だろう。 ジェイの信頼を受ける事ができるほどに の力が上がったという事でもある。 最近では、ブレス系も極めてきていて、 回復物は、ファーストエイドから始まり、キュアにレイズデット、リザレクションまで 何でも御座れ。 攻撃類も、それなりに覚えてきている。 ・・・・自分はどうやら、ゲーム的に見ると『バランス重視型』らしい。 なんていうか・・・・複雑だ・・・・ フと気付くと、に餌を求めるように集まってきた魔物達の中で ブヨッブヨッと、妙な効果音をつけて近寄ってくる者がある。 ブヨブヨブヨブヨ・・・・友好的に近づいてきたのは、エレンギだった 「・・・・・・・遂に菌類にまで好かれたか・・・・・」 はあっと溜息をついて、昨日のうちに街で買っておいた パンやらを、魔物たちのほうへ投げてやった。 なんで自分は、此処の魔物たちに好かれるのだろうか ジェイには、結構好戦的に襲い掛かってきたというのに・・・ ・・・でも、まあ、 最近では、自分の知り合いである事を覚えたのか ジェイやモフモフのみんなを襲うこともなくなったが・・・・ 「今日も一日頑張るかなーっと!」 少女はそう言って、大きく伸びをして 腰の鉄扇をしっかりと抑えて歩き出した。 この時の少女は、まだ知る由もない。 歯車が、この時から回りだした事など・・・・ 今日もやはり、街には高らかな歌が響いていた。 穏やかな時間を彩る歌声。 異国の少女の声は、何処か甘やかで優しい。 今日は、家政婦としてのお仕事はお休みの日だ。 なんでも、モフモフのみんなも、ジェイも、 仕事で全員村から居なくなるらしい。 よって、自分はすることが無いので 今日は歌のほうに専念するつもりだった。 今日の空は、いつもよりも一段と荒れていて、 雨さえ強く打ち付けていたが それでも、その声音の美しさが損なわれる事はない。 「ちゃん、今日も調子良いわねぇ」 「本当。どうやったら、 あんなキレイな声が出せるのかしら?」 傘をさし歩く、街の人の囁く声。 少女も、街に慣れ親しんだ頃だったのだ。 そんな時に、『ソレ』は起きた。 突如、街を煌々と照らす光の柱が、海辺の方から立ち上った。 黄金の輝きを持つ、煌びやかな光だ。 「あれは・・・・」 思わず、歌う声を止めて柱を見上げる。 鮮やかな、ソレでいて優しい光・・・・ 心の底が、暖まるような・・・ 「・・・光の柱立ち上りし時 メルネスは再び甦らん・・・・」 ふと、元創王国時代の記録を記した文書の一文を思いだす。 たしか、こんな文章だった気がした。 人々のざわめき やがて、光の柱は柔らかな光跡を残して消えていった。 光の柱が消えると同じに、先ほどまで降っていた 激しい雨までも、うその様に上がっていた。 「・・・・・やっと、動き出した・・・」 ようやく、物語が動き出した。 古き大地が、導かれる。 は一人、呟いた。 「・・今のは・・・」 ふと、ざわめきの間を縫って一人の人間が歩いてくる。 「ウィルさん・・・」 その筋骨隆々な男を見て、誰かがその名を呼んだ。 ウィル・・そう呼ばれた男は、眼鏡を押し上げる。 「先ほどの柱・・・・ 言い伝えに残る『光の柱』に、良く似ていた・・・」 遠く呟く声。 ウィルは街の人々を見渡していった。 「俺はこれから、海辺まで様子を見に行って来る。 何があるか分からん。 各自、何かあった時にすぐ対処を出来るようにしておけ!」 街にそう響かせて、ウィルは街の人々が頷くのを確認すると 階段滝の方へと走り去った。 は、少しの緊張に早まる鼓動を落ち着かせようと深呼吸をして そのままの息で、雨上がりの澄んだ空気に、歌声を響かせた。 歌声が風に乗って流れ、街をゆっくりと巡る頃。 人々のざわめきは、徐々に静まっていった。 ― to be continue... ![]() ようやく本編突入の兆しです♪ つか、やっとジェイ以外のキャラが出てきた・・・orz ![]() |