始まりの光4 |
潮風が吹くこの街で 歌は何処までも遠く響くから きっと『声』の元にも 届いてくれるハズだから・・・・ ウィル達がシャーリィを探しに街を出て、二夜が明けた。 街は、先日の騒ぎなど無かったように同じような時を過ごしている。 無論、歌も変わらず街に響く。 聞き入る人々も、変わらない。 日が丁度真上に来る頃。 は喉休めに噴水の淵に座って居た。 行き過ぎる人々が、にこやかに手を振ったりして通り過ぎていく。 この街は、良いところだなぁと、改めて実感する。 穏やかな空気が、何処か軽やかに過ぎる。 あれからモフモフの村へ、ジェイに文句をつけようと 行っては見たのだが、書置きを一つ残して、彼は居なくなっていた。 『光の柱について調べに行きます。 さんは、暫く歌姫の方に専念していてください』 全く無責任なヤツだと思う。 会って文句を言ったところで、 ジェイが謝らないであろうことは分かっているのだが・・・ 「・・・・あれ?」 気付くと、手首のジェミニシェルが僅かに光を帯びていた。 ジェミニシェルが光るのは、もう片方の貝殻を持つ人・・・ つまり、ジェイが強く片割れを思っているとき・・・ 「休憩中ですか? 歌姫のおねーさん」 そんな中、ふと声が掛かる。 その声には、イヤと言うほど聞き覚えがあった。 「・・・・・ジェイ!!」 会えて嬉しいのだか、怒りが込み上げてくるのだか 両方が強すぎて、なんとも言えない。 とりあえず、コノヤロウの気持ちのほうを優先しては見る。 「そう、明らかに嫌そうな顔しないで下さいよ。 この間の事に貴女まで巻き込まれたのは、予想外だったんですから」 「・・・よく言うよ」 言ってソッポを向く。 ジェイは、ニコリと微笑んだ。 「まったく・・・・ 光の柱のほうは、調べられたの?」 「・・・・なんとも言えませんね・・・ モフモフのみんなも疲れてきてるようなので、 一旦休息、です」 「そか・・・。 じゃ、私も久しぶりにジェイの家に仕事に行こうかなーっと」 言って、噴水の淵から立ち上がる。 それから、あ、そういえばさ・・と、ジェイに切り出した。 「さっき、ジェミニシェルが光ってたんだけど・・・ なんか呼んだ?」 「ジェミニシェルが? いいえ。見間違いじゃないんですか?」 ジェイに言われて、そうなのかなぁ・・・と頭を掻く。 確かに光っていた気がしたのだが・・・ 「ま、いいや。 んじゃ、家に戻ってお昼にでも・・・」 その言葉は最期まで続かない。 遮られたのだ。 街に駆け込んできた男によって。 「た、大変だ!! 大量の魔物たちが街の外に!!」 「!?」 広場に来た男は息を荒げていて その言葉を聴いて、街の人は身を引き攣らせた。 「なんだって!?」 「ウィルさんが居ない今・・・そんな・・・」 魔物の蔓延るこの世の中。 魔物が街を襲うことは少ない話でもない。 しかし、此処まで大きい街に・・となると 大体、魔物達もあまり近づかないものだ。 もしあったにしても、大体はこの街1番の爪術士、ウィルが 街に到達する前に倒すのだが・・・・ しかし今、ウィルは居ない。 魔物の中にも、頭の働くものが居るのか もしくは、単なる偶然か・・・・ 「だってよ?どうすんの?」 が、腰に手を当てて問う。 ジェイは、ふうっと溜息をついた。 「この街は、情報収集にも良いですし、 遺跡船一の大きな街です。滅ぼされたりしたら・・・不便ですね」 「・・・・だよねぇ・・・」 ふぅっと2人の溜息が重なった。 腰につけた対鉄扇に手を触れた。 「仕方ない。やってやるか。 もちろん、ジェイも手伝うでしょ?」 のその言葉に、ジェイは眉根を寄せる。 「なんでぼくが・・・」 「とーぜんでしょ? ジェイのが実践慣れしてるんだし」 「貴女だけでも、充分戦えるようになったはずでしょう」 「ンなコト言って、か弱い女の子に 大漁の魔物相手させる気?」 「か弱い・・・って所には、 大きな語弊がありますね」 「何!?」 「その目つきだけで、充分凶暴そうですよ」 むぅーっと、唇を突き出して しかし、はジェイの手を引いて街の外へ走った。 「ジェイも爪術使えることがバレるの不味いでしょ! さぁー!さっさとやっつけちゃオー!!」 「なっ・・・ちょ、ちょっと!!」 驚くジェイを気もせず、は強引に街の外まで引っ張っていった。 「ぉー来た来た。団体さんだぁ・・・」 街から1キロ離れた辺り。 は腰に手を当てて扇を手に言う。 その横で、ジェイは不服そうだ。 「だから、なんでぼくまで・・・」 「イーじゃん。 カワイー弟子が困ってるんだからさ」 「可愛いと言うところに御幣が・・・」 「何!?」 さっきと似たような会話をしているうちに 魔物が接近してくる。 「うっわ、結構量が居るねぇ。 めんどくさー」 「この間から『面倒』ばかりですね」 「そーかなぁ・・・・まーいいや。 もう団体さんがご到着のようだから。」 その言葉に前を向けば 確かに、何十かの魔物が砂埃を立てて走ってきている。 「・・あの位なら。一人20匹倒せば何とかなるね」 「・・・・簡単に言ってくれますね」 「アレ、自信ないの?」 「馬鹿なこと、言わないで下さいよ」 そう言って、ジェイもまた 向かってくる魔物を見据えた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「此れで・・・終わりっと!!」 の声。 同時に鮮血が上がる。 は、パサリと扇を閉じて腰の袋の中に入れた。 ジェイの方もまた、ほぼ同時に終わったらしい。 「思ったよりも、時間が掛かりませんでしたね・・・ 腕、本当に上げたんですね」 「そう・・・かな・・・?」 まさか、ジェイにそんな事言われるとは思わなくて また皮肉たっぷりに言われるかと思ったら・・・ けれども、喜びもつかの間。 ジェイは難しそうな顔をして考え込む 「それにしても・・・・この魔物・・・・」 「・・・・うん。 ・・・この魔物・・野生のものではないよね」 ジェイの言葉に頷いて息絶える魔物に手を当てる。 「・・・さんも、気づきましたか・・・。」 「うん。なんか・・・・戦い方とかが・・飼いならされてた」 「・・・恐らくはクルザンド王統国の物でしょう。」 「クルザンド・・・?」 「先日、遺跡船に軍隊を送り込んできたという情報が入ってきましたから」 確か、ヴァーツラフの軍隊だ。 それなら、確かに納得がいく。 それにしても・・・・と、 口元に手を当てて考え込む。 魔物を使っての、単なる偵察・・・だろうか 「・・・まだ、生き残りですか?」 「ぇ?」 ジェイの声に反応して顔を上げる。 ガルフが一匹、こちらを見ていた。 ナイフを構えるジェイに、は慌てた様子で ソレを留めた。 「ま、待って、あれは・・・」 「っさん・・・!!」 その静止と共にガルフは に突撃した。 ジェイの驚きの声。 しかし、その声は無意味に響いた。 「ちょっ、く、くすぐったいよ、お前・・・」 ガルフはまるで親しい者にするように その身をの頬に摺り寄せていた。 拍子抜けしたようにジェイはソレを見つめている。 「知り合い・・・ですか・・・?」 動物に対して『知り合い』と言うのもおかしな気がするが とりあえず該当する言葉がソレしか浮かばないので仕方ない。 ジェイの言葉には頷く。 くすぐったさから自然と浮かぶ、生理的な涙に潤む目で 「そ、そうそう・・・。 ほら、導きの森の・・・」 「ああ、あのさんに1番懐いてた・・・」 「うん。」 このガルフが、一番森の中で懐いていた。 何故だかは、良く分からない。 自分は何か、野生的なのだろうか・・・・? 「それにしても、なんで導きの森のガルフが此処に・・・」 ジェイの言葉を遮るように ガルフが一つ声を上げて、口にくわえていた何かを落とした。 「ん?なに?コレ―・・・・」 その、落としたものに、目を見開いた。 それは、見覚えのあるものだった。 「・・・・・めがね・・・・ っ、これ、の・・・・っ?」 ボロボロになってはいたが 確かにその機会の塊は、 元の世界で親しくしていた友の使っていた眼鏡だった 「どうして・・・・こんなんが・・・・? ・・・・まさか・・・・・・・?」 彼女も、この世界にいるのか・・・・? けれども、だというのなら一体、何処に―・・・・ ガルフがガウッと一声。 は、ハッと思考を取り戻す。 「どうしたんですか?さん」 ジェイは怪訝そうな顔で見ていて、は 「なんでもない」とだけ言って、ボロボロの塊を 腰の袋に鉄扇と一緒にしまった。 ガルフはジェイの周りをくるくると回って、 何かを探るようにしていたガルフに、思わずタジリと尋ねる。 「な、なんですか?」 はガルフの突撃に倒れた体を起こして、砂を払った。 ガルフはもう一吠えして尻尾を振り ジェイの足元に座り込んだ。 「害はないってさ。良かったね」 「はぁ・・・」 ふわりといつもと変わらない笑顔で微笑まれて ジェイは曖昧な返事を返し、足元に擦り寄るガルフの頭を撫でてやった。 「まあ、大丈夫だというのなら、少し協力してほしいんですが」 「ん?何?」 ジェイに近づいて、ガルフの頭を一撫でし、 その隣に立つ少年を見た。 「詳しいことは家で話しますが・・・・・・」 その内容に、は目を見開き それから、待ちわびた・・・といわんばかりに呟いた。 「・・・・・ウィルさんからの依頼・・・ねぇ・・・・」 その言葉に、ジェイは何か含みある笑みを浮かべた。 ― to be continue... ![]() 長いっ!!(開口一番ソレか ジェイとさんは、なにやら仲良しになっているもよう ちゃっちゃかちゃー、と本編も進められればいいのですが・・・orz ![]() |