始まりの光8 |
ヤギが、海水に紅い血を滲ませながら、グタリと岩場に凭れ掛かった。 その緑のブヨブヨの体は動くことは無い。 ノーマとセネル、それには、息を乱しながらも、ほっと息をついた。 結局始まったVSヤギは、セネルが前衛で攻めて、ノーマが後衛でサポート系のブレスを使い、 が状況を見ながら、セネルと共に連打を与えたり、増えてきた傷の回復をしたり、 時に、ヤギに有効なブレスを使ったりして、なんとか勝利を収めた。 まあ、こんな所でゲームオーバーになんかなれるわけもなく、 その勝利は、あくまでも当然の様な気もするが。 「ヤギに勝ってしまうなんて、3人ともすごいキュ!」 「も〜やけくそだったわよ・・・。 疲れた・・・・。」 「っとに、だから人の話を聞けって、言ってるのに・・・」 ポッポの言葉にグッタリした様子で呟いたノーマに、 まったく・・と、が息をつく。 「それにしても、あとどれ位で着くんだ? もう結構歩いたぞ」 そんな2人を見やりながらも気を取り直して言うセネルに、 ポッポはあくまでも明るく答えた。 「此処まで来れば、あと一息だキュ!」 その言葉に、とノーマは顔を見合わせて、 やってやるか、と立ち上がって前を見据えた。 少し行った先の岩場では、行こうとしていた湖の上に 筏に帆を立てた、粗末な船があって、向こう側の岸には、停船所が見える。 「こんな所に小船があるわよ」 真っ先に船に近づいたハリエットが、その船を見ながら不思議そうに呟く。 確かに、こんな人里離れた湖に船が浮かぶのは、不思議な光景だ。 「それに乗って、村へ渡るんだキュ!」 ポッポは意気揚々と答えた。 彼の処女作である『ポッポ1世号』は、彼の中では中々に上出来なのだ。 しかしノーマは、違うところに意識を奪われたように遠くの方を見ていた。 「ノーマ、どうかしたの?」 「向こうの方に浮かんでる、でっかい島・・・」 問いかけたに答えたノーマは、モフモフ村がある島の隣の、 緑の茂った島を指した。 其処は、が寝泊りをする場所である、あの・・・ 「『導きの森』だね」 「導き・・・?そんなん、聞いたこと無いけど」 「うん、無理ないかも。 なんか、一部の人たちに伝わってる名前らしいんだ。 名前の由来は分からないんだけど。」 この名前は、ジェイが教えてくれた名前だ。 情報屋として調べた事柄だった。 名前の由来は、わからないと。 自分も、もちろんそうなのだけど・・ 推測くらいなら、出来る。 其処は、艦橋の隠された島。 陸の民が酷い仕打ちをしてきたことも事実だが、それでも、人間もまた、 自分たちの生きる土地を求めて必死だったはずだ。 後に島として隠された艦橋は、人々の望みでもあったんじゃないだろうか。 人の道を開くための、導き手としての望み・・・・ そこから、あの名前が伝わったと、なんとなく、そう思った。 ずっと後で、ジェイにそんな話をしてみたいと思う。 自分のしそうな、簡単な推測だと笑われるだろうか。 もちろんそれを話すときは、今ではないことなど、承知しているが・・・ 「村があるのはあの島じゃないキュ」 「そりゃ残念。形も変わってるし、 調べてみたかったんだけどなぁ〜」 ノーマが残念そうに言うのを、は苦笑しながら見つめた。 「もしあの島に行くなら、さんと行くと良いキュ!」 「なんでだ?」 「あの島は、さんが寝泊りしてる島なんだキュ。 さんと一緒だと、魔物が襲ってこないキュ!」 「あっ、こら・・・」 ポロッと人のことはなしちゃうもんだから、 は慌ててポッポの口を押さえるが、流石に遅かった。 「そうなのか?」 セネルは、思いっきり興味深そうに聞いてくる。 は、諦めの息をついた。 「あー・・・うん、まあ。 なんでかは分からないけど、友好的だよ、あそこの魔物」 「へえぇ。正体不明の歌姫は謎の島で野宿か・・・・」 「なぁんか言いたそうね?ノーマ?」 「べっつにー?」 フフンっと、悪戯っぽい笑みを浮かべられ、カチンとくる。 なんか悪いかと問いたいのだが、それをハリエットが痺れを切らしたような声で打ち切った。 「みんな、なにしてるの! 早くこっちへきなさい!」 「はいはい」 言いたいこともぶった切られてしまい、ま、いいか。と は苦笑しながらハリエットに答えた。 ― to be continue... |